フリック入力感覚で覚えるAZIK: 日本語をたくさん打ち込む人へ
このノートでは、キーボードで日本語入力を効率よく行うために開発された「AZIK」という入力形式について解説いたします。
布教しやすくするためなるべく平易に説明しようと思いますので、お付き合いいただければと思います。
●AZIKのメリット
AZIKがどのような入力形式であるかは、下記のページにまとめられています。
(このノートは下記の解説書を初学者向けに書き直したようなものです)
ここで挙げられている例を見ると、「にゅうじょうけん(入場券)」という言葉は普通のローマ字入力では、
と11打鍵で入力しますが、AZIKでは、
とたった7打鍵で入力することができます。
「打鍵数が少なくなる」というのは非常にわかりやすいメリットですね。
……最初は「なんで『NGHJPKD』が『にゅうじょうけん』になるんだよ!? こんなの覚えられる気がしない」と思ってしまうかもしれません。
安心してください。現にAZIKを使っている私でも「NGHJPKD」という文字列を見てパッと「にゅうじょうけん」と読むことはできません。
読めなくても打てる。その理由は、AZIKが「指の動きに基づいて設計されている」からです。
これはちょうど、スマホで標準的に用いられるフリック入力に例えて説明できると思います。
フリック入力で「にゅうじょうけん」を入力する様子をあえて文字で表すなら、以下のようになるでしょう。
これを見てパッと「にゅうじょうけん」と読める人はまずいないでしょう。
でも、実際にフリック入力をしているときはわざわざこんな文字列を思い浮かべたりしませんよね。
それは、フリック入力には「子音にあたる文字に指を置いてからフリック方向で母音を指定する」という単純な原理があるからです。
だからこそ覚えやすいですし、慣れてくれば「指が勝手に動く」ように入力できるようになるのです。
AZIKについても同じことがいえます。
キー入力だけを見ると難しく感じるかもしれませんが、実際は指の動きに基づいた配置になっているから覚えられるのです。
この「習得難易度の低さ」もまたAZIKのメリットのひとつであるといえます。
論より証拠。さっそく試してみましょう!
Step0. AZIKを導入する
AZIKは既存のローマ字入力を拡張したものなので、使う前に設定が必要となります。
Google日本語入力をお使いの方は下記ページを参照してください。数分程度で設定できます。
(それ以外のIMEをお使いの方も「ATOK AZIK」等と検索すれば同様の解説が出てくるはずです)
Step1. 「っ」「ん」「ー」の入力
まずは以下の3つを覚えてください。
これに関してはそのまま覚えましょう。
「ん」を打つときに[NN]を使うか[N]を使うか迷わなくていいので便利です。
また、伸ばし棒に関しては普通のローマ字入力と同じく[-]で打つこともできますが、指を上に伸ばさなくていいぶん[:]の方が楽です。
Step2. シャ行・チャ行の入力
続いてはシャ行・チャ行の入力です。
これもそのまま覚えましょう。
端っこにあるあまり使われないキーを有効活用している感じです。
強いて覚え方を挙げるとすれば、「XはスマホメーカーのXiaomi(シャオミ)のシャ」「CはChoco(チョコ)のチョ」という感じでしょうか。
Step3. 拗音単独の入力
続いては拗音、つまり「ぁ」や「ゃ」等を単独で入力する方法です。
これに関しては通常のローマ字入力でも使う組み合わせなので覚えやすいでしょう。
要するに、小さくしたい文字の前に[L]を打つだけです。
人によっては「[XA]→ぁ」というように[X]を使っていたかもしれませんが、Step2で説明した通りAZIKでは[X]をシャ行の入力に使うことにしたため、拗音を打つときは[L]を使います。
また、これは拗音を単独で入力するときに使うものなので、普通に文章を打っていて出てくるような拗音は今まで通りの入力でOKです。
[FA]→ふぁ、[KYA]→きゃ、[NYA]→にゃ、といった感じですね。
●Step3まで覚えれば最低限のAZIKが使える
Step1~Step3までざっと説明しましたが、実はこれ以外の入力は通常のローマ字入力を流用することもできます。
どういうことか、いくつか具体例を見てみましょう。
上の例で、太字にした部分以外はすべて通常のローマ字入力と同じであることがわかると思います。
AZIKには他にも便利な入力方法がたくさんあるのですが、それを一気に覚えたりしなくても、みなさんは既にAZIKで日本語入力できるようになっているのです!
