(備忘メモ)Capture Oneのツールの効果
(2024.1.17 改稿)
Lightroom ClassicからCapture One(キャプチャーワン、以下「C1」という。)に移行して1ヶ月経ったので、C1ならではの機能について調べたことを簡単にメモしていきます。
この記事は現像ソフトの基本的なことは理解しているが、ツールの細かい意味や違いがまだまだ曖昧な中級者向けを想定しています。
なお、公式のマニュアル、ウェブに転がっていた記事やYoutubeを見ての個人的な理解に基づいて書いており、学術的な理論やアルゴリズムの理解をしている訳ではありませんので、その点はご容赦ください汗 当方は文系のど素人です。。。
露出機能について
C1の「露出」ツールには、「露出」Exposureと「明るさ」Brightnessという、明るさをコントロールする2つの項目があります。
「露出」は全体の明るさに影響して、黒潰れ・白飛びが発生する可能性もあるが、「明るさ」は中間部の明るさに主に影響があり、黒潰れ・白飛びしにくい、という違いがあります。
・「露出」exposureは、画像の明るさを変化させる機能となります。また、それに伴って、ヒストグラム上の色・輝度luminanceが左右に移動します。なお、色被りcolor castや色相hueの変化はありませんが、明るさが変わるので結果として見た目の彩度saturationが変化します(←彩度Saturation・輝度Lightnessとの関係:明るくなると結果として見た目の色の濃さが変わります)。
〜公式マニュアルより当方が適当に訳出・まとめ
・「明るさ」brightnessは、「露出」が全体の明るさを対象とするのと比べ、主に中間部の明るさに影響を与えるパラメーターのこと(←ハイライト・暗部への影響は少ないので、結果として白飛び・黒潰れしづらくなる?)。
〜公式マニュアルより当方が適当に訳出・まとめ
クラリティー(明瞭度)について
C1の「クラリティー(明瞭度)」Clarityツールには、「クラリティー」Clarityと「ストラクチャ」Structureという2つの種類があり、両方とも明暗の境界線を変化させる機能(エッジを際立たせて迫力のある映像を作ったり、エッジを緩やかにすることで人肌を柔らかく見せる等)となります。具体的には、ローカルコントラストlocal contrast(末尾に注釈を記載)の強弱及びディテールの精密さに影響があります。
なお、クラリティとストラクチャの違いは、影響範囲scaleの大きさになります。ストラクチャは枝・ガラス、生地等のより精細なディテールに影響が出るものとされています。
〜公式マニュアルより当方が適当に訳出・まとめ
また、クラリティー・ストラクチャは共通して4つの適用形態(「方法」methods)があり、それぞれの「方法」によってコントラスト・彩度への影響度が異なります。ただ、ストラクチャへの影響は少ないとされています。
ーコントラストへの影響
パンチ=ニュートラル>ナチュラル>クラシック
ー彩度への影響の有無(影響度合いは不明)
パンチ・クラシックが彩度への影響あり。
(1)「ナチュラル」naturalは、コントラストへの影響は弱く、偽色や白飛びclipped highlightsが起きにくいとされています。この設定にしてかすみの除去の値を弱めるとソフトになるので、ポートレート向き。
(2)「パンチ」punchは、ナチュラルやクラシックより強くコントラストを強調し、彩度にも少し影響があります。この設定にしてかすみの除去をより高い値とすると白飛びが起きる可能性もあります。風景向き。
(3)「ニュートラル」neutralは、コントラストへの影響はパンチと同レベルですが、彩度への影響はありません。より生々しい描写に向いているとのこと。
(4)「クラシック」classicは、コントラストへの影響は一番低いものの、彩度に対する影響が発生します。この設定にしてかすみの除去をプラス方向にかけると建築やかすみの除去に効果的で、また、マイナス方向にかける場合はポートレートにも有効です。
〜公式マニュアルより当方が適当に訳出・まとめ
トーンカーブについて
Lightroomには4つ(RGB、R、G、B)のトーンカーブがありましたが、C1は5つあり、輝度Lumaのカーブが追加されています。RGBが統合されたカーブcombined RGB curve (ここでは「RGB統合カーブ」と呼びます)と輝度カーブとの違いは何なのでしょうか。
RGB・輝度カーブの両方とも、コントラスト・明るさbrightnessの両方に影響がありますが、輝度カーブは彩度saturationには影響がないとのことです。すなわち、輝度カーブを極端にいじった際に極端な濃淡の縞模様(バンディングbanding)が発生しづらいとのことです。
〜公式マニュアルより当方が適当に訳出・まとめ
この記述だけだとよく分からないですね。
トーンカーブ、特にRGB統合カーブと輝度カーブの効果について色々と実験しつつ検証してみましたので、細かくはこちらをご一読ください!
