カードファイト!ヴァンガードG!! 未来への坂道⑥
乃木坂学園行きのバスに揺られること、20分後、そのバスは乃木坂学園前のバス停に到着した。
剣斗はそのバスを降り、乃木坂学園の校門を通り抜け、まず最初に職員室に向かった。
校長室の場所がまだ分からない為、職員室で場所を訊く為だ。
剣斗は前回編入試験の時に来た事があるので、職員室にスムーズに辿り着く事が出来た。
剣斗「失礼します!今日から編入する神崎剣斗です。校長室に行きたいのですが、場所が分からないので、どなたか教えて頂けませんか?」
職員室に入り、先生達にそう訊くと、前回編入試験の時に剣斗の試験官を担当したあの男性教師がこちらに歩いて来た。
教師「おお、来たか。確か制服を受け取るんだったな?」
剣斗「はい。」
設楽「まずは自己紹介して置こう。俺は設楽統。今年から芸能科の担任をすることになっている。あとで始業式でも発表があると思うがな。よろしくな。」
剣斗「はい。改めまして、神崎剣斗です。今日からお世話になります。」
設楽「それじゃ、校長室に行こうか。」
設楽先生に案内され、剣斗は校長室に向かった。
とは言っても、校長室は職員室の隣りにあったので、すぐに到着した。
剣斗「なんだ、隣にあったんですね。」
設楽「ああ。最初だから分からないのも無理はない。でも、覚えやすいだろ?」
剣斗「確かに(笑)」
コンコン·····
設楽先生がノックし先に校長室に入る。
設楽「失礼します。校長、編入生を連れて参りました。」
校長「ああ、分かった。中に入れなさい。」
設楽「神崎、入っていいぞ。」
中から設楽先生に呼ばれ、剣斗も中に入る。
校長室の中には、小太りの中年男性がいた。
乃木坂学園、校長の秋元康だ。
校長「はじめまして、校長の秋元康です。ようこそ、乃木坂学園へ。」
剣斗「編入生の神崎剣斗です。今日からお世話になります。」
校長「確か制服を受け取りに来たのだったね。」
剣斗「はい、ですかその前に大事なお話があるので、お時間よろしいですか?設楽先生も。」
設楽「俺もか?別に構わんが。」
校長「私も大丈夫だ。」
ここでついに、自分の秘密を初めて他人に打ち明ける時が来たのだった。
剣斗は自分のデッキケースからヴァンガードのデッキをその場に出した。
それは普段、剣斗がプロファイター、神村翔として使っているゴールドパラディンのデッキだった。
校長「こ、これは!!」
設楽「まさか、神崎!!お前があの!!」
剣斗「そうです。オレはプロファイター、神村翔でもあります。」
校長と設楽先生は突然の暴露に少しの間、頭が真っ白になっていた。
だが、すぐにその状況を理解し、なんとか受け入れられた。
校長「まさか、キミがあの神村翔君だったとは、驚きだな。」
設楽「俺もですよ、校長。」
剣斗「まあでも、神村翔は芸名みたいなもので、本名は神崎剣斗ですけどね。」
校長「でも、何故その事を打ち明ける気になったのかな?」
剣斗がおそらく訊かれるであろうと予想していた事を校長は訊いてきた。
剣斗「この学園で生活する以上、最低限、校長と担任の先生には知っておいて欲しい思ったからです。おそらく全員にバレること無く過ごすの無理でしょうから。」
設楽「なるほどな。だからあえて、生徒のプライバシーを守ってくれそうだと思った俺と校長に打ち明けたわけか。」
校長「そういう話なら分かった。この事は内密にして置こう。キミのお父さんにはお世話になった事もあるしね。」
剣斗は乃木坂学園の校長と父親が高校の同級生であったことは、なんとなく聞いていたので、そう言われた事に関してはあまり驚かなかった。
設楽「校長は神崎の父とは知り合いだったのですか?」
校長「ああ、高校の時の旧友だよ。」
剣斗「父からなんとなく聞いていました。」
剣斗がそう言うと、校長は奥の部屋から制服を持って来てくれた。
校長「これがキミの制服だ。サイズはご両親から聞いてるから、おそらくピッタリだろう。」
剣斗「ありがとうございます。」
校長「あと、上履きだ。スリッパだと何かと不便だろう。」
制服の後に渡された上履きをその場で試しに履いてみると、それもぴったり合っていた。
剣斗「上履きも大丈夫です。」
校長「そうか。なら、よかったよ。」
設楽「さて、奥の部屋で着替えて来たらどうだ?そろそろホームルームの時間が近付いてるからな。」
校長「おっともう、そんな時間か。神崎くん、着替えて来るといい。」
剣斗「わかりました。」
剣斗は設楽先生と校長に促され、奥の部屋を使わせてもらい、そこで着替えた。
そして剣斗は着替えを済ませ、その部屋を出た。
校長「似合っているじゃないか。」
設楽「はい、様になってますね。」
剣斗「ありがとうございます(笑)」
キーンコーンカーンコーン·····
設楽「おっと予鈴だな。神崎、そろそろ行くぞ。」
剣斗「はい。」
設楽「では校長、失礼しました。」
剣斗「失礼致しました。」
校長「ああ、神崎くん。頑張りたまえよ。」
剣斗「はい!」
設楽先生に案内され、校長からの賛辞の声を受けながら、剣斗は、校長室を後にした。
そしていよいよ、自分がこれから学園生活を送る新しい教室へ設楽先生に案内され、向かった。
だが向かう途中、設楽先生がとんでもない事を言い出した。
設楽「神崎。今更で非常に言いにくい事なんだが·····」
剣斗「はい。」
設楽「お前がこれから行くクラスには、男子が一人もいないんだ。」
剣斗「へ?」
突然の事に、剣斗は変な声で返事を返した。
設楽「つまりだが、お前以外全員女子生徒なんだ。」
剣斗「はぃぃぃぃいいい!!!!!!」
突然言われた事に剣斗は、ただ叫ぶ事しか出来なかった。
それに追い討ちを掛けるように、さらに設楽先生が言う。
設楽「そして今年から芸能科のメンバー全員で正式にアイドル活動をすることが決まっていてな。それのマネージャーをやってもらいたいんだ。」
剣斗「え!?それホントですか!?」
さらに追い討ちを掛けられた剣斗は、もうどうしていいか分からなくなる寸前だった。
だが、剣斗には自分の秘密を守ってもらっている恩がある。
その恩には答えたいと思い、マネージャーの件に関しては、二つ返事でOKした。
剣斗「まだちょっと完全には状況を飲み込めていないですが、オレの秘密を守ってもらっていることもありますし、引き受けます。」
設楽「そうか、やってくれるか!?急ですまない。」
剣斗「まだ、クラスには女子しかいないって事には全く受け入れられませんが。」
設楽「それに関しては、徐々に慣れていくしかない。何かあれば俺が相談に乗る。」
剣斗「わかりました。」
設楽「さて、着いたぞ。」
そしてついにその教室に到着した。
設楽「それじゃ俺が呼んだら、入って来てくれ。」
剣斗「わかりました。」
設楽は剣斗の返事を聞くと、教室の中へと入って行った。
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