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東海まつり花火大会を支えるヒトの想いをキリトル。

2023年8月11日、今年も東海まつり花火大会が盛大に開催されました。みなさんは、この一大イベントが有志の集う「東海まつり実行委員会」により運営されていることをご存じでしょうか。また、毎年、東海まつりの花火は日本を代表する花火師集団、野村花火工業(株)のみなさんが準備してくださっています。
今回、東海村スマホクリエイターズLab.が花火大会を支えるヒトの想いを取材しました。

この夏は連日猛暑が続きました。
花火大会当日も炎天下の中、阿漕ヶ浦公園では花火の準備が進みます。夜になると数千人以上が訪れることになる会場には、歩道の安全を確保するために大量のカラーコーンや投光器が設置され、観覧席や臨時テントが次々と立ち並び、いつもの公園が花火会場へと姿を変えていきます。
準備の合間を縫って、東海まつり実行委員会 会長 橋本秀也(はしもと・ひでや)さん、花火部会長 川﨑悟(かわさき・さとし)さん、野村花火工業株式会社 代表取締役 野村陽一(のむら・よういち)さんが東海まつり花火大会に込めた想いをお話ししてくれました。

東海まつりが記憶に残り、継承されることがみんなの願い(橋本会長インタビュー)

東海まつり実行委員会 橋本秀也会長

東海まつり実行委員は全体で62名。JR常磐線東海駅東口で開催するイベント部会と、阿漕ヶ浦公園で開催する花火部会、そしてまつり運営を円滑に行うための業務を担う総務部会で構成されています。この3つの部会を統括するのが、橋本会長です。インタビューを通じて、誠実なお人柄と、みんなにお祭りを楽しんでもらいたいという温かな気持ちが伝わってきました。

花火大会の準備は例年、5月頃から始まります。昨年(令和4年)はコロナ禍により、周辺市町村では開催を見送る中での東海まつり花火大会の開催だったので、想定を大きく上回るお客さんが来場したそうです。「会場内で携帯電話がつながらなくなるほど、多くの人が会場に足を運んでくれました」と、当時の状況を教えてくれました。

このため、昨年は来場者の誘導や路上駐車への対応が大変だったそうです。この経験と反省を踏まえて、今年の花火大会に向けては、さらなる万全の体制を整えたこともあり、大きな事故やトラブルもなく、無事に花火大会を終えることができました。
また、花火大会を開催するためには地域からの協賛が不可欠です。
「コロナ禍の影響や物価が高騰する世の中にも関わらず、多くの事業所・店舗・個人の方からご協賛をいただけたことは大変ありがたいことでした」
と感謝の気持ちを述べられました。300以上の団体・個人が名を連ねる協賛一覧を拝見すると、多くの方々のご協力により花火大会が成り立っていることが実感できます。

花火大会の準備は数か月に渡り、膨大な事務量と多くの関係者・スタッフとの打合せに追われます。橋本会長に、それでも実行委員を続ける原動力を伺いました。
「花火の準備はとても大変ですが、花火大会当日にこれだけの人が集まって、みんなが笑顔でいるのを見ると、やって良かったなと感じます。誰が準備しているかを知らなくても、『お祭り楽しかったな』という思い出が残ります。たった一日のことですが、誰もが心のどこかに持っているお祭りの思い出を今の子どもたちにも作ってあげたいです。この想いで実行委員はひとつになっています」
と、語ってくださいました。

準備を重ねて迎えた本番、花火が打ち上がった瞬間、今年も花火大会を無事開催できたこと実感し、ほっと胸をなでおろすそうです。「花火師さんとお客さんをつなげることが私たちの役割」と言い切る橋本会長からは、裏方としてお祭りを支える誇りを感じました。

思い出に残る夏の花火大会 その場を作るのが私たちの役目(川﨑部会長インタビュー)

東海まつり実行委員会 花火部会 川﨑悟部会長

花火部会を束ねるのは東海まつり花火部会、川﨑部会長です。普段は建設会社の社長として現場を指揮する川﨑部会長からは、仲間への信頼とお祭りに対する熱い想いが伝わってきました。

花火部会は総勢19名。企画担当、実働部隊など組織化されています。また、準備で特殊車両を使うときは、普段から扱いに慣れている建設業のメンバーが担当するなど、一人ひとりの得意分野を生かしたチームづくりをしているそうです。細かなタイムスケジュールと個々の役割分担が記された資料をめくりながら、お話しされる川﨑部会長は「頼もしい仲間達に支えられています」と、誇らしげに微笑んでいました。

川﨑部会長は東海まつりの準備に携わって約23年のベテランです。23年の間にご結婚や、お子さんの誕生がありましたが、今まで一度も、東海村の花火をご家族一緒に見たことがないそうです。
お話を聞いて、こんなに素敵な花火を届けてくれるみなさんにこそ、大切なご家族と花火を見てほしいと思わずにはいられませんでした。

