技能・領域の「統合的な指導」を考える①
前回の投稿では、国語科学習指導要領における「領域ごとの授業時数」の記載をきっかけに、技能・領域統合について立ち止まって考えることにしました。
今回でも引き続き、統合的な指導について考えてみます。
なぜ技能統合するのか
ふと思い返してみると、私自身、なぜ技能統合するのか、体系だった理論的なものに触れた記憶があまりありません。
よく言われるのは、それが自然な言語使用だから。実際の言語使用の状況として、聞いたり読んだりしただけで終わりということはあまりありません。聞いたことや読んだことを誰かに伝えたり、その情報を元に何かしらのアクションを起こすことがほとんどです。技能を統合して使うのが自然である。よって統合的に指導するのは「当然のこと」である。
もちろんそれが正しく、またそれが全てと言ってしまえばそうなのかもしれませんが、英語教授法の他のアプローチや指導技術と同様に、理論的背景を元にした体系だった整理はないものでしょうか。
体系だったものでないにしても、なぜ統合するのか、理解を深めることで統合的な指導実践がより進められるのではないでしょうか。
英語教育界で技能統合はどう扱われているか
英語科の学習指導要領やその解説には4技能5領域を結びつけた統合的な言語活動の重要性が至る所に書かれていますが、なぜ重要なのかまで踏み込んだ記述はないようです。
一般的な英語教育系の書籍ではどのように書かれているでしょうか。試しに手元にあった大修館『英語授業ハンドブック<高校編>』(2012)を見てみました。
書籍の中では、「聞いたり読んだりしたことについて話す活動」「聞いたり読んだりしたことについて書く活動」「聞いたり読んだりしたことについて話し合う活動」のような統合的言語活動の実例が示されています。
ただ、ここでもなぜ技能を統合して扱うのかについての説明的な記述は見当たりません。目次を見ても、章立てとして4技能を別個に扱いつつ、「統合」に関する章は設けられていません。
もちろん学習指導要領解説も英語授業ハンドブックも、理論背景を説明する目的のものではありませんから、統合の理論的根拠が示されていなくても当然かと思います。ただ私自身も技能統合について体系だった説明に触れた記憶が無いので、ひょっとしたら技能統合に関する理論的背景や根拠は、それほど一般的に語られていないのかもしれません。(私がたまたま知らないだけでしょうか。)
海外の書籍では
海外のSLAやTESOLといった分野の書籍では、技能統合はどのような位置づけでしょうか。
何が「一般的」な書籍か分かりませんが、試しに私がTESOLの入門的な科目で学んだ書籍を見てみました。
私が学んだのはだいぶ昔になってしまいますので、手元にあるのは2nd editionでした。なんとそれからすでに2版も改訂が出ていることに驚きです。
Brown, H. D. (2001). Teaching by Principles: An Interactive Approach to Language Pedagogy (2nd ed.)
先ほどの『英語授業ハンドブック』よりはもう少し専門書寄りの書籍かと思うので比べるのはフェアでないかもしれませんが、教員養成の「一般的」な書籍(私の手元にあったというだけですが)ということで比較してみます。
目次を見てみると、各技能別の章に先立って Integrating the "Four Skills" という章が設けられていました。また、その章の始めには "Why Integration?" という、この投稿のまさにそのままのテーマを扱う節があります。
技能統合について詳しく学んでみる
ふとしたことから技能統合についての疑問に行き当たり、なぜ複数技能を統合的に扱うべきなのか、その理論的背景や体系的枠組みを求める旅に一歩踏み出すことになってしまいました。
日本での学習指導要領や教員向けの一般的な指導書には、論理背景的な記述は見られませんでした。ひょっとすると、技能統合はまだ比較的新しい概念で、体系だった理論はまだ一般的には共有し尽くされていないのかもしれません。
海外の書籍や、日本でももっと専門的な書籍には、技能統合の理論的背景や体系が書かれているようです。次回以降の投稿で、詳しく見ていこうと思います。
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