また、トーンカーブやヒストグラムについてご理解されたい方はこちらの記事もお読みください!初歩の初歩から分かりやすくまとめたつもりです!
とはいえ、またしてもとっても長いので以下にまとめだけ記載させていただきます!
なお、結論から言うと、
・RGBカーブは、RGBの各数値を一斉に操作する機能を持つもの、
・輝度カーブは、元の色相を維持しながら、輝度を操作するもの
となります。
すなわち、RGB統合カーブcombined RGB curveは、「統合」combinedという名前の通り、個別のRのカーブとGのカーブとBのカーブを一斉に同じ程度動かした時と同じ変化を与えるものです。RGBが変化した結果として、輝度も変化します。
※デジタル画像は加法混色といって赤緑青の混合で色・明るさが決められます。赤青緑を同じ割合で混ぜたら灰色等の中間色となり、最も明るいものは白、暗いものは黒になります。
輝度カーブとは、元の色相を維持しつつ輝度の変更を目的とするものです。輝度を変更し、また、元の色相を維持するように、新しくRGBを割り振ります。
以下、カラーチャートを使って、具体的な操作しながら説明します。
まず、RGBカーブを水平にしてみましょう。ここでは、赤・青・緑のそれぞれの値が145/256となるようにしています。
ヒストグラム上の明るい箇所も暗い箇所も、RGBが145の中間域になるように設定されたので、完全に灰色に塗りつぶされましたね。もちろん輝度も145になっています。
では、輝度カーブを水平にして、画面全体の輝度を145としてみます。
RGB統合カーブの場合と違って、カラーチャートの各パネルの色が残っていますね。なお、白・グレー・黒の部分は輝度145のグレーにほぼ統一されていますね(撮影時の光の状況やレンズ・センサー特性によって、白・黒・グレーのパネルごとに若干RGBが不揃いなので、うっすらと違いが見えますが)。
その中で、紫について元の値と比べると、
・輝度68、R75G56B109(色相Hue261、彩度Saturation49、明るさBrightness42)から
・輝度145 R155 G127 B206(色相H261、彩度Saturation39、明るさBrightness81)に輝度・RGBが上昇しています。
一方で、色相は変わっていないようです。
ここから、輝度カーブは、元の色相を維持したまま、輝度のみを上げる効果があると分かります。言い換えると、新たに設定された輝度に基づいて、元の色相と同じになるようにRGBそれぞれの値が設定し直されます。
まとめると、
・RGBカーブは、R・G・Bそれぞれのカーブを一斉に操作する機能を持ちます。あくまでRGBを操作する機能を持ち、結果として輝度が上下し、また、RGBの比率も変わる(※)ことで色相が変化することとなります。
・輝度カーブは、元の色相を維持しながら、輝度を操作するものとなります。
※かなり単純化すると、例えばR87G118B50をR137G168B100にそれぞれ50ずつ変化させれば、もちろんそれぞれの比率も変わりますし、Hueは88から85に変化します。
なお、C1の公式の説明では、「輝度カーブは彩度saturationには影響がない」とされていますが、上記実験の結果、色相Hueは変化ないですが彩度saturationは変わっています。C1の言う"Saturation"はなんなんでしょうね。他の記事では"Hue"も使っているし、さすがにC1なので意図を持って明確にSaturation/Hueを使い分けているはずですし。。。分かりませんね。
原文
"The combined RGB curve and optional Luma curve are both used to adjust contrast and brightness. The latter one [Luma curve] has the additional benefit of not increasing saturation."