家族や自分の時間を削ってでも、実行委員を続けるモチベーションはどこからくるのでしょうか。
「実行委員を続けられるのは、たった一日の花火大会が、三世代の一生の思い出になるからです。おばあちゃんが浴衣を着つけて、お父さんやお母さんに阿漕ヶ浦公園まで送ってもらい、友だちや好きな人と花火を見上げる。お祭りの思い出は一生ものです。子どもたちの笑顔を見ると、本当にやって良かったと思えますね」
夕暮れの会場には、浴衣姿で走り回る子どもたちの姿が―。橋本会長の想いとも共通するお祭りの日の思い出が、“一生もの”として多くの子どもたちの心に刻まれたと思います。

素晴らしいチームにより作り上げられている東海まつりですが、今後へ向けた課題もあります。
「東海まつりを継続するためにも、実行委員会を次の世代へ継承していかなければいけないと感じています。今のメンバーは40~50歳が中心です。まだまだ元気ですが、いつまで体力が持つか分からないです(笑)。新しい仲間に加わってほしいですね。多くの方と、花火が打ち上がった瞬間に、それまでの苦労が全て報われる感動体験を共有したいです。また、花火を間近で見ることができる協賛エリアをフルに活用する新たな方策など、今後へ向けて考えることはたくさんあります」
お祭りは夏の風物詩であり、毎年あるものと思いがちですが、この光景を継続するためには、様々な人の尽力や想いがないと実現しないことを改めて実感します。川﨑部会長からは、祭りの未来を見据えた真剣な想いが伝わりました。

※東海まつりの実行委員は随時募集中です。興味がある方は東海まつり実行委員会事務局(東海村観光協会)までお問い合わせください。

花火の魅力は「一瞬の美」消えてしまうから美しい(野村代表インタビュー)

野村花火工業株式会社 野村陽一代表取締役

(花火師/野村陽一氏プロフィール)
野村花火工業株式会社(水戸市)代表取締役 母方の実家が舟石川。
平成3年「⼟浦全国花⽕競技⼤会」10 号⽟の部で優勝し、以降、全国各地の花火大会で優勝を重ね、内閣総理大臣賞を20回以上受賞するなど、日本を代表する花火師。

花火大会当日の阿漕ケ浦公園は景色が一変します。ホッケーやサッカーが行われる人工芝のグラウンドには、ブルーシートが一面に敷かれ、普段多くの人が行き交う遊歩道にはところ狭しと花火の筒や打ち上げ装置が設置されます。

花火大会当日の阿漕ヶ浦公園

東海村の花火を打ち上げるのは、野村花火工業(株)のみなさんです。お母さまのご実家が舟石川というご縁もあり、子どもの頃から東海村を訪れていたという野村代表から、花火の魅力とこだわりについてお話を伺いました。

打ち上げ花火を作るのには最低でも数週間、大きいものだと数か月かかります。とても時間がかかるのですが、手作りなので、毎回開き方が違うそうです。
「打ち上げるまで結果がわからないから面白いんです。材料や配合比率、仕込み方など、常に上を目指して研究しています。自分が思ったとおりに花火が開くと嬉しいですね」
熟練の職人さんでも毎回、試行錯誤を繰り返していることがわかります。

東海まつり花火大会は、打ち上げ場所と会場が近くて迫力があるところはもちろん、野村花火工業(株)が得意とする花火と音楽の演出も見どころの一つです。
曲調に合わせて次々と打ち上がる花火により、今年の阿漕ケ浦公園も大変盛り上がりました。来年の花火大会も、ぜひ、花火と音楽のコラボレーションにも注目して楽しみたいですね。

最後に、野村代表に花火の魅力についてお伺いしました。
「花火の魅力は『一瞬の美』です。一瞬で花開き、消えてしまうからこそ、みんな夢中で見上げてしまうのではないでしょうか。私も、未だに花火の音が聞こえるとつい見上げてしまいます。強烈な光と音の芸術を、頭空っぽにして見上げる。日頃の疲れを忘れて、心の洗濯になったらいいなと思っています」
花火を見上げるときは何も考えず、光と音の美しさに心を奪われる。これが花火の最高の楽しみ方ですね。

今回の取材を通して、東海まつりは、実行委員や花火師のみなさんはもちろん、当日や翌日ごみ拾いのボランティアの方々などの想いと協力により作り上げられていることを実感しました。単に、花火大会を開催することが目的ではなく、そこに込められた想いがあるからこそ、大勢の人が惹きつけられ、思い出に残るのだと思います。
今年も最高の花火大会をありがとうございました!


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