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はらわたの透かして見えしさよりかな

春の季語になっている「さより」です。私は恥ずかしながら29才でこの魚を釣り上げるまで、さよりのことを知りませんでした。シドニーの突堤で鯵釣りをしていた時のことです。缶ビールを飲みながら一休みしていると地面に置いておいたサビキの竿が急に動き出しました。慌てて竿を掴むとなんと綺麗な魚がサビキの針に引っかかっていました。サビキの下の方の針が海面に届いていたようでさよりは見事に餌を咥えて泳いでいました。鯵より細くて長い、それよりも驚いたのは嘴が鉛筆のように長く突き出しているのです。針を外そうとするとあれま!その鉛筆は下顎だけで上顎は短く顔の近くにあるのです。こんな魚を見たことのなかった私はびっくりでした。

のちにこの魚がさよりだったことや寿司ネタにもなっていることを知りました。でも70年代当時は若造が寿司屋でさよりを握ってなんて言う時代ではありませんでした。最近はさよりも高級魚扱いのようで庶民的な回転寿司ではほとんど見かけませんが、以前はコハダと共に私の好きな寿司ネタでした。高級魚と言えばフランス料理でしかお目にかからないマトウダイや高級料亭の刺し身にしか出ないようなシマアジをシドニーで釣ったことがありました。勿論いつもそんな魚が捕れる訳ではなく普段は鯵、鯖、鯛、ウマヅラハギ、カサゴみたいな魚ばかりでした。

たまさかに釣りし妖精さよりなり

人生でたった1度だけの経験でしたが、妖精のような「さより」が釣れたのは正に想定外の出来事でした。見た目が綺麗なので海の妖精と言われますが、実は「腹黒い人」の代名詞にもなっているそうです。見た目は綺麗なのに腹を開けると中は真っ黒なんですね。

はらわたの透かして見えしさよりかな

さよりは身が透けて見えるくらいに綺麗です。でも綺麗がゆえに腹黒いと言われるとはなんとも皮肉ですね。いや本当に腹黒さが透かして見える人もいるかも知れませんね。

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