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岐阜考察3 飛騨②

岐阜県の北部半分を占める飛騨地方は4つの自治体で構成される。それぞれ、飛騨市、高山市、下呂市、大野郡という。

飛騨市

千年以上続く飛騨の名を冠した市で、一見すると長い歴史があるようだが平成の大合併により成立したので岐阜県の中では新参者に当たる。飛騨地方の中核都市のようだがその実、岐阜県の北辺にひっそりとあり、一般的岐阜県民が訪れることは少ない。県内からよりも、富山から行った方が行きやすいという事実が県内における存在感の薄さに拍車をかけている。

合併直前の2002年には、現在の飛騨市を構成する神岡町にあるスーパーカミオカンデという施設でニュートリノを観測した成果により小柴博士がノーベル賞を受賞している。

また、映画「君の名は」の舞台設定の一部となったらしい。岐阜県の町が1つ消滅しているのに都民は覚えていないという辺りが妙にリアルである。

高山市

俗に飛騨高山と呼ばれ、飛騨地方の真の中核都市とみなされている。飛騨市の存在により若干ややこしくなっているが、飛騨高山というのは飛騨市と高山市を並べ称しているわけではなく、飛騨(地方の)高山と言う意味で、まさに高山市は飛騨地方の代名詞と言える。

こちらも平成の大合併により成立したのだが、小さな町が集まってできた飛騨市と違い、旧高山市が周辺の街を併呑して現在の高山市となった。その際、物事を深く考える人間が少なかったのか、加減を知る人間がいなかったのか、際限なく町を取り込んだため、現在の高山市の面積は大阪府よりも広く、東京都とほぼ同じとなっている。ただし、人口は10万人に満たないので、単純計算で人口密度は東京の0.83%しかない。ポテンシャルの無駄遣いと思う人もいるかもしれないが、高山市の90%は人が住むのに適さない地域だということを付しておく。もっとも、それを加味しても人口密度は東京の8.3%であるが。

下呂市

下呂と書いて「げろ」と読む。命名者の眼下に何が落ちていてこの名前となったのか疑問が尽きない。語感ゆえに吐瀉物を連想しがちだが関係はない。

市内には温泉が湧き出ており、下呂温泉という温泉街がある。まだ幼かりし日に、家族旅行で「ゲロ温泉」に行くと言われたときは親の正気を疑ったが、むろん吐瀉物と関係はない。

岐阜県民は下呂温泉を日本三大名泉の1つと教えられて育てられ、世界三大美女に小野小町が入っているような場違い感をぬぐえないまま成長する。

温泉街は少し寂れた感じがあるが、最近再開発されているのか新しい店や旅館も増えて若い人でも楽しめるようになっている。

街の真ん中に川が流れており、その河原に露天風呂がある。川を渡す橋の上から丸見えなので、入るのには相当程度の度胸を求められるが、これを楽しめる人間が人生を謳歌できるタイプの人間である。もちろん水着着用であるが、稀に何も着けずに入る漢もいる。人生を楽しみすぎである。

下呂市にはホテルくさかべアルメリアというホテルがあり、そこでは夜な夜なニューハフショーが催されている。岐阜県民は幼いころから岐阜放送のCMを通じてこの事実に触れているため、いざ下呂温泉へ行くとニューハフショーに興味がなくとも本物のホテルくさかべアルメリアを眺めてみたいという欲に勝てなくなる。私は大学生の頃、同じ岐阜県出身の友人と下呂温泉へ行ったときに、わざわざ門の前まで表敬訪問した。愛知県民の妻はそこに泊まって期せずしてニューハフショーを見たらしい。

大野郡

21世紀も20年以上過ぎ、元号も令和に変わったこのご時世にまだ「郡」という行政区分が息づいていたのかと感じさせられる。世界遺産となった合掌造りで有名な白川郷はこの大野郡に属する。実は世界遺産には、「岐阜の白川郷と富山の五箇山の合掌造り」として連名で登録されているのだが、なぜか白川郷ばかりがフィーチャーされる。落ち着いて合掌造りが見たい場合は五箇山の方がいいらしい。

なお、合掌造りの家は普通に住居として使われているため、住民に配慮した見学が求められる。

冬に行くと雪の積もった、いわゆる「岐阜県」のイメージ通りの風景が見られる。わずか数軒の建物が、岐阜県全体のイメージを作れるという点に世界遺産のブランド力の高さが窺える。

実際に行ってみると、「こんなところでどうやって生活しているんだ?」と疑問に思う。同じ岐阜県民でもそう思うので、他県の人は一層疑問を深めることであろう。

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