ラジオ体操カードにスタンプを押してもらいたいだけ
夏休みに入る前の一学期最終日、通知表や夏休みの宿題が渡される。
それと同時に配布されていたのがラジオ体操カード。
ラジオ体操自体はまったく好きではなかったくせに、ラジオ体操カードは好きだった。
カードのデザインは毎年変わり、今年はどんなイラストが描かれているんだろうと見るのも楽しみにしていた。
ラジオ体操は地域の部落ごとで行われ、開催場所は近所の保育園のグラウンド。
夏休みだというのに毎朝5時半に起床し家を出る。
保育園に到着すると、すでに5~6人の子どもたちがいて、徐々に人数が増えていく感じだった。
朝っぱらから体操なんてやってられるか、といった顔をみんなしている。
私もその一員だったが、毎朝律儀にラジオ体操に参加していた理由がある。
それは、ラジオ体操カードにスタンプを押してもらうのが好きだったからだ。
毎日一つずつスタンプが増えていくのがたまらない。
マス目に埋まったスタンプを見ると、満足感で満たされる。
今日もスタンプが増えた!
その喜びを感じたいがために、毎朝5時半に起床しラジオ体操に参加していたのだ。
うっかり寝坊して、参加できなかった日には心底がっかりした。
カードにできてしまった空白が嫌で、納得がいかず、ずるをしてその空白にスタンプを押してもらうこともあった。
ラジオ体操なんかどうでもよかった。
ただスタンプをペタッと押してもらいたいだけ。
こんな真冬にそんなことをふと思い出した。