キーボード革命ラピッドトリガー 概要と類似製品との比較・選び方のポイント
概論
2023年6月 日本でも大人気であるVALORANTという対人FPSゲームの世界大会 VALORANT MASTERS TOKYOが東京にて開催されました。世界大会開催と時を同じくしてTwitter上で連日トレンド入りして大変な話題になっているとあるキーボードがありました。それがラピッドトリガーというゲーミングデバイス史に残る画期的な機能を搭載したWootingと呼ばれるキーボードでした。
そしてそのWootingへの注目によって競合他社も新製品の開発や既存製品のソフトウェアアップデートを強いられるようになりゲーミングデバイス界隈に大きな変革が訪れました。
本稿はそれらの変移やきっかけになった技術の内容をなるべく分かりやすくまとめ、追随するWooting類似製品の解説や購入ポイントを紹介しています。今後業界標準となるこれらの機能を搭載したキーボードの波に乗り遅れないように本稿が製品選びの後押しになれれば幸いです。
はじめに
昨今では日本においてもパソコン(以下PC)でゲームをプレイするという方が増えてきました。 直近のPCゲーマー人口調査では日本がドイツなどを抜き世界6位のPCゲーム大国に躍り出ています。
日本でもかつてないほどの普及をしているPCでゲームプレイするというスタンスですが、家庭用ゲーム機で遊ぶのとは違って実は結構用意するものがあります。 ゲーミングPC 本体はもちろんゲーミングディスプレイ、キーボード、マウス、マウスパッド、イヤホンorヘッドセットなどのゲームをプレイするときに必要なゲーミングデバイスといわれる機材達です。
ゲーミングデバイス優先度
ゲーミングデバイスを買いそろえるときにまず大事なのは各デバイスの優先度です。お金に余裕があるという方は機能面だけ見て自分に合ったものを買いそろえていくのが良いのでしょうが、しかし殆どの人が使える金額に限りがありその中で機能面だけでなくコスパを考えながらやりくりしなければなりません。
そのような時どのデバイスにお金をかけるべきなのか、各ゲーマー達は優先順位をつけるのですが概ね次のようになると思います。※主にFPS等対人ゲームのプレイを想定
1.ゲーミングマウス
2.ゲーミングモニター
3.マウスパッド
4.イヤホンorヘッドセット
5.ゲーミングキーボード
人によって多少前後するとは思いますがキーボードの優先度が低いのは大体のFPSゲーマーに当てはまると思います。
手で握って動かして照準を合わせるマウスやその動きを調整するマウスパッド等はゲーム内での強さに直接的に関わってきます。
その一方でキーボードはキーを押して反応さえすれば安いものでも高いものに比べて強さに差がつくことはほとんど”キーボードは自分が押しやすければ正直なんでもいい”というのが今までの時代の考え方でした。
ラピッドトリガー搭載キーボードWooting
2023年6月に世界的にプレイ人口が多く日本でも大人気であるVALORANTという対人FPSの世界大会 VALORANT MASTERS TOKYOが東京にて開催されました。そこで注目を集めたのが本稿の主題になるラピッドトリガー搭載キーボードWooting 60HEです。
世界大会とあって超一流のプレイヤーが集まるなか、皆そのプレイだけでなくそのプレイヤーがどんなゲーミングデバイスを使っているのかにも注目をしているのです。前回大会では業界最大手であるロジクールのg913 tklというキーボードを最も多くの大会参加選手が使用していました。
しかしその次に開かれた MASTERS TOKYOは少し様相が違っていました。皆Wootingという見慣れないキーボード使っていたのです。 なんと参加選手6人に1人という割合で使われており、全参加者の使用キーボードの総計でも1位でした。なぜそれほど多くのトッププロたちが使用しているのか? それは今まで押しやすさやサイズ、デザイン等で選ばれがちだった既存のゲーミングキーボードに比べて明らかにゲームプレイに有利になるような画期的機能がWootingにはあったからなのです。それがリセットポイント可変追従機能ラピットトリガーです。
