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こんにちは。
千葉県流山市にある、いちばんはじめの親子のコミュニケーションスクール「きいろいぼうし」の中村ともみです。

わたしがレッスンを通じて、子育て中のママを応援する理由、それには過去の経験が関係しています。


小さな子どもと女性(筆者)
レッスン中のひとこま


ヤングケアラーだった過去

わたしはいまでいうヤングケアラーでした。
10代の頃からはじまった家族の看病。20代で祖母を、30代で父と母親を相次いて看取りました。
いまでこそ社会問題として提起され、支援する体制を整えようという動きも出ていますが、当時はそんなことばすらなく、家族の看病をしている子どもは空気のような存在でした。

それぞれ若くして難病を患った父と母親の看病は同時並行してあり、ヤングケアラーでダブルケア、難病患者家族、若年生認知症患者家族と、幾重にも周囲との壁が築かれていくのを感じました。


孤独を経験する

孤独でした。
周囲は結婚、出産と明るいステージへ次々と進んでいく中で、わたしを待っているのは家族介護です。
おなじく介護中のひとがいたとしても、それはたいてい親世代で、得られるのは共感よりも同情でした。若いのにたいへんね、と。

学校や仕事が終わったあとに母親の家事を肩代わりして、身の回りの世話をする。
通院の介助をし、地域包括支援センターやケアマネージャー、病院のソーシャルワーカーとのやりとりをする。徘徊して保護された警察署へ迎えに行き、親戚や友人のとのお付き合いを絶やさないようにする。
夜、布団に入ると、昼間に蓋をしていた感情が一気に込み上げてきます。

親たちの最期を看取ることで、わたしの介護生活は終わりを告げました。
この経験の良い側面を挙げて次につなげるべきなのかもしれませんが、それをするにはまだ時間がかかりそうです。
心残りだけはない。それが唯一の救いです。

子育てとコロナが一緒にやってきた

看取りを終えたあと、縁あって結婚、出産をしました。
当然ながら、頼れる親きょうだいのいない子育てであり、しかも時代はコロナ禍に突入します。
産院の食堂の大型テレビが、緊急事態宣言という耳慣れない言葉を告げるのを、いまいち現実感覚が掴めないまま眺めていました。
頼みの綱だと思い、出産前から手配していた産後ヘルパーすらキャンセルされ、初めての子育ては、きっと介護生活とおなじように孤独なものになると心配していたのですが、杞憂に終わりました。

子育てと介護の違い

介護と異なり、子育てではわたしが孤独に陥らなかった理由。それは、共感してくれるひとがいたからに他なりません。
ヤングケアラーのときには考えられもしなった人たちが、子育てというおなじ悩みを抱えながら、ときに笑い、ときに泣きながら、気持ちを分かち合ってくれました。
同年代の子どもを持つひとはもちろん、かつて経験したひとも一緒になって共感し、励ましてくれました。

介護はだんだんできなくなることが多く、その速度や現れかたも個人差が大きいのに対して、子育ては、基本的にはできることが増えていく、よろこびが見つけやすいという明るい側面があります。

とはいえ、コロナ禍での育児。
夫はいわゆるエッセンシャル・ワーカーに属しているため、家にはほとんど帰りません。
ひとと会話する機会はほとんどありません、息子相手をのぞけば。
そう、まだ赤ちゃんであった息子は、わたしにとってたいせつな話し相手でした。

おしゃべり前の赤ちゃんと会話できると

息子と、わたしは一日中おしゃべりしていました。

お腹が空いたね。おっぱいにしようね。
おむつを変えたら、すっきりしたね。気持ちいいね。
お外を救急車が通ったね。サイレンの音がするね。
お花、きれいだね。いい香りがするね。
眠たいね、お昼寝しようね。

こうやって話しかけながら観察していると、息子はちゃんと反応をしてくれているのがわかります。
わたしの話を聞いているんだ、わかっているんだ、と思いました。

このときはまだファーストサインを本格的に学ぶ前でしたが、実は、ファーストサインそのものといえる出来事です。

たとえ、ママと赤ちゃん二人きりの時間が長かったとしても、赤ちゃんが話しの通じる相手であり、互いにコミュニケーションがとれると考えるのと、そうではないのとでは、ママが感じる孤独も大きく異なってきます。

レッスンで伝えたいこと

介護中には感じた孤独や絶望を、おなじように孤立した状況だったにも関わらず、子育てでは感じなかった理由。
それは、周囲からの共感が得られ、まだ赤ちゃんである息子とコミュニケーションができたからです。

子育ても、孤育てと呼ばれるほど追い詰められてしまうママがいます。
でも、周囲から共感が得られ、お子さまとコミュニケーションがとれたらば、たいへんな毎日であっても、たのしい面に目を向けていられるかもしれない。

そう願いを込めて、レッスンに来てくださるママたちのお話に耳を傾けると同時に、ファーストサインという親子のコミュニケーションの方法をお伝えしています。

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