教会を見下ろす丘や祈り虫
もうすぐ冬と言うのに今になって何故カマキリを書いたのでしょう?
実は季語を眺めていたらカマキリは別名、祈り虫とか拝み虫だと書いてありました。イメージが違うなと思ってさらに調べて見ると西洋では元々カマキリのイメージは全然悪くないというか真逆のイメージなんですね。Mantisという英語名も僧侶とか預言者と言う意味です。手を合わせた姿が祈りを上げる姿に似ているからですね。イスラムの世界でもカマキリはメッカの方向を向いて祈っていると思われているそうです。そしてアフリカではカーングと言う創造主がカマキリの姿をしているそうです。
ではなんで日本だけカマキリは怖いというか獰猛なイメージなんでしょうか?これには訳があって昆虫学者のファーブルがメスのカマキリは交尾したあとオスを食べてしまうと昆虫記に書いてあることが影響しているのです。「そんなこと当たり前でしょ」と言う人も多いと思います。真面目な日本人は素直にこれを信じて来たし「五月みどりのカマキリ婦人の告白」なんて映画まで出来て「メスのカマキリは怖い」と言うイメージが完全に定着しました。でもメスが交尾のあとオスを食べると言うのはどうも正しくないらしいのです。
小さな箱の中にオスメスを入れておけば交尾のあとにメスがオスを食べることは事実のようですが、自然界ではそうでもないのです。ビニールハウスにオスメスそれぞれ20匹を放して実験すると殺されたオスは1匹だけでした。確かにオスよりメスの方が強そうですが、自然界ではメスだけでなく、オスも何度も交尾しているので命がけ一回限りの交尾という訳ではないのです。小さなガラス箱での実験が全て正しいとは限らないし、ストレスという別の要素で共食いをすることはネズミの実験で分かっています。
ただ祇園祭の蟷螂山でも四条隆資の勇者ぶりを大きな鎌を持つカマキリで表しているので、日本ではカマキリはメスには限らず強いものを表していたことは事実のようです。そこにファーブルさんのメスがオスを食べるという説が重なって「メスは怖い」と面白おかしく言うようになったのではないでしょうか。
教会を見下ろす丘や祈り虫
スペインにある小さな教会をイメージして詠いました。祈り虫が伝わるかは分かりませんが、景色を教会にしたのでカマキリかどうかは別にして祈っている姿は想像出来るかも。
蟷螂とにらめっこするはぐれ猫
説明はいらない気もしますが、動物と昆虫の睨み合いには小さな緊張感が伝わって来ます。
畦道の蟷螂枯るや大野城
「蟷螂枯る」とは冬が近づき植物も枯れてくると保護色のカマキリもまた枯葉色になって行くという初冬の季語です。大野城である必要はないのですが、なんとなく伊賀や越前の大野城が好きなので。
蟷螂や馬耳東風の高校生
反抗期の高校生は何も言ってもシカトです。しかしその大きな鎌を使うかどうかは別の話ですね。