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ザンビ 〜GENESIS OF MESSIAH〜②

第2話、二人の少女。

物資を手に入れた日の翌日の朝、剣斗はその中にあった食料や生活用品を生還者達に分け与えていた。

剣斗「こちらが今日の一日分の食料です。どうぞ。」

男性「すまない、ありがとう。」

拠点である帝都大学には、これまで剣斗が助けて来た人々が生活している。

もちろんこういったコミュニティは他にいくつもあるだろう。

しかし、トラブル回避のためになるべくの接触は避けて来ていた。

だが、帝都大学内の施設もいずれ満員になってしまう。

そろそろ第二の拠点を作ろうかと考えていた。

剣斗「さて、そろそろ行くかな。」

今日は、第二の拠点候補探しと夜に周辺の神人を一掃する予定になっている。

ちなみに今の拠点は、剣斗の結界魔法によって守られている為、拠点の住人以外の人間はもちろん神人さえ自由に出入り出来なくなっている。

剣斗「それじゃ行ってきます!」

生還者達「行ってらっしゃい!」

剣斗は生還者達に挨拶をして、拠点から出発した。

剣斗は拠点を出発すると、しばらく荒れた都会の街の中を颯爽と走り抜けて行く。

すると、二体の神人が目線の先に見えて来た。

剣斗(あれは!!)

剣斗は二体の神人が着ている衣服に目が行った。

剣斗(フリージア学園の制服だ!)

二体の神人の少女が着ている服…

それはフリージア学園という女子高校の生徒が着ている制服だった。

剣斗(ということはあの二人はフリージア学園の生徒なのか。助ければなにかの情報が得られるかも。)

そう思った剣斗は、二体の神人もとい二人の少女を助ける事にした。

今日の予定は第二の拠点候補探しではあったが、フリージア学園の生徒を助ければ、何かしら情報が得られる事に越したことはない。

剣斗「よし、やるか!」

剣斗はそう意気込んで、神人の元に走り出し、セフィロトを発動させる。

剣斗「第一のセフィラ!エヘイエー発動!!そして顕現せよ、守護天使【メタトロン】!!」

その瞬間、二体の神人もそれに気付いたのか、剣斗に襲いかかって来た。

神人「グワァァァァァァ」

だが、天から神々しい天使が現れ、聖なる光を放つ。

その光を直に受けた二体の神人は、動き止めてそのまま人間の姿を取り戻した。

メタトロン「これでいいか?」

剣斗「ああ、助かったよ。」

メタトロンは人間の姿を取り戻した二人を見ると、その場から消えた。

?「も……元に…戻った?」

?「助かった……の?」

神人から元に戻った二人の少女は困惑した様子で、辺りを見回す。

剣斗(どうやら元に戻ったみたいだな…)

それから二人は互いに目を合わせると、驚いた表情をする。

?「杏奈?」

?「ま、摩耶?」

杏奈「摩耶ッ!!!」

摩耶「杏奈ッ!!!」

二人は互いに名前を呼び合うと、抱き締め合い、泣き出してしまった。

剣斗(参ったな…)

剣斗は二人の間に入るのが、気まずかったのだが、致し方無く話を聞くことにした。

剣斗「ちょっといいか?」

杏奈「グスッ…あ、はい。すいません…」

摩耶「あ…あの、あなたは…?」

剣斗「オレは篠崎剣斗。キリスト教、ローマ・カトリック教会の悪魔祓い師をしている。」

剣斗はそうして自分がこの東京に来る事になった経緯と今の東京の状況を二人に説明した。

摩耶「そんな、東京が壊滅状態なんて…」

杏奈「東京の外に出られないん…ですか?」

剣斗「ああ、無理に出ようとすれば、壁の上に設置されている自動機銃に銃撃される。」

杏奈「そ、そんな…!?」

摩耶「銃撃!?」

剣斗「ああ、だから壁には絶対近づくなよ?」

摩耶「分かりました。」

杏奈「も、もちろんです…」

剣斗「そういえば、二人の名前を聞いてなかったな。」

摩耶「あ、すいません、私の名前は鳴沢摩耶です。」

杏奈「一ノ瀬杏奈です…あの…元に戻していただき、ありがとうございます…」

剣斗「よろしくな。二人とも年は近いみたいだし、タメ口でいいよ。」

摩耶「わかった。そうさせてもらうよ。」

杏奈「私はまだこのままで…」

剣斗「わかった。」

剣斗はそこで、二人に気になっていた事を質問をする。

剣斗「突然で悪いが、聞きたい事があってな。聞いてもいいか?」

摩耶「はい、大丈夫です。」

剣斗「二人はフリージア学園の生徒、だな?」

剣斗はなにかの情報を得られると期待して、そう訊いた。

だが、二人から返ってきた答えは意外なものだった。

杏奈「い、いえ。私達はフリージア学園の生徒ではない…です。」

剣斗「え、違うのか?」

杏奈「は、はい、すいません。」

杏奈は剣斗が怖いのか、怯えながら謝った。

剣斗「い、いや責めてる訳じゃないよ。」

摩耶「すいません、この子。1度ザンビに襲われそうになって、そのトラウマでこうなってしまってるんです。」

剣斗「そ、そうだったのか。なら、早くここを離れよう。また神人が寄ってきている。」

杏奈「は、はい!」

剣斗は神人の気配を察知し、二人を連れてその場を離れた。

しかし、その途中で神人と残美の群れに見つかってしまう。

神人達「ガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

剣斗「クソ!見つかった!」

摩耶「ッ!杏奈!私から離れないで!」

杏奈「う、うん!」

摩耶と杏奈は恐怖に駆られながら、互いの手を繋ぐ。

剣斗「聖なる光よ来たれ!それは我らを護りし純白の壁…【エンシェントアーク・ブレイブ】!!」

剣斗がそう唱えると、白く優しく暖かい光が結界となって剣斗、そして摩耶と杏奈を包み込む。

摩耶「これは…」

杏奈「綺麗…」

剣斗「結界魔法だよ。」

摩耶「結界魔法?」

杏奈「なんでしょうか?それ。」

剣斗「自分や他の人の身を守ってくれる魔法だ。」

摩耶「君ってそんな事も出来るんだ。でも、なら安心だね。」

杏奈「ありがとうございます。」

剣斗「さてと、集まって来ている神人達を元に戻さないと。二人はその結界の中にいて。」

剣斗はそう言って、神人の群れの前に勢い良く飛び出す。

そして、セフィロトを発動させた。

剣斗「第二のセフィラ、ヨッド発動!!顕現せよ、守護天使【ラジエル】!!」

剣斗が詠唱し、天から分厚い本を持った一人の天使が舞い降りて来た。

ラジエル『死にながらに生きる者たちよ。本来あるべき姿へと戻れ!』

ラジエルの持つ本から光が迸り、神人や残美達を包み込んだ。

そうなると、神人と残美は瞬く間に、人間の姿を取り戻して行った。

摩耶「すごい…奇跡みたい…」

杏奈「そうだね…」

それから剣斗達は、人間に戻った人達に事情を説明し、摩耶と杏奈、そして助けた生還者達と共に拠点へと戻るのだった。

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