「最後のたまごまる杯」参加と受賞のお知らせ(+α)

タイトルにもありますが、たまごまるさんが主催されておりました「最後のたまごまる杯」に参加させていただいておりました。

たまごまる杯とは、主催者であるたまごまるさんが「応募者の記事を全て読み、その中から心震わしてくれた作品に賞を贈呈するコンテスト」です。今回はたまごまるさんとゼロの紙さんがそれぞれ賞を選ばれる形式となっておりました。これだけでもとても労力のかかることがお分かりだと思いますが、応募者はなんと260名(!)だったそうで、しかも複数回にわたって選考を行っておられます。本当にあふれるほどの愛と情熱がなければできないことだと思います。

そして今回、拙作の「Fly me to the moon」がたまごまるさんより金賞をいただきました!

受賞に当たっては、たまごまるさんから愛のこもった素敵なコメントを頂きました。具体的なコメントは是非たまごまるさんの記事でご覧いただければと思いますが、本当に作品を書いて良かったと心から思える素敵な言葉を頂いております。本作のタイトルは「Fly me to the moon」ですが、私自身が本当に素晴らしい場所に連れて行ってもらったな、と思っています。

たまごまるさん、ゼロの紙さん、審査お疲れ様でした。素晴らしい企画に参加させていただき、ありがとうございました。
愛と情熱に満ち溢れた、たまごまるさん、ゼロの紙さんに感謝を込めて。


<光の朝に>

冬の柔らかい朝の光が、優しく私の頬を撫でる。

うっすらと目を開けると、湖に面した窓から湖面に反射した光が入り込んできて、複雑な模様を寝室の天井に描き出している。私はベッドに横たわりながら不可思議な光の戯れをしばし楽しんだ。
隣では彼が小さく寝息を立てている。昨日は運転もお任せしちゃっていたから彼も疲れていたのだろう。せっかくのふかふかのベッドなのだから、彼にはそれをもう少し楽しんでもらうことにしよう。そう思った私は彼を起こしてしまわないように気をつけながら、そっとベッドを抜け出した。

手早く着替えをすませると、私は泊まっているコテージの湖に面したドアをそっと開けた。夜空に輝く大きな月を鏡のように映し出した昨日の湖とはまた違って、わずかに吹き抜ける風は無数のさざ波を湖面に立てている。冬の光線はおだやかにその波を照らしだして、きらきらとした煌めきを、湖面に突き出した桟橋に立つ私のところまで届けてきていた。煌めきのうちの一つがふと目に入り込んできて、思わず私が目を細めた瞬間、視界の端、湖のほとりに広がる雑木林の中にちらりと動くものが見えた。

……猫かな?
それにしてはなんだか妙に首まわりがもふもふとしているような気がする。

私は導かれるようにして桟橋から雑木林へと向かい、その謎の生き物の後をついて行く。その生き物は踊るような足並みで木漏れ日が差す林の中の小道を進んで行く。
途中、黒い猫(こっちはわりと普通の猫っぽい)がどこからか現れて、その生き物とじゃれ合い始めた。二匹は私を先導するように道の先へ先へと向かっていき、私はふわふわとした足取りで雑木林の中をゆく。

二匹の案内で辿り着いた、梢の途切れた先にあったのは、色とりどりの花がところ狭しと咲き乱れる草原だった。形も色も異なる花々が思い思いに咲き誇る中を、生き物たちはひとつひとつの花を楽しむようにして歩んでいく。私はしばしその場に立ち止まって、その美しい光景をただじっと眺めていた。





「ほら、もう着いたよ」

彼の声で、私はゆっくりと目を開ける。

「……あれ?」

気がつけば、私は彼の運転するSUVの助手席でシートベルトを締めて座っていた。まだどうにも覚めきらない頭を振ってあたりを見回せば、ここは自宅の駐車場だった。どうやら帰り道も私は寝てしまっていたらしい。私の寝ぼけ顔を彼が苦笑しながら見つめている。

「ずいぶんとぐっすり寝ていたみたいだけど、なにか良い夢でもみてたのかい?」

夢?
私は夢を見ていたのだろうか。

覚醒と同時に遠ざかっていくイメージの中で、私はうっすらと不思議な生き物を思い出す。もう輪郭もはっきりしていないけれど、その生き物と一緒にとても素敵な景色を見たことだけは、私の中にしっかりと残っていた。

じんわりと温かさの灯る心のぬくもりを感じながら、旅路を終えた私はゆっくりと車を降りるのだった。




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