今まで使ってきたローマ字入力の経験が無駄にならない。これもまたAZIKのメリットといえるでしょう。
とはいえ、Step3までだと「いくつかの入力方法が変わっただけ」という印象を受けるかもしれません。
AZIKの便利さを本当に感じられるようになるのは、これから説明していくStep4以降からです。
それらのStepについても一気に覚える必要はなく、Step4に慣れてきたらStep5を取り入れるというように、段階的に覚えていきましょう。
Step4. 「◯ん」の入力
ここで説明するのは「撥音拡張」と呼ばれるもの。
「かん」「にん」というように、2文字目に「ん」が付くような音の入力です。
AZIKでは次のように入力します。
ここで大事なのは、「[Z]=ann、[K]=inn、……」というように対応するキーをそのまま覚えるのではなく、キーの位置をもとに覚えるということです。
つまり、「[A]の下にあるキーを押すと『ann』になる」といったように覚えましょう。
冒頭で「AZIKが指の動きに基づいて設計されている」といった意味がわかるかと思います。
これらを使った入力例を挙げると次のようになります。
「母音の下にあるキーを押すと『ん』が付いてくる」というイメージですね。
なお、「あん」「いん」「うん」「えん」「おん」についてはこのような入力は使えないので、Step1の[Q]を使って「ん」を打ってください。
Step5. 二重母音の入力
ここで説明するのは「二重母音拡張」と呼ばれるもの。
母音が続く音を1打鍵で入力するもので、具体的には次のようになります。
これもまた、キーの位置をもとに覚えていきましょう。
「二重母音の最初の母音の隣にあるキー」が、それぞれの二重母音の入力に割り当てられている感じですね。
Step4の「◯ん」の入力よりは覚えづらいかもしれませんが、使っているうちに指が覚えてくれると思います。
(私の知り合いは「Oを強く押そうとしたら隣のPが押されてouが入力される」というようなイメージで覚えたと言っていました)
これらを使った入力例を挙げると次のようになります。
また、最初のうちはどのような二重母音が省略して打てるのか思い出せなくなる場合があるかもしれません。
私は「たいくうせいのう(対空性能)」という言葉を語呂合わせとして使いました。この言葉は、上に挙げた4つの二重母音をすべて含んでいます。
普通に打つと12打鍵かかる言葉が8打鍵で済むというのはなかなか爽快感があるので、この言葉を繰り返し打ったりして覚え込むのがいいと思います。
●Step5まで覚えるとAZIKのうま味が出てくる
Step4で説明した「◯ん」や、Step5で説明した二重母音というのは、思っている以上によく日本語の文章に現れてきます。
具体例をいくつか挙げてみますので、よければ一緒に入力してみてください。
(キー入力も併記しますが、実際に打っているときはそのアルファベットを思い浮かべているわけではないということに留意してください)
ここで挙げた例文はAZIKのよさが存分に出るように考えたものではありますが、そこまで不自然な文章ではありませんよね。
日本語入力においてAZIKを活かせる場面が多いことがわかっていただけたのではないでしょうか。
ここからは、筆者も部分的にしか使っていなかったりする拡張について簡単に説明します。
「便利そうだな」と思ったら取り入れてみる、ぐらいの感じでいいと思います。全部を覚える必要がないのもAZIKのよさですからね。
(詳しく知りたい方は解説書を読んでみましょう!)
ExStep1. 互換キー
これまで説明してきた入力方法を使っても打ちづらいパターンについて、別の入力方法が用意されていたりします。
「きゃ」「ひゃ」「みゃ」等の拗音を打つとき、[Y]の代わりに[G]も使える。
「子音+ann」という音を打つとき、子音が左手のキーにあたる場合は[Z]の代わりに[N]も使える。
その他、運指の関係で打ちづらい音に[F]を使った互換入力が用意されている。
ExStep2. 特殊拡張
「◯ん」や二重母音以外にも、日本語に頻出する音というのはいろいろあります。
それを簡単な打鍵で打てるようにしたものが特殊拡張です。
解説書にある表を引用します。
これまで説明してきたAZIKの入力方法は指の動きに着目したものですが、この特殊拡張については文字のイメージから連想するようになっています。
これにはひとつ弱点があり、「間違った言葉を連想してしまう」という可能性があります。([KT]を「かた」のつもりで打ってしまう等)
なので、この表を見て「この音は確かによく使うな」と思ったものに絞って覚える等、ご自身に合った形で取り入れていくのがいいでしょう。
ちなみに、筆者は「[DS]→です」「[MS]→ます」だけを使っています。
この2つを覚えると「です・ます調」の文章がとても書きやすくなります。
(このノート自体も「です・ます調」ですね!)
ExStep3. その他
これまでのどれにも属さないような入力方法です。
仮にここまで使いこなしたらもうAZIKマスターを名乗れると思います!
外来語に多い特殊な拗音について、子音の後にその下のキーを打つことで入力できるようにしている。
外来語にしか見られないような音については、「う」の代わりに伸ばし棒が入力されるようになっている。
その他、単に打ちづらいパターンについて個別に打ち方が設定されている。
●あとがき
以上でAZIKの説明を終わります。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
筆者は2023年3月にAZIKを知り練習しはじめ、4月にはもうAZIKなしで文章を打つのがダルく思えてしまうほど手に馴染んでいきました。
AZIKはキーボードの配置自体を変えてしまうわけではないのに加え、段階的に覚えていけるということもあり、移行するハードルはかなり低い方だと感じました。
なので、「これはいいものだ」と思って知り合いにAZIKを布教しようと思ったのですが、どうも冒頭に挙げたような
というようなキー入力だけを見て、あまりの見慣れなさに「いや、こんなの覚えられるか!」と思ってしまいなかなか手が出せないようでした。
そこで、このノートではまず「AZIKは怖くないよ!」というのをわかってもらうための説明に文字数を割きました。
「フリック入力だって入力を文字に起こしたら意味わかんないでしょ!」というのは我ながらいい喩えを思いついたな~ と感じています。
このノートを通じて「ちょっとAZIKやってみようかな」と思い立ち、快適な日本語入力ライフを謳歌する人がひとりでも増えてくれたら筆者としてはとても嬉しい限りです!
それでは改めてまして、このノートに目を通していただきありがとうございました!
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