大人になって算数のプリントを始めた
らくだメソッドという教材がある。
もともと少し他の子とは違う我が子が学校に行かなくなった時でも、学力が遅れていかないようにするために作られたプリントだ。
歴史も理科も国語も、間が抜けたとしてもいつでも学び直しができる。けれど、算数・数学だけは積み重ねなので、途中で挫折してしまうとその先もずっとわからないままだ。足し算がわからないのに、掛け算はわからないだろう。
一番最初は数字を書くところから始まるプリントだが、なにが凄いのかと言えば、教えないのだ。
小学生の最初のプリントの最初の問題はこんな感じだ。
1+1=?(?は実際には空白)
この凄さがわかるだろうか?
初めて算数をやる子どもの気持ちになって考えてほしい。
なにを当たり前のことを言っているのかと思ったら、まだ子どもの気持ちになれていない。
そもそも足し算とはなにか、どういうことなのかすら知らない段階で突然「1+1=?」と尋ねられるのだ。
道を歩いていたら不意にスワヒリ語で話しかけられるようなもので、意味不明だろう。
だけど、わからなくてもまったく問題はない。
「これの答えは2だ」と偉そうに教えてくる人はいないから。
自学自習のためのプリントである。そこには先生はいない。
その代わり、裏面に答えが書いてある。
わからなければ、裏面の答えを見て書けばいけばいいのだ。
そうやって、わからないなりにでも答えを書いていると、自分の中でやがて「足し算ってこういうものなんだ」という体験知ができあがる。
それまでは同じプリントは何枚、何百枚でもやり続ければいい。(聞くところによると実際に同じプリントを100枚以上やり続けた人がいるらしい。)
できたかいなかを判断するのは自分だ。
次のプリントにいくかいかないかを決めるのも全部自分。ただ、どこまで行けば自分ができたのかを知るのは難しい。だから、各プリントには目安時間が設定されている。そして、ミスが3つ以内であれば、理解相当であるとされている。
しかし、それもまた結局のところ目安でしかない。
決してルールではない。「しなければいけないこと」はどこにもないのだ。
どのプリントをやるのかも、問題を解くのも、丸つけするのも、記録表に書くのも全部自分でやる。
他の誰でもなく、自分のペースで学んでいくためのもの。それがらくだメソッドであると僕は思っている。
さて、ここまで書けばおぼろげながららくだメソッドの概要がわかってもらえたと思う。なぜらくだメソッドについて書いてきたのかと言えば、別に教材の宣伝をしたかったのではない。
本来、子どもが自学自習するために作られたこのらくだメソッド。
それを27歳の僕が始めたからだ。
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