「ペット・サウンズ」ジム・フジーリ 村上春樹 訳
アメリカの作家ジム・フジーリ(Jim Fusilli)がザ・ビーチボーイズの名盤「ペット・サウンズ」を題材にレコードの制作過程等をドキュメントのように織り交ぜ、自身と「ペット・サウンズ」の関わりをエッセイ風にまとめた本を読みました。
訳がビーチボーイズ・フリークとしても知られる村上春樹。
大変面白く読みました。
特に前半、筆者が経験したこのエピソード
「最近のこと(本が2011年に刊行されているのでその頃と思われます)だが、僕はマンハッタンの48丁目にあるサム・アッシュ楽器店に行って、『ペット・サウンズ』の楽譜を置いているかと尋ねてみた。カウンターにいたおたくっぽい青年は僕が何の話をしているのか全然理解できなかった。年若いビーチ・ボーイズ・ファンを目にするのは稀だ」
これには、僕も似た経験があって親近感を覚えてしまった。今から5年ほど前に、「英会話の練習の場」を探していたところ、知人に教えてもらいアメリカからの留学生と交流できる集まりに行った。そこに、カリフォルニアから数ヶ月間日本に滞在している中学生の男の子5人組が来ていた。
その子たちに、「カリフォルニアには来たことはある?」と聞かれたので
「カリフォルニアは行ったことないけど、カリフォルニアで生まれた音楽が好きだよ。ビーチボーイズとか!」
と、答えたら全員から
「えー!!ありえない」
という反応をされ、
「ブルーノ・マーズの方がクールだよ」とも言われた。(ちなみに、ブルーノ・マーズはカリフォルニア出身ではないことをあとで調べてひとりで「カリフォルニアつながりではないんかい」とツッコんだ)
カリフォルニアにおいても、ビーチ・ボーイズが今も若い子に大人気ってわけではないのだな…と、まぁ考えてみれば当然とも言える反応を経験した。
また、訳者の村上春樹も「訳者あとがき」において、自身が「ペット・サウンズ」に出会った経緯やこのアルバムの素晴らしさを語っている。
自分が褒められた訳ではないのに、自分が好きな「ペット・サウンズ」が村上春樹に褒められるのが何故だか、嬉しい。ファン心理って不思議。