ザンビ 〜東京浸食〜①
第1話、崩れ行く日常。
ある日の夕暮れ。
一人の少年が学校からの帰り道を歩いていた。
少年「今日も疲れたなぁ〜」
彼は賀喜〇〇。
都内の進学校に通う高校二年生である。
〇〇「全く、あの先生課題出し過ぎだろ。」
そんな愚痴を吐きながら歩いていると、〇〇は突然、変な悪寒に襲われた。
〇〇「なんだ?今の寒気。」
〇〇はそう言いながら変な寒気の原因を考えていると、前方から一人の少女がやって来た。
その少女は〇〇の通う高校の女子の制服を着ていた。
〇〇「あれは一ノ瀬?でも様子がおかしい…」
その少女は〇〇の一つ下の後輩、一ノ瀬美空だった。
しかし、彼女の顔は死人の様に色白く、その歩き方もまるで操り人形の様におかしかった。
さらにその顔には、頬から目のあたりにかけて、血管の様なもの浮かび上がっており、瞳は紅く鋭い眼光を放っている。
〇〇「お、おい嘘だろ…」
〇〇はまるで信じられない様な表情していたが、〇〇はそれがなんだか知っていた。
〇〇「なんでここに残美がいるんだ!!」
それは〇〇が小学校卒業まで住んでいたある村の伝承で聞かされていた存在、ザンビというものだった。
美空「キシャアアアアアア!!!!!」
ザンビとなった美空は〇〇を見つけると、突然飛びかかって来た。
〇〇「チッ!やるしかないかッ!」
〇〇はそう言うと、人を象った形代の様なもの美空に投げ付け、何やら呪文を唱えた。
〇〇「呪詛転縛、急急如律令!!」
すると、美空は動き止め、その身体から邪気のようなものが浮かび上がって、形代に吸い込まれた。
〇〇「呪詛浄炎、急急如律令!!」
さらに〇〇が呪文を唱えると、その形代は燃え上がり、消滅した。
そしてザンビとなっていた美空は人間の姿を取り戻し、その場に倒れた。
〇〇「一ノ瀬!!」
すぐさま、〇〇は美空の元に駆け寄り安否を確認する。
〇〇「ふぅ、良かった。気を失ってるだけか…」
美空の生存を確認すると、〇〇は手鏡を取り出し、彼女の顔を写す。
〇〇「よし、歪んでない。完全に戻ってるな。」
〇〇は美空が完全に人間に戻っている事を確認すると、彼女を抱きかかえてそのまま自宅へと帰った。
〇〇「よし、とりあえずベットにでも寝かせるか…」
家に到着した〇〇はまず自分のベットの部屋に美空を寝かせた。
それから数分後、美空は目を覚ました。
美空「あ…れ…?ここは?」
〇〇「お、目を覚ましたか。」
美空「賀喜先輩!?」
〇〇「ここはオレの家だ。一ノ瀬、今までの事を覚えてるか?」
美空「た…確か、人のような化け物に襲われて…それで…それからの記憶がありません…」
美空は身体を震わせながら、そう答える。
〇〇「そうか。」
〇〇はそう言って、美空が先程までその化け物、残美になっていた事を伝える。
美空「残美…ですか?」
〇〇「ああ、一ノ瀬を襲って来たヤツも残美だ。」
美空「そうなんですか?」
〇〇「ああ、残美はそうやって人に呪いをかけて仲間を増やして行く。」
美空「ずいぶんと詳しいんですね。」
〇〇「まあ、その理由は明日話すよ。一ノ瀬は残美から元に戻って間もない。今日の所はここで休んだ方がいい。」
美空「分かりました。そういえば、私、なんで元に戻れたんですか?」
〇〇「ああ、話せば長くなるんだが…」
そこで〇〇は自分の事について、美空に出来るだけ分かりやすく説明した。
美空「陰陽師ってあの安倍晴明とかで有名な陰陽師ですか!?」
〇〇「ああ、そうだ。その陰陽師の力を使って、一ノ瀬を元に戻したんだ。」
美空「先輩って、やっぱりすごい方だったんですね。」
〇〇「別にそんな事ないよ。さあ、今日はもう寝とけ。オレはソファで寝るから、一ノ瀬はオレの部屋のベットで寝ていいぞ。」
美空「分かりました、では、お言葉に甘えます。おやすみなさい。」
〇〇「ああ、おやすみ。」
そうしてその日は、二人はそれぞれ眠りについたのだった。
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