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チャラい神さま

美容室の決め手ってありますか?

カット技術?店内の雰囲気?Instagramのあの子のオススメ?

私はずいぶん長いこと、美容室ジプシーをしました。

「この美容室お勧めだよ」と言われれば予約を入れ、「この人上手だよ」と言われれば電話をかけ、しまいには居酒屋さんで隣に座った方が美容師だと聞き「いつ切ってもらえます?」と、その場で予約したこともありました。

そんなこんなで探し続けて12年。

ついに出会ってしまったのです。

最高の美容師さんに。


優柔不断が息をしている様な性格の私がシャンプージプシーもやっていた頃。一般の販売はないシャンプーが、住んでいる街のある美容室で販売していることが判明。

絶賛美容室ジプシーだった私は、どちらも試せる!ラッキー!と即予約、次の日にはその美容室の前に立っていました。

お洒落なロッジ風のお店に入り、恐る恐る「こんにちは〜…」と言うと、奥から「あ〜こんにちは〜どうも〜」と、金髪のチャラチャラのチャラ男が出てきました。

「あ、むり、話すことない。帰りたい」

何を隠そう、コミュ力というものが皆無の私。金髪の人とハナシタコトナイ。

と直立不動の私をホイホイと席につかせ「でー今日どうしますー?カットしますー?」

えええチャラ!これがチャラか!チャラ男か!!こ、この人アシスタントさん?!カットは別の方?!あっあなただけ?!そもそもお一人しかいないね??!と内心バクバクしながら「あ…えと…カットで…一応伸ばしてるんですけど傷んでるところを…」

「あー毛先中心に数センチ切った方がいいっすね〜この辺ね〜乾燥してますねー。仕事の時はいつも髪結んでる?お団子?」

(え…え?エスパー…?チャラスパー…?)「お団子です…昔からパサパサで…」

「オッケーーでーーーーす!!!」

たった2席しかないお店で超絶元気な声だすやんこの人…と思いながら件のシャンプーをされブローをして頂き「じゃあカットしていきますねー」

と、いざカットが始まるとそれまでの元気さが嘘の様にしん…となった店内。

…え?ごめんなさい私がつまらない人間だから…?会話する気がなくなってしまいました…?本当にすみませんすみません…と心の中で30回くらい唱えた頃、金髪さんが

「すみませんね、カットの間は集中するから話せないんですよね〜…」と。

え?そうなの?…私のせいじゃないの??

その瞬間ふぁ〜っと肩の力が抜け気が楽になり、すっかりリラックスした私は近くのテーブルを見ます。すると、いつもあるはずのアレがないではないですか。

そう、雑誌がないのです。あの着席と同時に顔と雰囲気で判断され年相応っぽい雑誌5冊位をパサパサと置かれるあの雑誌が、ないのです。Ca◯ca◯もn◯n-noもV◯Ceも出てこないのです。

ヘアカットの時によくつけられるてるてる坊主になれるカバーみたいなのも、何故か「手は通さないで〜」と言われているので携帯も見られません。

そして会話もない。

えーーーこの、この感じ、この状況………


すき…!!!!


当たり障りのない会話をして気を使ったりすることもなく、特に興味のない雑誌を見なくてよく、ただただ髪を切る金髪の手元とただただ切られていく自分の髪をただただ見る。


最高では…?


そして綺麗になっていく自分の髪をひたすら眺め、なんとカットのみで2時間ーー後、突然金髪さんが発声。

「うん!いっすね!最高ー!かわいいー!」

すっかり脱力し油断していた私は口から何かが出るところでしたが、「触ってみてくださいー」と言われて指通りを確認すると、今までにないちゅるちゅる感に「…あ…いいです…♡」と虜になったのでした。

「でしょ〜でも、多分すぐ傷んでくるからあんま間隔開けないで来てね。ほいお会計。はいお疲れ様ー!じゃあまたー!気をつけてー!」

と嵐の如く去って…去らされた私でしたが。カットの技術はもちろん、カットの最中の快適さが半端ない…!通わない理由がないっ!!

と、それ以来お世話になっております。

もう2年になるのですが、なんと金髪さんとも会話ができる様になり

「カットの最中はね〜雑誌なんて見てたらダメ。ちゃんと美容師監視してて。こっそり失敗してたりするから。ま、俺は天才だから見てなくても大丈夫だけどね〜」

との事。なるほど、雑誌が全く無いわけです。

雑談もするようになり

「お腹が空いたらキャベツの黒酢漬けを食べるんだよね。まじ痩せるし美容にいいから。俺天才だからすごい美味しいのできるんだよね〜蜂蜜は国産ね」

「ちゃんとイメージして生きなきゃダメなんだよね。『成功した俺はこんな部屋着着てるか?』ってイメージしてなきゃ。俺は天才だから気付けるけどね」

と多岐にわたる人生のアドバイスをいただいたり

「ほんと前髪難しい癖あるよね〜まぁ俺神だから切れるけどね」

と言った感じで、ある日突然チャラい天才からチャラい神におなりあそばせてましたが、ブレない技術とトークの天才っぷり(も、もちろんカットも)にベタ惚れで、いつもいつも予約してから当日まではワクワクしております。


こうして定住先を見つけた私の美容室を探す旅でしたが、最後に切ってもらったのが昨年の2月(髪、伸び伸びです)。昨年の予約時も「ウイルスどうです?行ってもいいです?」なんて予約してたけれど、一年たっても同じ会話をしそうですが…

そろそろ神のトークを聴きたくなってきました。


私があの美容室に行く理由は、あのチャラい神さまに会いに行く為です。

美容室ジプシー達に、神さまのお導きがあらんことを…


#私が美容室に行く理由

#ぶんしょう舎


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