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驚愕の集団脱走!アメリカダイエットキャンプ事情

それは英語のサマーキャンプ生がスーパーへ行くお買物の日。
 
クラスメートたちと駐車場に向かって歩いていると、いつも行き倒れのようにあちこちに座り込んでいる(へたりこんでいる)ダイエッターたちの姿が見えない。
 
今日はアクアビクスの日だったかなあ、なんて思いながらバンに乗ってドライバーさんを待っていると、いきなりオヤジ(校長)がトランクにライフルを放り込み、運転席に乗り込んできた。
  
凍りつく私たち。
 
「エブリボディ、ランなんたらかんたら!」
 
え、走れ? 車を降りて走れってこと?
 
「君じゃない! ダイエッたーたちが逃げたんだ。ランナウェイ!」
 
逃げた!?  
しかも集団で!?
 
当時は制作すらされてなかったけど「プリズンブレイク」ダイエットキャンプ編ってこと?
 
そしてオヤジは「早く連れ戻さないと!だからスーパーは後でね」
などブチ切れながら猛スピードでバンを急発進しました。
 
私たち生徒を乗せてるのに悪夢のような暴走運転。
しかも銃大国アメリカとはいえ謎のライフル携帯。
今なら国際問題に発展するかもしれない暴挙が平然と繰り広げられていたなて、古き良きおおらかな時代でしたね。
 
とにかくアクションドラマのごとく猛スピードでバンを走らせるオヤジ。
叫ぶ余裕もないくらい必死で席にしがみつく私たち。

と走り始めたばかりなのに急ブレーキ。
 
絶叫する私たちを尻目に、オヤジは無言でバンを出る。
 
おそるおそる窓から外を覗くと、先日大号泣した少年が校門を出たところでへたりこんでいるじゃないですか!
 
しかも仰向けになってハアハア言ってる、、、
 
窓を開けて外を見ると、
屍のごとく転々と行き倒れているダイエッターたちのこんもりしたシルエットが…
 
スーパーまで車で5分だけど徒歩40分。
オヤジ(校長)たちの厳しい監視下では、私達にアイスやポテトなどの密輸(買物)は頼めないと悟った彼らは、好物への欲求を抑えきれずに決死の覚悟でスーパー目掛けて脱走したのでした。
しかし、徒歩40分の道のりは彼らにとって果てしなく遠かった……
集団脱走したはいいものの、校門を出たところで力尽き、次々と無念のリタイア。
 
しかし――
牧場並みに広い高校とはいえ、寮から門まで徒歩5分。
早すぎませんか、力尽きるの。
 
まあ、連日30℃超えの炎天下の中、脱獄するのは彼らにとって超えられない壁だったのでしょう。
もちろんオヤジがひとりひとりを捕獲し、全員無事、救出されたのでした。
 
その後スーパーへと旅立つ私たちを涙目で見送る彼らの視線、30年経った今も忘れられません。
 
一体どんな大人になっているのでしょうか。
案外とんでもない美男美女になっているのかもしれませんね。

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