青柚子やすだちにかぼすシークヮーサー
緑色の柑橘類にはかぼすとすだちと青柚子、小粒の青蜜柑もありますね。そうそう沖縄にはシークヮーサーもありました。でもみかんの一種なので皆、熟すと黄色やオレンジ色になります。ということは人は酸っぱさを求めてまだ青いうちに実を摘んで利用するわけですね。
すだちは絵の一番右側にあるゴルフボール大のものです。「酢の橘」「すたちばな」から「すだち」と呼ばれるようになりました。なんと上品な名前でしょう。その昔は絞って酢として利用されていたようですが、江戸時代には果実として食べられていた記録も残っています。現在はほぼ全量、正確には98%が徳島県産です。なんで徳島の人はこんなにすだちが好きなんでしょうね。すだちを輪切りにしてうどんに乗せたり、ご飯に乗せたり、ひょっとしたら顔にも乗せているかも知れません。でも、すだちは京料理にも欠かせないものです。いや普通の料理にだって欠かせません。さんまを焼いて大根おろしにすだちと醤油、たまりませんね。
すだちと似ているけどだいぶ大きいのが絵の一番左側の「かぼす」です。かぼすは「徳島のすだち」に対抗するかのように9割以上が大分県で生産されています。それも殆どが臼杵市で江戸時代に京都の宗源という医者がかぼすの苗木を臼杵に持ち込んだことから始まったと言われています。名前の由来は今だにはっきりしていないようで「香母酢」という漢字は当て字だそうです。香りの母なんていいネーミングですね。平安時代に橙の一種に「かぶち」「かぶす」があると言う記録が残っているそうなので当時から「かぼす」に近い言葉では呼ばれていたようですね。
大分県の隣、宮崎県には「へべす」という「すだち」より一回り大きい香酸柑橘があるそうです。江戸時代末期に日向の長宗我部平兵衛さんが自生しているのを発見したので「平兵衛酢」「へべす」と呼ばれています。長期保存がきかず、まだまだローカル産品ですが酸味と甘みのバランスがとてもいい名品だそうで今後、全国に届けられる日が来るかも知れません。
そして真ん中の絵が青柚子です。柚子は全国で作られていますが、そのうち5割は高知県で作られ、愛媛、徳島でも1割作られているので四国で大半が作られていることになります。何故か香川県だけは余り作られていないようです。そう言えば最近関西のテレビで高知の柚子の宣伝をよくやっていますね。柚子は「柚の酢」「ゆのす」から来たそうで、もともとは柚子の木そのものを柚と呼んでいたのです。京都では昔「ジャガタラ柚」と呼ばれる果実があってこれは「ザボン」のことだと言われています。「ザンボア」「ザンボ」ともいいますが、ポルトガル人がセイロン島から持ち込んだものでセイロンでは「ザンボル」と呼んでいたものをポルトガル人が聞き間違えたらしいです。でもザボンは九州で文旦と呼ばれていて最近はこちらの方が有名です。この文旦の由来は中国の船が鹿児島に漂着した際、船長の謝文旦が救助のお礼にザボンをくれたのが始まりだそうです。話が柚子から文旦へと飛んでしまいましたが、この青柚子は柚子胡椒の原料の一つで柚子胡椒が緑色なのは青唐辛子に青柚子を使うからなんですね。
朱欒の木風に揺るがず仁王立ち
近所にあるザボンの木は今見事な実を付けています。一つ一つが重たそうで少しばかりの風などではザボンの木はびくともしません。
「湯豆腐はやはりポン酢に柚子胡椒」これでは俳句にはなりません。
ここは京都の固有名詞にたよってみましょう。