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忘れられない映画

誰しも忘れられない映画があると思う。私にとってのそれは「アンブレイカブル」だ。

私は小学生の頃に映画に興味を持ち始め、母とレンタルビデオショップに行って、映画を借りて観るのが何よりも好きだった。トトロとネバーエンディングストーリーが特にお気に入りだった。

小学生といえば少し背伸びをしたい年頃。私は、普段みている子ども向けの映画だけではなく、大人向けの映画も観てみたいと密かに思っていた。
そんなさなかに、おそらくCMか何かで、透明人間がアレコレする映画「インビジブル」を知った。「透明人間って面白そう!」と単純に思い、そして大人向けの映画も見てみたいというか欲があったので、いつか絶対にみようと思った。

それからというもの、率先して家事を手伝い母親の点数稼ぎに明け暮れた。それもこれもインビジブルを観るためだ。そして、点数が貯まった頃合いを見計らって「インビジブルを借りてきて欲しい」と母にお願いした。家事のお手伝いをしていた甲斐あって、無事に借りてきてくれることになった。

そして「借りてきたよー」と言って母から渡されたのが「アンブレイカブル」だった。
インビジブルとアンブレイカブル。ブルしか合ってない。
私がちゃんとタイトルを伝えられていなかったのか、はたまた母が勘違いしたのか、真相は藪の中だ。私は、ようやく大人映画が観られると思ってたので、裏切られて激怒。母と大喧嘩した。

私は「こんなんじゃない!こんなハゲたおじさんの映画なんて観たくない!」と涙ながらに叫んだ。いま思えば名俳優に対して失礼な発言だが、当時の私からしたら知ったこっちゃない。
わめき散らす私に対し、母も負けじと「そんなことは知らん!こっちはちゃんと言われた映画を借りてきたのに!探すの大変だったんだから!!これ観ないんだったら二度と映画借りてこない!!」と言い放った。

当時の私にとって、母は金曜ロードショーに次ぐ大事な映画の供給源であったし、レンタルビデオを借りてくれなくなると大好きだったトトロが、ネバーエンディングストーリーが観られなくなる。
私は泣く泣く、知らないハゲたおじさんのよく分からない映画を観るハメになった。
映画のあらすじは以下の通り。

アンブレイカブル あらすじ
フィラデルフィアで乗客・乗員131人が死亡する悲惨な列車事故が発生し、警備員のデビッドだけが奇跡的に無傷で生き残った。そんな彼の元に、イライジャと名乗る人物から不審な手紙が届く。コミックギャラリーのオーナーであるイライジャは生まれつき骨形成不全症という難病を抱え、これまでの人生で数え切れないほど骨折を繰り返してきた。彼は自分とは対極に位置する頑強な人間が存在すると考えており、デビッドこそが不滅の肉体を持つ“アンブレイカブル”であると確信していた。デビッドはイライジャの話を一蹴しながらも、思い当たる節がいくつもあることに気づく

映画.com https://eiga.com/amp/movie/1207/


当時の私は小学生ということもあって、分かりやすい勧善懲悪の作品にしか触れていなかったから、まず悪役がいかにも「悪いやつですよー」と登場してこないことに衝撃を受けた。
そして、悪役にも母親がいて、人生があって、ちゃんと思想があって行動していることに驚愕した。

私は当時、世の中は「良い奴」と「悪い奴」で簡単に割り切れて、悪い奴は絶対に懲らしめられるものだと思っていた。そんな価値観が足元から崩れ去った感覚だった。
そうなると疑問は止まらない。じゃあ今まで毎回決まってアンパンチされているバイキンマンにも思想的な背景があるの?とか思いはじめた。

それから、もっと世界のことを知りたいと思って、映画にのめり込み、最終的にはお願いにお願いを重ねてWOWOWも契約してもらった。
アンブレイカブルは、映画を好きになるきっかけをくれた忘れられない作品である。

その後、無事にインビジブルも借りてきてもらえ、ワクワクして観たが、小学生にとっては少しグロい内容でトラウマになったのはまた別の話。

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