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自然について考えていったらアナキスト山伏になってしまった話(成瀬正憲トーク)

『死なないための暴力論』 刊行記念対談「暴力と尊厳の考古学」で、著者の森元斎さんとの対談相手をつとめていただいた山伏の成瀬正憲さんを再びお迎えし、年内で閉まる気流舎のためにお話をしていただきます。貴重な機会ですのでぜひお越しください。(ハーポ部長)

日時:2024年11月22日(金)19時半〜21時(開店18時、閉店23時)
会場:気流舎(下北沢)
会費:入場無料、投げ銭制
店番:ハーポ部長

photo by Kohei Shikama


自然哲学を研究していた大学生のころ、「自然」というものをどう考えたらいいかと思いあぐねながら、「自然と人間」といった枠組みにひっかかりを感じていた私は、キャンパスを飛び出して不耕起農業や里山保全の実践に学び、山伏修行を通じて自ら自然になっていく経験を経て、山にかたちづくられる生のあり方を探しはじめました。

羽黒修験の息づく山形へ移住し、採集を生業とし、土地に培われた知と技術を身に宿し、採食文化からフォークアートにわたる領域でそれを糧に暮らし、まるごと山にかかわってきました。

山伏の修行は、生きている人間の外から世界を見る眼差しを与え、山での採集は、山の言葉が聴こえる耳を授けてくれました。そこから眺め、耳をそばだてていると、人間社会をつくる制度というもののいびつさがよくわかります。それをぐらぐらと揺らし、別のあり方を見すえることができるのです。

いまと根本的に異なる未来の可能性など何もないとこの世の統治者たちはふるまっています。それを凌駕するほどに、わたしたちはこの大地に住まうことはできるでしょうか。どこで、だれと関係を結び、どう生きていくのかを実践することは、経験にもとづく別の政治を編み直すことであり、わたしたちの自由を開くことでもあります。

世界的な内戦の時代に突入したいま、山伏やアナキズムの知見を通して野生の自由について考える時間が、これからを見つめるきっかけになればうれしいです。(成瀬正憲)

プロフィール
成瀬正憲(なるせ・まさのり)
1980年生まれ。東北公益文科大学非常勤講師。山伏、採集者。山伏の修行を重ねながら、月山山麓の山菜やきのこの採集、土地の手仕事の継承など、多様な経済活動を行なっている。論考に「自然について考えていったら山伏や採集者になってしまった話」(『私たちのなかの自然』左右社、二〇二二年)、「山伏とアナキズム」(『思想としてのアナキズム』以文社、二〇二四年)など。

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