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「やっさいもっさい」の謎

こんにちは。
木更津市観光協会のサボテンです。
誰も書かないので連投になってしまいました。
というか、みんな書く暇もなく働いています。えらいな……

今回は「やっさいもっさい」について。

今回の記事には目次をつけました。
1~3は比較的木更津ビギナー向けの内容ですので、既に詳しい方は適度に読み飛ばしていただければと思います。

1.やっさいもっさいの概要

「やっさいもっさい」とは、木更津独自の盆踊りのようなものです。
みんなで踊ろう!やっさいもっさい2015 - Youtube
(動画埋め込みがうまくいかない……なぜ……)

「のようなもの」としたのは、踊り自体には慰霊の意味合いがないからです。踊りのテーマは「みんなお隣同士」です。
高度経済成長期、「旧来からの木更津住民」⇔「移住してきた新住民」の交流を図るため、46年前に始まった踊りです。当時の木更津青年会議所(現在のかずさ青年会議所)が主体となり、歌詞を公募するなどして作られました。
木更津港の先覚者の霊を慰める祭りとして毎年お盆の時期に開催される「木更津港まつり」(こちらは慰霊ですね……)の1日目のメインプログラムとして続いています。学校行事や、自治会が行う地域のお祭りなどでも踊られています。

その他、やっさいもっさいについて、詳しくはWikipediaが充実しています。
やっさいもっさい - Wikipedia
余談ですが、この記事はとても充実していて、担当者はいつも慄いています。今年の対応についてもバッチリ書かれている……
それだけ愛されているということですね。運営も精進いたします。

2.やっさいもっさいの展開

やっさいもっさいをご存知の方は、地元の方か、もしくは「木更津キャッツアイ」シリーズのファンの方が大半でしょう。
ドラマや映画の本編中で踊られたり、サントラCDに音源が収録されたりしているため、木更津にお越しのキャッツファンのお客様の中には「実在するんだ!?」と驚かれる方もいらっしゃいます。
どうやら架空の奇祭と思われていたようです。
幼稚園の頃から踊ってきた地元民としては逆に驚きもありましたが、考えてみれば、地元特有の音頭がしっかり根付いている地域は案外少ないのかもしれません。

木更津港まつりで行う「やっさいもっさい踊り大会」の参加チーム(「連」と呼んでいます)は毎年80連以上あり、踊り手の人数は総勢4,000人以上です。参加連は地元の町内会やサークル、企業さんの連などが多いのですが、先述の木更津キャッツアイのファンの方々も連を作って毎年出場してくださっており、もう20年近くになります。大変ありがたいことです。
全国規模の連というと、ロックバンド「氣志團」のファンの方々も連をつくり、毎年出場してくださっています。とても迫力があります。

あと、木更津のご当地アイドルで、木更津ふるさと応援団のメンバーでもある「C-Style」さんの曲にも、やっさいもっさいをモチーフとした曲があったと思います。(動画を探したのですが見つかりませんでした……)
仏恥義理アイドルのC-Styleさん、ちょっと怖そうに見えますがメチャクチャ踊れてカッコイイですよ。歌も強い。笑顔はカワイイ。しかも休みの日にはゴミ拾い活動もしてます。イベントにキッチンカーが出てる時もあります。
木更津発 仏恥義理アイドルC-Styleオフィシャルサイト


なお、諸般の事情で、今年の港まつりはお休みとなりました。
しかしながら、有志団体により、オンラインでのやっさいもっさい大会が企画されました。協会も後援させていただいています。
勝手にやっさいもっさいオンライン祭

4人以上のチームで動画を投稿することで参加できるんだそうです。
例年の踊り大会の形式だと1連につき15名くらいはいないと列が作れなかったり、参加するにもいろいろ要件を設けていたりするので、気軽に参加できるのはうれしいですね。あと副賞も豪華だなぁ……(小声)
参加登録は7月16日(木)からとなりますが、先着順のようですので、ご参加はお早めに……!


3.やっさいもっさいの語源

さて、表題の「謎」というのは、この「やっさいもっさい」という名前について。
とはいえ、耳慣れない言葉ではあるものの、語源はハッキリしています。

「やっさいもっさい」という名前は曲中でも掛け声として使われていますが、言葉の直接の由来は「木更津甚句」という民謡にあります。
木更津甚句 - Wikipedia
木更津甚句 | 動画で見るニッポンみちしる

♪かわい男が「ヤッサイモッサイ」ヤレコリャドッコイ……

東京湾の彼方にボンヤリ見える江戸の街。
そこで暮らす旦那様を一途に想う、花街・木更津の芸者さんの歌……
だと思います。彼氏は色白のほうが好みなんですかね?

