中高での4技能を統合した言語活動②

前回の投稿では、中高英語教育の現場でよく使われているものを中心に、4技能統合のうちReading発の言語活動を考えてみました。今回はListening発の技能統合活動を考えてみます。

3. Listening to Speaking

読んだものを声に出す(reading to speaking)という最も基本的な活動が音読である(前回投稿参照)ように、聞いたものを声に出すという最も基本的な活動として考えられるのはshadowingです。スクリプトの字面を見ないで聞こえた音だけを頼りに声を発するので、listening to speakingとなります。同様に、文字を見ないで行うrepeating練習も、listening to speakingの統合と言えるでしょう。もっとも、各種音読練習と同様、これらのshadowingやrepeatingの練習を言語活動と呼ぶに値するかどうかは疑問であり、あくまでpracticeという位置づけでしょう。

コミュニケーションを伴うlisteningとspeakingの統合活動としては、会話がまさにそれにあたります。口頭でのやり取りではlisteningとspeakingの両方を使うことになります。

また、Reading to Speakingの代表的な教室内言語活動がretellingであることを考えると、Listening to Speakingの統合活動として聞いたことを再話するretellingがもっと行われてもいいのではないでしょうか。Listening音源を元にしたretelling活動の報告はあまり聞いたことがありませんが、音源に根気強く何度も耳を傾けてメモを取り、メモを頼りに再話する活動は良い練習になるのではないでしょうか。一人一台端末のICT機器を活用すれば、書面ではなく音源でinformation gapを作り出したり、様々なタスクが考えうると思います。今後はこの統合パターンの教材が増えてくることを期待します。

4. Listening to Writing

読んだものを元に書く最も基本的な活動はdictationになります。Dictationは聞き取る力や綴りを含めた語彙力、文法知識など多くの知識技能を統合した活動であり、また実施のしやすさから中高の現場ではかなり使用されている活動だと思います。

また、dictationのように一語一句を書き取るのではなく、メモを取って(場合によってはペアやグループで協調して)内容を再現するdictogloss活動も、listening to writingの活動と言えます。

このようなdictation/dictogloss活動を除いては、中高の授業でlisteningから直接writingにつなげることは稀です。その理由は教科書の扱い方にあると考えられます。

教科書本文をlistening教材として聞かせることは導入として行う場合はありますが、聞かせた英文は教科書の本文ですから、聞かせた後にその英文はreading教材としてより深く学ぶことになります。そのため、listeningから直接readingの活動へ移行することはあまり考えられません。

しかし、教科書本文ではなく、周辺教材(教科書本文の題材を補うインプット)としてより多くのlistening教材が手に入るようになれば、listening to writingやlistening to speakingの統合活動にもっと光が当たるようになるかもしれません。この辺りは上述のようにICT機器により変化がもたらされることが期待される分野です。

もっとListeningをベースにした活動を

今回はリスニングからアウトプットにつなげる複数技能を統合した言語活動を考えてみました。

考えてみると、リスニングをベースにした統合的活動は、リーディングに比べると中高の教室でそれほど行われていないと感じます。これは、そもそもリスニングが中高の授業で比較的扱われていないことに起因しているかもしれません。

読んだものをretellingしたり、読んだものについて感想を書いたりするのと同じように、聞いたものを自分の言葉で言い表したり、聞いたものに対して自分の考えを述べたりする活動は、実際の言語使用を考えればごく自然で頻度の多い言語使用のはずです。英語授業においてもそうした活動がもっと増えてもいいのではないでしょうか。

そうしたリスニングベースの言語活動が中高の教育現場でそれほど普及していないのには、ひとつには音声教材を扱う際の技術的な難しさがあると考えられます。

一斉授業で音源を流して生徒に聞かせれば、個々の生徒の必要に応じて音声を繰り返して流すことはできません。例えばretellingをさせるとして、教科書本文のretellingであれば、うまくretellできなかった部分は教科書を見れば確認・再構築が個人で可能ですが、リスニングの場合、個々でそれぞれが音声を再生して内容を確認することができません。

ただ、この点に関しては、ICT機器の普及により今後可能性が広がるでしょう。生徒が一人一台のICT端末を持って授業に臨んでいる状況であれば、自分が納得のいくまでリスニング音源を繰り返し聞いて、リスニングだけを頼りにしたretellling活動なども十分可能になると思います。

私の勤務校では現時点でそのようなことが可能なICT環境にはありませんが、今後そうした方向に変化していくことは間違いないので、いろいろな活動を模索していきたいと思います。

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