かすみの除去について
「かすみの除去」dehazeとは、かすみhazeの量をコントロールし、コントラストがフラットになっている画像の彩度saturationを改善するもの(公式マニュアルより)とあります。またC1では、特定の色調Shadow toneを指定して、効果を発生させることもできます。
この項の詳細については、別の記事をこちらの通り書きましたので、ご覧くださいmm
リンクに飛ぶのも面倒なので、単純化すると、
・かすみの除去をプラスに振ると、コントラストが上がったように見え(中間色を指定した場合)、
・マイナスに振ると指定色域でカラーフィルターをかけたように見える、
ということになります。
もう少し詳細に書くと、
・かすみの除去をプラスに振ると、色相は変わらず明暗のコントラストが改善する(中間色を指定した場合)。実際、グレーなどの中間色を「色調」で指定すると、中間色の部分は輝度が下がり、それ以外の輝度は若干上がるので、コントラストが改善したように見える。
・かすみの除去をマイナスに振ると、色調で指定した部分の色相・輝度に寄った修正が行われる。赤を指定しているならば、全体に赤いカラーフィルターがかかる感じ。なお、色調で指定した部分には効果が及ばないです。また、色調指定した部分の輝度が低いと、かなり濃く補正がかかるので適用量に注意。
・なお、「かすみの除去」機能が明瞭度やシャープネスに影響があるかどうかは見た目にはあまり分かりませんでした。
ちなみに、マイナス方向に振るかすみの除去の使い方は以下のYoutubeが分かりやすいです。
実際の使い方の解説(Capture One Tutorial: Soft Light Effect with Negative Dehaze)
使用例(【現像対決】3人で同じ写真を現像して違いについて話してみた【Capture One】)
なお、今回の調査では明瞭度・シャープネスへの影響は調べていないので、ご勘弁を!
(備考)ローカルコントラスト等について
(自分でも今でも曖昧な理解で、調べつつ書いているのでご容赦ください汗)
「コントラスト」が全体の明暗・色の差異(それぞれのヒストグラムの形やなだらかさ)を示すものである一方で、より狭い範囲のピクセルのまとまり同士の明るさ・彩度の差異が「ローカルコントラスト」と思われます。ローカルコントラスト次第で細かい部分の描写が引き締まったり・眠くなるということであるということならば、LRも含めて「クラリティー」(明瞭度)の項目をいじった時の体感と一致します。
ただ、ローカルコントラストが「コントラスト」と比べて、もう少し狭い領域での明るさ・彩度の違いであったとしても、その領域の範囲はよく分かりません。
ちなみに、上で述べた通り、ローカルコントラストは「クラリティー」の項目でいじることができます。
また、細部の強調ツールとして他にも「シャープネス」があります。「シャープネス」は一定の範囲内(半径、radius)の中のピクセルを同じ色・明るさに「塗りつぶす」機能と理解していますが、正しいのだろうか。。。だから、半径が小さい場合や、ボケていて隣接するピクセル・まとまり同士で違いが大きくない部分には効果が薄い?う〜ん、まだまだ勉強が必要ですね汗
なお、ローカルコントラストとシャープネスの違いとして、ローカルコントラストのまとまりの中では同じ明るさ・色への統一は行わないということでよいのかな?
シャープネスは、その効果を強めると、一定の範囲内radiusのピクセルが同じように塗りつぶされるのを見ました。シャープネスはそのようにして別のピクセルの塊との境界を際立たせるものと理解しています。シャープネスについては『人物写真補正の教科書』が詳しいので適宜そちらもご参照ください。
ちなみに、ローカルコントラストとは別にマイクロコントラストという概念があります。英語のフォーラムにはなりますが、その違いはこちらが分かりやすく、具体的にはマイクロコントラストは隣り合うピクセル同士のコントラストので、ローカルコントラストはもう少し大きい単位でのコントラストを指すということです。
そうなると、
コントラスト > ローカルコントラスト > マイクロコントラスト
の順番で影響範囲が異なるという理解です。
ここからは検証していないのですが、
クラリティはローカルコントラストを操作し、
ストラクチャはマイクロコントラストに影響を及ぶすのではないかと推測されます。
以上、軽く書こうかなと思ったら、想定した以上に時間がかかり、長文になってしまいました汗
ここまでお読みいただきありがとうございました!