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アイスランド旅行記⑤コペンハーゲン空港、悲喜こもごも
・前回までのあらすじ
どうにか恐怖に打ち勝って、12時間のフライトを楽しむことに。機内では初っ端から恥をかいたものの、美味しい機内食を堪能し、高度1万mの上空でリリー・フランキーに感銘を受けたりしたのだった。
・コペンハーゲン空港に到着!
日本時間 2/19 0:05
現地時間 2/18 16:05
無事に乗り継ぎ地点のデンマーク・コペンハーゲン空港に到着した。
着陸する直前、高度が下がるにつれてデンマークの街並みが見えた。日本とは明らかに違う、煉瓦造りのカラフルな家が並んでいる。それはもう、絵画で見るような本当に綺麗な光景だったけれど、私はトランジットでデンマークを観光することは最初から諦めていた。
乗り継ぎ時間は4時間弱。海外旅行に慣れている人なら迷わず観光するところなのかもしれないが、私は生粋の初心者。4時間の間に入国手続き、観光して空港に戻って出国審査に手荷物検査…上手くやれる自信が全くなかった。目的地はアイスランドだ。今回はおとなしく空港のトランジットエリアで買い物でもして過ごそうじゃないか。そんな気持ちで飛行機を降りた。
↑飛行機を降りてすぐのところ。東洋人の姿がなく、とうとう外国に来た!という感じ。壁に飾ってあるアートがデンマークっぽい。
今振り返ると、せっかくデンマークに立ち寄れたのに、観光しなかったのはもったいなかったなぁとも思う。でも当時の私には、どうしてもキャパオーバーだったので仕方ない。一人旅は無理しないことも大事!今度海外旅行に行けるときは、コペンハーゲンじゃなくても、トランジットを楽しめるといいな。
・トランジットエリアの人魚姫
無事に入国審査をクリアし、トランジットエリアに入ることが出来た。
ちなみに入国審査は、ちょっと危うかった。滞在期間に「2 weeks」と答えたあと、滞在理由を聞かれて馬鹿正直に「volunteer」と答えてしまったからだ。「Sightseeing」等と答えれば良かったものを。こんな小娘が、アイスランドで2週間もボランティア?はぁ?と思われたに違いない。つたない英語でどうにか必死に説明し、「まぁ、いいけど…」という感じで通してもらえた。
↑空港内の看板。日本語で「乗り継ぎ便」とも。日本人利用者も多いことがわかる。同じ飛行機には、アイスランドへ向かう団体客も乗っていたようで、日本語を話すツアーコンダクターに付いていく人達を見つけた。あぁ、あの人達は気楽で良いなぁと思いつつ、何かあったらあのコンダクターに助けを求めようと密かに狙いを定めた。
↑こちらは、デンマークの童話作家アンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフにした銅像、のレプリカ。本物は、コペンハーゲンの中心部から離れた海辺にあるそう。(世界三大がっかり名所らしい…)こういう観光名所のレプリカって日本の駅中とかにもあるけど、今までは「本物を見なきゃ意味ないのに、これを見て観光客ががっかりしたり、逆にこれだけで満足しちゃったらどうするんだろう」と否定的に捉えていた。でも、レプリカを見ることにも大きな価値があることがわかった。私のようにトランジットで観光出来ない人にとって、少しでも現地の文化を知るきっかけになる。現に、このレプリカを見たことでアンデルセンがデンマーク出身だということを覚えたし、世界三大がっかり名所という概念まで知ることができた(気になる人は調べてみてね)。
・お洒落すぎるコペンハーゲン空港
なんとか入国審査をくぐり抜けて、辿り着いたトランジットエリア。人魚姫に別れを告げて、目に入ったのがこの光景!一歩踏み入れて思わず「Wow!」と声が出そうになった。
う〜ん、さすが北欧。デザインに詳しい人が見たら色々説明できるのかもしれないけど、私は「お洒落」としか言えない。12時間も飛行機の中にいたせいか、空港内はとびぬけて明るく、活気に溢れているように感じた。
なんだろう、吊り下げ式のシンプルな時計とか、床の板目の感じとか、派手じゃないのに洗練されたお洒落さを感じる。平たい顔の私は、アウェーを感じながらも恐る恐る写真を撮った。
何よりすれ違う男性たちの背の高さに圧倒された。北欧の男性は本当に背が高くてスマートだね。颯爽と空港を歩く姿が印象的でした。この時にはもう、リリー・フランキーのことなんてとっくに忘れています。
日本にもフライング・タイガーとかイケアとか、北欧系の雑貨を安く買えるお店がたくさんある。私は、そこまで北欧が好きというわけではないのだけど、本場の空間を見て(デンマークの大地は踏んでいないが)その魅力がわかった気がした。
・そして、事件は起こる
