ザンビ 〜GENESIS OF MESSIAH〜①
東京…かつて日本の中心を担っていた首都であった
だがそれも、昔の話である。
一年前、突如として現れ、東京を壊滅させ、人々を生きる屍に変えた存在…
その名もザンビ。
そんなバケモノが蔓延る東京にキリスト教、ローマ・カトリック教会から派遣された一人の少年、篠崎剣斗が荒廃と化した東京の街を探索していた。
剣斗「チッ、数が多いな…」
剣斗の周りには、残美からさらに異形化が進んだ怪物、神人が取り囲んでいた。
神人とは残美が自身で繭を作り、その中で一定期間するとそれに至る。
いわば残美の成れの果て。
残美と神人、これに類するモノを総称して人々はザンビと呼んでいる。
剣斗「こりゃ、セフィロトを使うしかないか…」
剣斗はそう言って、何かを唱え始めた。
剣斗「第一のセフィラ!エヘイエー発動!!そして顕現せよ、守護天使【メタトロン】!!」
剣斗がそう唱えると、天から眩い光を纏った天使が舞い降り、聖なる光を神人達に放った。
それに包み込まれた神人達は苦しそうに呻き声を上げる。
神人達「グアアアァァァァ!!!」
メタトロン『呪いよ、消滅せよ!!』
第一のセフィラの守護天使、メタトロンがそう言うと、神人達はみるみると人間の姿を取り戻して行った。
メタトロン『では我は戻る。』
剣斗「ああ、助かった。」
メタトロンは剣斗と人間の姿を取り戻した人々を一瞥すると、その場から消え去った。
女性「あの…ありがとうございます。助かりました。」
男性「本当に助かった。ありがとう。」
剣斗「いえ、これがオレの役目ですから。」
その後、生還者達を連れて剣斗は自分の拠点へと戻った。
剣斗の拠点は、東京都内にある帝都大学だ。
ここには民俗学研究所があり、初めて訪れた時に、剣斗はその中を色々と調べてみた。
そこで剣斗は、帝都大学の民俗学部がザンビ村という村の伝承を研究している事を知った。
そのおかげもあって、ザンビに対する知識を多少なりとも深める事が出来た。
ザンビ村とは、信州の山深き秘境にある小さな村である。
ザンビ村では古くから棺桶を作り、それを生業としている。
100年前、その村では、生きながらにして埋葬された女性が蘇り、その女性の凄まじい怨念によって村に禍をもたらしたされている。
その禍というのが今、東京で起こっている禍そのものだ。
一年前、ある女子校の悲劇から始まり、その悲劇が東京中を瞬く間に飲み込み、壊滅状態までにし、今も尚、続いている。
剣斗はこれをザンビ惨禍と名付けた。
剣斗「さて、昼飯食べたらまた神人探索だな。」
剣斗はこの東京に来て以来、その怨念の塊と化した女性を探し続けている。
その女性はいわば、オリジナルのザンビだ。
その女性さえの怨念さえ浄化すれば、呪いの拡散は止まり、東京は元に戻ると考え、剣斗は毎日、探索を行っている。
剣斗「さてそれじゃ、行くか。」
昼食を軽く済ませた剣斗はそう言って、拠点を出発した。
探索に出ると、何やらドローンが飛んで来ていた。
剣斗「お、これはラッキーだな。」
そのドローンは物資を運んで来ている臨時政府のものだった。
政府はこのザンビ惨禍が起こると、瞬く間に東京23区周辺に壁を建設し、封鎖してしまった。
それも生存者達を残してである。
さらに残酷な事に、壁の頂上には自動機銃が設置されていて、よじ登ろうとすれば、ザンビや人など関係なく無差別に銃撃される。
政府からすればこれは一種の感染症だと疑い、誰が残美か分からない。
神人であれば、異形化が進んでいるため、見分ける事が可能だが、その前段階の残美はほぼ人間にしか見えないため、見分ける事が難しい。
鏡を使えばその姿が歪んで映る為、瞬く間にわかるが、それでも政府は、ザンビ達を生存者達と共に東京に閉じ込める事を選んだ。
しかし、完全に見捨てた訳ではなく、定期的にドローンで食料や武器などを運んで来ている。
剣斗「念の為、取っておくか。」
そう言って剣斗は、ドローンを追い掛けて言った。
そしてあるビルの屋上でドローンは物資を落とした。
剣斗「ビルの屋上か。ちょっとこれは気を付けて進むか…」
剣斗はそこで警戒を強め、ビルの中に入って行った。
今の東京の現状では物資が壊滅的に不足している為、ザンビだけではなく、同じ人間同士の争いも起こり得るのだ。
その事もあり、剣斗は警戒を怠らずゆっくり確実に屋上を目指した。
剣斗(頼むから、何も出てくるなよ…)
それから剣斗はそう祈りながら、ザンビや他の人間に出くわす事無く、屋上へとたどり着いた。
剣斗「なっ!?マジか!?」
しかし剣斗が屋上に来てみると、ドローンが落としたコンテナに神人の群れが群がっていた。
神人や残美は音に反応する習性があり、その音のする方向に集まって来る。
おそらく、ドローンがコンテナを落とした時の音に反応して集まって来てしまったのだろう。
剣斗「使うしかないか…」
剣斗は覚悟を決め、セフィロトを発動させた。
剣斗「第5のセフィラ!ゲブラー発動!!そして顕現せよ!守護天使【カマエル】!!」
剣斗は真っ赤に燃えさかる炎を右手に具現化し、同じく紅蓮の炎を纏う、天使を降臨させた。
カマエル『あら、仕事かしら。』
剣斗「ああ、オレ一人では数が多い。頼む。」
カマエル『わかったわ。』
剣斗とカマエルは、浄化の炎をザンビ達に浴びせて行き、呪いそのものを消滅させ、元の人間へと戻して行った。
カマエル『どうやら、終わりのようね。なら、私は帰るわ。』
剣斗「ありがとう、助かった。」
カマエルは礼を言われ、少し微笑むと、その場から消えた。
そして剣斗は力を貸してくれたカマエルを見送ると、生還した人達と共に、拠点へと戻って行った。
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