![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/47877331/rectangle_large_type_2_99c7f244e6603698850ba0eb3b8de8b6.jpg?width=1200)
恋人たちの小径で
~From the lakeside~
その道を足早に駆けていく。
踊る心をなんとか抑えながら
そしてランチボックスをあまり揺らさないように。
湖面に弾ける日差しを見たとき
ほんのその瞬間、アンは心を奪われたのでした。
ゆっくりと歩みを止め
美しい湖畔にたたずんでみる。
透き通った湖の中に
これから起こる素敵な未来を見ているようです。
「約束まで、もう少し時間はあるかな。」
穏やかに波打つ水面に光は乱反射している。
それは万華鏡のように。
「きれい。」
はやる心と裏腹に
あまりのまばゆさに息を呑んでしまう。
時間は意外に緩やかに流れました。
どのくらいそこに立ち止まっていたんだろう。
我に返ったアンは慌ててしまいましたが
本当は一瞬の出来事の様でした。
木漏れ日の中をもう一度歩き出す。
恋人たちの小径を抜けて彼の待つ丘へ。
軽くステップを踏むようにかかとを鳴らすアンです。
一度だけ振り返り、心の中で小さくつぶやきました。
「今度は二人で見たいな。」
この小径へ誘ったら、彼は恥ずかしがるだろうか。
ふとそんな事を考えてしまう。
いたずらっぽく微笑んで駆けだすアン。
湖面は変わらずきらきらと輝いています。
約束の丘まではもう少し。