お洒落な空間にウキウキしつつも、さすがに長時間のフライトで疲れていた私は、大好物のアイスを食べることにした。
さて、海外一発目のお買い物である。サーティワンのような注文するタイプのデザート屋さんもあったはずだが、ここは安全策でコンビニタイプのお店に入った。冷凍ケースに、外国の美味しそうなパッケージのアイスが売られている。私はその中から、チョコバーのようなタイプのアイスを選んでレジに持って行った。
首からぶら下げた貴重品ケースの中に、パスポートやクレジットカード、現金のユーロなどが入っている。私はクレジットカードを取り出して、店員のお姉さんに渡した。このクレジットカードが問題無く使えることは、成田空港のBECK'Sで証明済だ。(参照:アイスランド旅行記④)
「Can I use a credit card?」くらいのことは喋ったかもしれない。慣れた手つきでカードを受け取り、機械に差し込むデンマーク人(たぶん)のお姉さん。しかし、ここで問題が発生した。
「Push your pin number.」(暗証番号を押して。)
というようなことを言わて、無表情で暗証番号を押す小さなボタンを差し出してくる。
えっ、暗証番号…?ってなんだっけ……
当時の私(19歳)、暗証番号という概念を完全に忘れていた。
前述したように、このクレジットカードは日本でも使っているものだ。しかし使用頻度は低く、今までの買い物ではサインを求められたことしかなかったのだ。成田のBECK’Sでも、暗証番号は求められなかった。自分のクレジットカードに暗証番号が設定されていることを忘れていた私。当然、暗証番号も分からない。
頭が真っ白になった。目の前には、言葉の通じないぶっきらぼうなお姉さん。後ろには、会計を待つ人。早くしなきゃ。焦った私は、何も考えず、ある4桁の数字を入力した。それは、別のものに使っている暗証番号だった。
暗証番号エラー。もう完全にパニック状態である。
ここでやめておけば良かったのだ。暗証番号は、3回連続で間違えるとカード自体が使えなくなってしまう。そのくらいの知識はあった。バイトでレジを打つ時、暗証番号が思い出せなくて現金払いにするおじさんやおばさんを何人も見てきたじゃないか。今思えば、あのおじさんおばさん達は賢かった。それに比べて、私は愚かにも3回連続で同じ暗証番号を入力してしまったのである。間違った暗証番号を。せめて、違う番号を3種類試したのなら100歩譲って理解出来るが…人はパニックになると、何をしでかすか分からない。
私は「やっぱり買うのやめます」というジェスチャーをしてアイスを戻し、そそくさとレジの前から逃げ出した。何の英語も出てこなかった。とにかく歩き続け、人混みから離れたベンチに腰をかけた。
これはやばい。非常にやばい。
当時の写真フォルダを見返すと、さきほど載せた写真(天井が水玉模様のフロア)の次に、クレジットカード会社の登録情報を確認するサイトのスクショがあった。暗証番号を調べる方法を探していたのだ。でもわかったことは、3回連続で入力に失敗すると一定期間使えなくなることと、今この状況で暗証番号を変更するのは不可能だということだった。成田空港で追加で両替したことが、本当に救いの手となった。
とは言え、もともと多くの支払いをクレジットカードで済ませる計画。飛行機やホテルなど高額の支払いは既に済んでいるものの、食事や交通費、観光スポットの入館料などを考えれば、手持ちの現金では十分とは言えない。確かに血の気が引くのを感じた。それでも手は動き、冷静になって親にLINEを入れる。深夜にも関わらずLINE電話をかけてくれたので、経緯を全て話した。カードについては親が調べてくれるとのことで、翌日カード会社に電話をしてもらうことになった。今更ながら、海外通話サービスを使えない時、LINE電話というサービスはありがたい。一人旅と意気込んでいたのに、いきなり親の手助けをもらうことになり、どうにも情けない気持ちになった。
結局、アイスは諦めたのか、現金で買ったのか、残念ながら思い出せない。
さきほど逃げるように出てきたショップのあるエリアに戻って、滑走路に面したイートインスペースの席に腰掛けたのは覚えている。今後の身の振り方を考えながら、飛び立つ前の飛行機を眺めていた。時刻は夜。外は暗く、飛行機やそれを整備する車、機械のライトだけが光っていた。周りを見渡せば、飛行機を降りた時に見た日本人の団体客はどこかに消えていて、西洋人しかいなかった。観光シーズンとも言えないし、コペンハーゲンから乗り継ぐ人しかいないエリアに、日本人がいないことは当然のようだった。心細さはもちろんあったが、同時に「どうにかしてやるよ」という意志がメラメラと…いや、微かに燃えていた。
この暗証番号パニックを乗り越えて、目的地アイスランドに入国出来るのか。次回、乞うご期待🇮🇸