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岐阜考察5 西濃①

美濃地方の西側が西濃である。

西濃の経済

西濃で全国区の知名度を有する企業に、カンガルー便と2chのコピペで有名な西濃運輸がある。また、ローカルな知名度を有するものに、従業員に優しく、1年間分の有給支給で話題となった未来工業と、AKB48が流行った頃にOKBを自称し、シングルマザー向けの低金利ローンのような特徴的な金融商品を出した色物銀行、大垣共立銀行がある。大垣共立銀行は長らく県内の第3地銀の地位に甘んじていたが、OKBと名乗り始めた辺りで謎の勢いがつき、気づけば第2地銀だった岐阜銀行を吸収してその地位を簒奪している。その様は齋藤道三による美濃の国盗りのようであったとかなかったとか。

伊吹山

突然だが、降雪量の世界記録はどこかご存知だろうか。伊吹山北辺である。

伊吹山とは、西濃北部にある山間部の主峰のことである。西濃の南部は濃尾平野に属しているが、北部は山間部にかかっており、豪雪地域となっている。

伊吹山は標高1,300m超で、岐阜県と滋賀県大津市に跨っている。半ば話の時代にヤマトタケルノミコトがこの山で神に呪われて、京へ帰還することなく死去する原因となっている。また、日本アルプスと同様、冬場に日本海を渡ってきた湿った北風がこの山を越えるときに日本海側に豪雪を降らせ、太平洋側に乾いた寒風を吹きさらす原因となっている。この豪雪は並大抵のものではなく、1927年に伊吹山は降雪量11m超を記録し、以来アラスカにもシベリアにも破られることなく、降雪量の世界記録を保持している。また、乾いた風は遮蔽物の少ない濃尾平野を強く吹き抜けるため、特別に伊吹おろしと呼ばれている。

濃尾平野

かつて、長野県と岐阜県の県境辺りにある山間の馬籠宿で生まれた島崎藤村は小説「夜明け前」にて、故郷近辺(木曽路)を指して、「木曽路は全て山の中である」と言った。馬籠宿で暮らしていた若き日の藤村は、そこから西へ100キロ弱の距離に、見渡す限りの平野が広がっているとは夢にも思わなかっただろう。なぜなら彼は青年期早々に東京へ出て行ったからである。

若き日の私も、「岐阜は全て山の中である」と思っていたので、初めて濃尾平野へ出たときは同じ岐阜の風景とは思えなかった。見慣れた山の景色は遠方に退き、かといって平野を埋めるほどの人工物はないのでクレーターのように平坦な土地がただただ広がっていた。その中で異様に大きく、近未来的な形をした建造物が認められた。

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岐阜に似つかわしくない、かといってどこにあれば正解かもわからない建物だった。

近くの高速を走っていると、遮蔽物がないのでずいぶん手前からこの建物を眺めることができる。散在する民家と田んぼしかない風景の中で縮尺を間違えたような威容を誇り、かつ独特なフォルムが異彩を放っている。金にモノを言わせて、地域一帯に悪影響の出る研究をやっているとしか思えない建物だった。

あの非岐阜県的な建物は何だろうと思い私はネットの海で答えを探した。岐阜の情報は中々ネットに上がって来ないので調べるのには時間がかかったが、やがてパナソニックがサンヨーを吸収合併した記事から建物の正体が判明した。

かつてサンヨーが不祥事を起こして回収したソーラーパネルで作った「ソーラーアーク」という太陽光発電施設だった。つまりは、不要となったパネルの大きな廃棄先であった。なるほど、岐阜県にはこういう使い方もあるのかと得心した。

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