ラピッドトリガーとは
ラピッドトリガーの説明の前にまずキーボードにおけるアクチュエーションポイント(以下AP)とリセットポイント(以下RP)の説明をさせてください。
FPSを例として出すとキャラクターが前進するためにはWキーを押すわけだが従来のキーボードだと押し込み始めてから実際にキャラクターが前進を始めるまでに僅かなタイムラグがありました。 図1の左図で説明すると上からキーを押し込んでからAP(図ではACTIVEと書かれた位置)に到達しないとキーは入力を感知しない仕組みになっています。
WootingはこのAPの位置を変えることができ最短0.1mmと浅く設定することができます。つまりキーを押し込むその瞬間に入力が始まりゲーム内のキャラクターがタイムラグ無しで動き出すのです。(図1 右図)
実はWooting以外にもこのAPを可変させることができるキーボードはいくつか市販されているのですが、そこで終わらないのがWootingです。
そう、そこでラピッドトリガーの登場になります。
キーを底まで押し込んでから再び入力をオフにさせるには図1の左図にあるようなRPまで戻さなければいけません。ラピッドトリガーはそのRPさえも最短0.1mmと短く設定できるのです。
ラピッドトリガーがオンだとRPがキーを押した位置まで追従してくれるので図2 右図のように押し込んでから指を離したその瞬間に入力がオフになります。つまり押した時の反応だけではなくて指を離して"入力がオフになるのが早い"のがラピッドトリガーです。
まとめ
ラピッドトリガー=指を離した後の反応が早い
ちなみにAP、RPどちらも追従してくれるのでキーを一番底まで押し込まなくても途中で0.1mm上に上げてもオフになり、再びその位置から0.1mm押せばオンになるので入力の連打も早くなります。
ラピッドトリガーの優位性
近年日本でも流行っているVALORANTではストッピングという概念が重要になっています。VALORANT内では敵に銃を撃つときにWASDキー等の移動キーを押してキャラクターが動いている状態だと銃弾がばらけてしまい照準が合っていても弾が当たらないという状態になります。なのでストッピングといってキャラクターに移動入力が入っていないしっかり静止した状態で銃を撃つ必要があるのです。
ですが当然前項で説明しているように移動キーを離してキャラクターが実際に止まり始めるまでにタイムラグがあるのです。そこでそのタイムラグがほぼ発生しないラピッドトリガー機能を搭載したWootingがVALORANTトッププレイヤー達から注目を浴びることになったのです。
ここでは内容を割愛しますがVALORANTにはキー入力オフのタイムラグを縮めるために逆キーストッピングというテクニックがあるのですがラピッドトリガーはそれさえも必要のないもにしてしまうのです。
またラピッドトリガーはAPEX Legendsのような動きが激しくダイナミックかつ時に精細なキャラクターコントロールを必要とする他のFPSにおいても非常に有用です。
競合他社がWootingに追従
実はラピッドトリガー自体は数年前からWooting社の製品には搭載されていました。ゲーミングデバイスメーカーやFPSゲーマー界隈でその機能にいったいなんの価値があるのか理解できてる人は殆どいなかったのです。しかし、最近になってFPSのトッププロ達がその価値を見出し始めたことでようやく各デバイスメーカーにもキーを押したときの反応よりも離した時の反応の方が重要なのでは?という考えが浸透してきました。
1.東プレ リアルフォースGX1
まず口火を切ったのが国産キーボードメーカーの東プレから発売されたリアルフォース GX1です。 当初GX1はキーを離した時の反応が早くなる機能を搭載していたのですが、ラピッドトリガーのようにRPが追従するのではなく固定のRPを2か所に設定するという劣った機能で疑似ラピッドトリガーと言われるようなものでした。しかし、2023年7月のアップデートにより遂にDynamic modeと呼称のついたラピッドトリガー相当の機能が実装されました。
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