キャンセル
あと数十分。
アンはさっきから時計ばかりを気にしています。
「早く定時が来ればいいのに!」
ほんの少し前ケイタイに届いたメッセージを
確認したいけど
でもねぇ・・・
なんとなく分かってはいるんです、その内容は^^
一昨日の夜、カレンから電話がありました。
「あのね、アン。
ちょっと話したい事があるんだよね。」
「またいつもの愚痴か。」と思いはしたけど
友達と会って話をするって事は
アンにとっても楽しいイベントです。
「じゃぁ、明後日の仕事終わりね。
マスターの店でいいか。」
長かった数十分をやり過ごし
定時を迎えたことを確認したアンは
てきぱきとデスクの上を片付け
ようやくケイタイを手にしてみます。
届いていたメッセージはと言うと・・・
「アン、ゴメン!
今日のお茶、キャンセルでっ!!
急に仕事が入っちゃって><」
いつものヘタクソな言い訳に少しため息をつき
「彼氏と仲直りできたんならよかったよ。」
そう思いクスっと微笑んだアンでした。
そのまま家に帰るのも癪だったので
アンは一人で例のカフェに向かいます。
夕刻ではあるけども
太陽はまだ十分な角度を持っていて
自身を映す影も、まだそんなに長くはないのです。
学生通りには
アンよりいくらか若い女の子たちが
まだ終わらない一日について語りあっています。
楽しそうに。
「また夏が来るな。」
そんな他愛ない事を考えながら
予定通り、海岸通りのその店に足を向けました、一人だけども。
ゆるやかに吹く風は
かすかに潮の香りを運びはするものの
約束をキャンセルされたわりには
さわやかな気分のアンに心地よく感じるものでした。
またマスターの嫌味でも聴いてやるか♪
https://www.creema.jp/c/kiseki
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?