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北斎の志遂げず逝きし皐月かな

久しぶりにペンを使って色を着けて見ました。でもついつい絵の具を使い過ぎてペンのラインが活かせていません。景色はコロナ前に行こうと計画していた長野県にある小布施の町です。この町の岩松寺の天井画は葛飾北斎が88才の時に描いたと言われる大作「八方睨みの龍」です。その他にも小布施の北斎館では北斎が描いた祭屋台の天井画を見ることが出来ます。その屋台の一つ上町かんまちの屋台には北斎が得意とする浪の絵「男浪」「女浪」が描かれていて、北斎の浪の絵の完結編とも言えるものです。私も特にこの絵が見たいと思って計画していました。世界的にも有名なあの「神奈川沖浪裏」を描いた時、北斎は既に72才でしたが、この屋台の浪の絵はそれから14年もたった86才の時の絵なんです。

北斎は89才で亡くなりましたが、その間に93回も引っ越したそうです。百回を目標にしていたと説もありますが、家が汚れると引っ越したのか追い出されたのか、とにかく絵を描くことしか興味がなかった人なのです。でも北斎が晩年に小布施に来たのは決して引っ越しの回数を増やす為ではなく、天保の飢饉とその後の天保の改革で浮世絵が贅沢として禁止されたことが背景にあるようです。祭り屋台や寺の天井画なら浮世絵と違ってご法度ではなかったのでしょうね。

北斎の遂げず逝きし皐月かな

北斎は嘉永二年(1849年)5月10日に亡くなりました。ペリーの黒船がやって来る4年前のことでした。彼は死の床にいても未だ自分の絵は完成していないと言っていたそうですが、彼が文明開化を目の当たりにしたらどんな絵が出来たのか想像するだけでもワクワクします。

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