あ、そうそう、木更津には昔から芸者さんがいるんです。
今でも組合があり、予約すれば市内の料亭でお座敷遊びなどができますよ。
観光協会が窓口ですので、ご興味のある方はお問合せください。

この甚句の囃し言葉「ヤッサイモッサイ」の由来は、それぞれ「矢崎」「森崎」という地名にあるという説が有力です。
木更津の水夫が大坂冬の陣で徳川へ尽くした戦功が認められ、江戸幕府から東京湾での交易特権を受けたことにより、当時の木更津はみなとまちとして栄えたのでした。
日本史で習う「五大力船」、ご記憶でしょうか?
当時は江戸⇔木更津間を繋ぐ便があり、特別に「木更津船」と呼ばれていました。この木更津船が東京湾から矢那川をのぼり、あるいは河口で小舟に乗り換えて、「矢崎」と「森崎」の船着き場に着けたようです。

森崎については判然としませんが、矢崎は「八崎公園」が矢那川沿いに現存しますので、この辺なのかな?漢字は違いますが。
現在の地形だと河口から3kmくらいの位置ですね。
うーん。舟乗り換えなくてもギリいけそう。
八崎公園 - Google Map

ちなみに、やっさいもっさいの名称の「やっさいもっさい」には上記の地名の意味は含まない、と、踊り大会発足時の資料に書いてありました。
あくまで「地域の民謡の囃し言葉を取り入れた」ということだそうです。
ややこしい……。

4.やっさいもっさいの謎(やっと本題)

では何が謎なのか……それはこの言葉のアクセントです。
やっさいもっさいは多くの人が関わるイベントですが、人により呼び方が違います。正式なアクセントすら定まっていません。
日常会話では普通に伝わるのでぶっちゃけ誰も気にしていないと思いますが、対外的なアナウンス原稿を作るときなどに少々困る時があります……。

担当者の主観になりますが、日常でよく耳にするのは以下の4通りです。

I.「やっ↓さい↑もっ↓さい↑」
この言葉の原典である「木更津甚句」に非常に忠実な発音です。
また、江戸時代から「木更津」の中心市街地だった、今で言うJR木更津駅周辺にお住まいの方も、こう発音することが多いようです。
「みなとまち」として栄えた西口側は特にこの傾向が顕著です。
50年近く前のやっさいもっさい発足の際に関わっていた世代の方々も、基本的にこの発音が多いような気がします。

II.「やっ↓さい↑もっ↑さい↓」
しかしながら、現在の主流の発音はこちらです。かく言うサボテンも。
「もっ」が上がり「さい」で下げる発音です。
Iの範囲にとどまらない地元民の発音はほぼこちらではないでしょうか。

III.「やさもさ」
略称
です。
使う方は一定数いらっしゃいますが、どういうわけか木更津市域ではあまりメジャーな略称ではありません。
先述の約50年前の「新住民」よりさらに後年になってから移住された方か、または木更津キャッツアイのファンの方がよく使うように感じています。
キャッツ界隈ではメジャーな呼び方なのでしょうか?協会にある映画化当時の資料をひっくり返してみましたが、正確なところはわかりませんでした。
情報をお持ちの方、こっそり教えてください……。

そういえば、木更津キャッツアイの映画が2本ともBlu-ray化されるそうですね。この機会に見返すか……。
にゃー!映画「木更津キャッツアイ」初のBlu-ray化、特典映像がすべて復刻 - 映画ナタリー

IV.「やも」
業界用語です。

この呼び方をするのは市役所の、それもごく一部の人だけなので、一般的にはほとんど通じない上に業界人ぶるのにもイマイチ使えません。
文書綴りの背表紙とかには書いてあります。
自然発生的略称でしょうが、これも発祥時期はハッキリしません。

と、こんな感じです。
謎なのは「IとIIが分化したのはなぜか」「IIIの発祥はどこか」の2点。

IIIは先述のとおりとして……IとIIについては、やっさいもっさいの成り立ちにヒントがあるような気はします。
やっさいもっさいは約50年前に、新旧住民の交流を目指してつくられたものです。
推測ですが、旧住民はI、新住民はIIで呼んでいたのではないでしょうか。
サボテンは地元民ではありますが、厳密には新住民側の木更津2世なので、IIの発音で定着したのではないかと思います。
しかし、なぜわざわざ分化したんでしょう……?

ちなみに、どれが正しい・どれが間違っているという主旨ではありませんので、念のため。
「みんなお隣同士」なので、通じればそれでいいのです……!
(※IVは通じません)

どちらかというと「このあたり、突き詰めれば社会言語学の小論文くらいには使えるんじゃない?」という問題提起として捉えていただければ幸いです。小論文が無理でも、せめて自由研究にはなるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか……。

本稿はフリー素材ですので、ご自由にお使いくださいね。

それでは。
(見出し画像:2018年撮影のやっさいもっさい写真から抜粋)

#コラム #木更津 #やっさいもっさい #観光  

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