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『作文指導を変える:つまずきの本質から迫る実践法』を読んで②

国語科での作文指導について知りたくて読んだ本書について、前回の投稿の続きです。

読み手が読みたいものを書く

作文指導において、「何を書いたらいいか分からない」という生徒を多く見ます。筆者によれば、こうした生徒は、「書くことがなくて困っていることよりも、書きたいことがたくさんありすぎて、何を書いたらいいか分からない」というケースが多いそうです。そこで筆者は、「書きたいことを自由に書いてごらん」というアドバイスよりも、本当に指導すべきは「読み手が、読みたいものを書く」ということだと言います。

私は、「読み手が読みたいものを書く」という考えに強く賛同します。どんな作文でもそうです。筆者も言うように、理想は書き手が書きたいことと、読み手が読みたいものが重なっていることです。しかし、ものを書くときに、発想のスタートは読み手が何を求めているかを考えるというのは、あらゆる作文活動(国語でも英語でも)において非常に重要であると思います。

先日、私の高校英語のテストで、悩んでいる友人からのメールに返信を書くという問題を出題しました。テストというプレッシャーのせい、また時間が足りずにろくに問題文を読んでいなかったのだと思いますが、非常に残念なことに、「メールの返信」であるにも関わらず、"I agree with [友人名]. I have two reasons." みたいな答案が何枚もありました。こうした解答をしてしまった生徒には、普段から「読み手意識」が圧倒的に欠けていると思うのです。

読み手は誰か

作文を書く生徒に「読み手意識」が足りない原因は、指導者側にあるかもしれません。つまり、日頃から作文を書かせるときに、「読み手」を明確に設定して書かせているかということです。著者もこのことを問題提起していて、「読み手が読みたいものを選べ」という指示だけでは不十分で、「読者は誰なのか」と、「何のために書くのか」という設定を定めないといけないと指摘しています。

著者の調査では、作文後に学生に「読み手は誰を想定して書いたか」と聞いたところ、圧倒的多数が読み手を「先生」と想定して書いたと答えたそうです。私も、こうした解答は容易に想像がつきます。そしてもちろん、これは普段、作文を書かせるときに読み手の設定を生徒に伝えていないことの表れでもあります。そこで著者は、読者をクラスの仲間に設定することを勧め、「書き込み回覧作文」を提案しています。

クラスの仲間を読者にする「書き込み回覧作文」

作文において「読み手意識」を持たせるため、生徒の作文を文集にして配布することがありますが、文集を生徒に渡しても、自分の文章と自分が好きな人の文章しか読まないため、労に見合わないと著者は言います。私も英語エッセイを文集にして配布したことが何度もありますが、まったくその通りと頷きました。

文集を作成して配布するよりも、はるかに簡単でかつ効果的な共有方法を筆者は推奨しています。それが「書き込み回覧作文」です。その名の通り、作文を生徒間で回覧していきます。それ自体はありふれた共有活動だと思いますが、私が効果的だと思ったのは、回覧時に、生徒が作文に直接コメントを書き入れていくということです。そして、書き入れるコメントは共感と肯定のみに限るということです。また、コメントを略語で記入することもあるといいます。「なるほど」は「なる」、「面白いなあ」は「w」、「驚き」は「!」といった具合にするそうです。

私は、この「コメントは共感と肯定に限る」ということと、「コメントを略語で」というところが、この「書き込み回覧作文」の素晴らしいところで、自分の英語授業でもぜひ取り入れたいと思いました。コメントの略語は、英語での略語を紹介してそれを使わせることにより、生徒の興味関心にも非常に良い影響を与えるのではないかと思います。例えば lol (laugh out loud) だったり、共感という意味では "This!"(日本語の「それな」的な表現)など、SNSで実際によく見られる表現を紹介することができるでしょう。

作文指導について学べる良書

以上、2回の投稿に渡って、本書を読んで特に学びになったところを紹介しました。他にもハッとさせられるところや指導方法に関する有益な情報が数多く載っています。自分の備忘として項目だけ挙げると、

  • 大人の執筆者には編集者がいるのに、子供にはいない。

  • 引用を促す「きっかけの言葉」。「引用+意見+事例・理由」

  • 書き出しの指導。インパクトと、音。

ぜひご一読なさることをお勧めします。

国英で指導技術の交流を

本書は国語科の指導技術を紹介する本ですが、英語科の私にとっても多くの学びがありました。私は、このような発見をしたくて国語科教育の世界を覗いており、学んだことを「ヨンギノー英語教師が国語教育を学んでみた」というマガジンにまとめています。英語科が国語科の実践から学べることは、まだまだあると思っています。

一方、その逆もあり得ると考えています。本書の筆者、池田氏は「国語科を実技教科にしたい」と仰っています。実際に国語科学習指導要領でも言語活動の充実などが求められ、大きな流れとしてはその方向に向かいつつあるのではないでしょうか。であるとするならば、国語科の「実技教科化」や「言語活動の充実」に際して、英語科から国語科に提供できる知見もあるのではないでしょうか。

同じようなお考えの方やご賛同いただける方と、ぜひ交流したいと思っています。コメントやご連絡(プロフ→Twitterアカウント)いただけたら嬉しいです。

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