恋愛で初めて泣いた
恋愛で初めて泣いた。付き合ってもないのに、好きな人にフラれて泣いた。
己の気持ちの整理のためだけに書く。
まず、俺は過去に付き合ってきた恋人たちと、3カ月以上の関係を維持できたことがない。過去の俺は相手を肯定するフリをして女性を引き寄せ、小さな自尊心や自己肯定のためにその女性を消費していたような最低な人間だった(言葉が悪いが、本当にこんな感じだった)。その行いは直接指摘されずとも、健康で自他の境界がはっきりしている人間は、しっかり本性を見抜いて自ら離れていくものである。
しかし、彼女は普通に指摘してきた。「お前の悪い所10選」みたいな感じの箇条書きのラインが送られてきたときは思わず笑ってしまった。しかし内心ドキドキもしていた。それは見事に、かつ的確に俺の本性を見抜いた内容だったからだ。人から指摘されるとこんなに恥ずかしいことを今までしてきたのか、という気持ちになった。
詳しくは調べてほしいが、その日からカスみたいな性格と認知を修正すべく、「認知行動療法」というものを始めた。つらい現実と向き合うことの繰り返しだったが、「彼女と健康的に関わりたい」という欲のおかげでなんとか頑張れた。
人間を感情:論理で表すとき、俺は9:1の感情人間だが、彼女は真逆で1:9の論理人間だった。俺がなろうとしてもなれない、その極めて冷静な性格に惹かれた。話し方に知性が見え隠れしていた。そして人の悪い所を平気で指摘できるようなところに興味があった。
要約するならば、彼女は俺が自主的に変わろうと思ったきっかけである。初めて愛したいと思った人である(キモい)。
だから付き合ってもないのに泣いたのだと思う。自殺未遂するほど好きだと思い込んでいた前の彼女に別れを告げられた時は、泣こうとしても泣けなかったのに。
告白→返事という流れではなかった。というのは普段から俺が好き好き言いまくっていたし、その態度が相手に圧を掛けていた。愚かにも、そのことに気が付かなかった。彼女は「私とは真逆すぎる。どっちが悪いとかいう話ではなく、ただお互いしたいことが違うだけ。大切に想ってくれてるのに申し訳ないけど私はその気持ちに応えられない。」こんな感じのことを言った。
好きだと自覚した日から何となくこうなることは分かっていたし、極めて納得できる理由で断られている。(なので心へのダメージは少ないと、今になって自覚できる)ただリアルタイムでの心情は全く異なった。メッセージを見た瞬間、心臓がひときわ大きく鼓動したのが分かった。経験上とても悪い兆候だ。心拍数がどんどん上がって、筋肉がこわばって、画面から目を離せなくなる。脳が処理を拒んでいる。
再び脳が処理機能を獲得するまで10分ほど経ち、なんとか内容を理解してはうなだれた。その時は「拒絶された」という事実のみが心に重くのしかかっていた。
うなだれて数分経ち、YouTubeの自動再生でキタニタツヤの「私が明日死ぬなら」が流れているらしいことに気付いた。意識がだんだんと覚醒し、歌詞を意識して聞いた途端涙が溢れた。近所迷惑も関係なく、みっともなく声を上げて泣いた。何度も曲を巻き戻しては同じ歌詞のところで何回も泣いた。ただ不思議だったのが、涙がこみ上げるまでは悲しいのだが、涙が目から溢れてからは晴れやかな気持ちに変わったことだ。変わろうと思えたきっかけをくれてありがとう、という思いが確かにあった。死んでしまいたいという気は全く起こらなかった。ただやっぱり悲しくもあった。感謝もしていた。人を好きになれた自分に対する高揚感もあった。なんとも不思議な感情で泣いていた。