新しい星に足をつける日

 地球を壊せる能力を持っている――そう自覚したとき、胸の奥には奇妙な諦念と静かな恐怖が同居した。この力を使えば、自分が生まれ育った星を一瞬で破壊できる。その事実を理解すると同時に、もし地球がなくなったらいったいどこに足をつければいいのか、どこに生きていればいいのか分からなくなる。むしろ“どこにも”生きる場所はないのだと思い知らされる。そんな漠然とした不安とともに日々を過ごしていた。

 ある夜、いつものように目を閉じた瞬間、光が一気に爆発するような夢を見た。夢の中の自分は、とうとうその力を使ってしまっていたのだ。思わず両手で耳を塞ぎたくなるような轟音とともに地面が砕け、海は泡立ちながら消え、街が跡形もなく吹き飛ばされる。信じたくない光景が目の前に広がっているのに、自分だけがなぜか、地球の中心にぽつんと取り残される。

 最初は恐怖や罪悪感よりも、「もうこの星には何も残らないのか」という虚無が胸を満たした。呼吸できているのが不思議なほど、廃墟どころか何もない、ただの闇。そこから上を見上げると、ほんのわずかに光が見える。試しに足を蹴ってみると、ふわりと体が浮き始める。そのまま上へ上へと浮いていくと、粉々になった大地や破片がざらざらと宇宙空間に散乱しているのが見えた。地球を脱したところで、重力の感覚もない。押し返す床もない。ただただ永遠に漂い続けるしかない。

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