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大好きな柴田聡子さんについて語りたい(17)止揚(アウフヘーベン)し、進化し続ける柴田さんの作風


こんにちは、桐山もげるです。
昨晩の「柴田聡子のひとりぼっち'22」の余韻に浸りつつも、現在は本日京都磔磔で開催される「柴田さんと崎山くん」にオーディエンスとして参加するため新幹線で京都に移動中です。
移動中の時間を有効に使うためにも、先ほど書こうと思い立った記事をひとつ完成させます。

「ひとりぼっち'22」の新曲にみる柴田聡子さんの作品の止揚(アウフヘーベン)

昨日の「柴田聡子のひとりぼっち'22」は新曲を10曲も披露されるというとんでもない構成でした。
そのフレッシュな感想は下記リンクのnote記事、Twitterのスペースの録音で紹介しています。

https://twitter.com/kiriyamaragain/status/1591741045506969600?s=46&t=H6QvzGjtJMMJU_WD0EkAbA

今回披露されたの新曲たちは僕はまだ1回しか聴けていません。
そのため、この記事はあとで読み返した時には「いきすぎた提言」となるかもしれないという思いもあります。

そんなことは恐れず、書きます。
それは、柴田さん作品作りは過去にとられていた作風からつねに「脱却」して、高みに上り続けているのはないかということです。
ヘーゲルの弁証法の表現を借りるなら、
「過去の作品を止揚(アウフヘーベン)しつづけている」と言えます。

昨日のライヴを聴いてそう思った理由があります。
それは「新曲の印象がセンチメンタル(感傷的)に僕の心に響いた」ことです
(細かな感想はやはり1度聴いたのみのため、これからとなりそうですが『かやの外』『うつむき』という曲はその場でとったメモでも「切ない」と記録していました)。

柴田さんは過去に、ご自身の作風について"「センチメンタル」な作品はなるべく作らないように警戒している(センチメンタル警戒派である)"
と話されています。
ラジオ番組風のYouTube配信「柴田聡子のシャムゴッド・トーク・ドリル(ゴツドリ)」vol.13(ゲスト:Dub Master Xさん)の回です。下記リンクにその部分を頭出ししてあります。

Dubさんが「おセンチなものが好き」という趣旨のことを話された後、柴田さんは「センチメンタルに傾倒しないように気をつけている」という旨を話されています。

この言葉を尊重すれば「切なさ」を感じた新曲たちは、さながら柴田さんが発していた「センチメンタル・アラート」が解除されて作られた(過去の発言を否定して作られた)ようにも受け取れます。

しかし、これは単なる否定ではなく「作品を進化させた結果、否定や矛盾に見えてしまった」と僕は考えます。
螺旋階段に例えるなら、
階段を数段上ると真横から見れば上昇しているのに、真上から見ると反対側に移動したようにみえます。
さらに例えるなら、色について「白か赤かに分ける」という二項対立的な前提では「ピンク」という色は生み出されませんが、「ピンク」と言う色は間違いなくこの世に存在します。矛盾しているように見えるのは「前提の捉え方が狭いから」とも言えます。
小沢健二さんの作品『フクロウの声が聞こえる』においても、
"混沌と秩序が一緒にある世界"
"孤高と協働が一緒にある世界"
"ベーコンといちごジャムが一緒にある世界"
という、矛盾するもの同士を両立させることでより世界が高みに進むようなイメージで歌詞が書かれています。そんなこともふと、思い出しました。

柴田さんの作品はこれまでも止揚している

柴田さんの作品について止揚を感じたのは今回が初めてではありません。

例えば、

「歌詞の中の"私"を消したい(私撲滅宣言)」という意味づけのはずの曲の『ニューポニーテール』の歌詞の中に"わたし、わたし!"とわたしを連呼されている。

「歌詞の主人公は自分自身ではない。歌っている内容は経験していないこと」と話されたことがある一方で、『MSG』『旅行』『24秒』はもとになったというご自身の経験を詳細にインタビューで答えられている。

これらは、言葉上は矛盾するように捉えられる事例です。しかし、矛盾とは言葉の表面にあらわれるものであり、奥にある芯が進化すればどうしてもあらわれてしまうことと思います。

柴田さんと同時代を生き、作品の進化に立ち会うことができていることは大変なよろこびです。
柴田さん、素晴らしい作品をいつもありがとうございます。

追記メモ:新曲のなかで聴き取った気になるフレーズ

本記事の本論からは外れるのですが、11月13日に行われた柴田聡子さんの「ひとりぼっち'22」で披露された新曲のなかで僕が気になったフレーズを紹介します。聴きながら「これは特徴的」と思ったフレーズをメモしていました。

『シナジー』:"葉っぱをふみふみ"
『Your Favorite Things』:"ひとみとひとみの間のトンネル"
『どこへも行かないで』:"全然違うけどよく似ている"
『よかったよねLOVE』:"完全犯罪""石で口をすすぐ"
『写真の中の人』:"子犬も走ってくる"

※細かなところは違う可能性は十分あります。

いずれ、リリースされたあとにもう一度聴くことが楽しみです。
あのライヴ会場の空間にいられたことを、夢の中の出来事のように思い出しますね……。あんなに素晴らしいライヴって他にないです。

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