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小学校の卒業式で

小学校の卒業式の時、谷川俊太郎の『生きる』を群読した。

一人一文割り振られ、皆腹の底から声を出し、順番に読み上げていく。

『いま生きているということ』という一文は全員で声を揃えて読み上げる。


本番当日まで6年生全員で何度も練習を行った。

一文一文の感覚は2秒。

その感覚が早すぎたり、遅すぎたりすると先生の怒声が体育館に響く。

声が小さすぎると、大きな声で言えるまで何度もやり直しをさせられた。

何度もやり直しをさせられて、泣き出す子もいたり。

そのくらいの緊張感があって、この練習の時間が苦痛だった。


わたくしのソロの出番は最後の方、

『鳥ははばたくということ』

という一文。

『と』が最初の音になるのだが、とても言いにくい。


舌先が上前歯の裏に位置しているところから発声しなければならないので、大きな声を出しづらい。

英語の発音でいうところの、『T』にあたる。

最初の文字が『あ』や『お』から始まる一文なら、声帯が開いた状態から始まるので、スムーズに発声がしやすい。

だが、『と』であれば声帯が閉じた状態、かつ、舌先が上前歯裏に接している状態から始まるので、声が通りづらいのである。

専門的なことを言っているようだが、あくまでもわたくしがそれっぽく考えたもので、でたらめな分析であることを補足しておく。



要は、『鳥は』の『と』が言いにくくて苦戦したよ、ってこと。


今、好きな一文を選べるとするならどれがいいだろう。

大きな声で言いやすく、かつ覚えやすい一文、

『あなたの手のぬくみ』


なんかどうだろうか。


『それはミニスカート』

『いまどこかで兵士が傷つくということ』


これも好きな一文で捨てがたい。


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