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It’s the single lifeとは?32
〇〇:…
一難去ってまた一難
いや、なんなら五難くらいのヤバさ
〇〇:どうする…
賀喜さんの対処を早急にせねば…
頭では分かってる
だがいかんせん
〇〇:どうすればいいんだ…
冷静に考えてこの状況は打開の余地がない
遠藤さんを助けるところまでは問題なかった
だが、その次のステップが道を踏み外しまくってる…
〇〇:やばいやばいやばいやばい…
レッスンも終わっちまう…
ぶっちゃけレッスンのアドバイスなど俺には不可能だ。
この時間は、基本的にメンバーに水分渡したりタオル渡したりと簡単な作業ばかり
なのに
〇〇:答えが出ないまま終わってしまった…
激しいレッスンを終えて、更衣室へと次々と歩いていく面々
だが
遠藤:…
なんだろう。
すんごい膨れっ面でこっち見てる。
え、可愛いんだが。
〇〇:ど、どうかしましたか?
遠藤:レッスン中、他のメンバーばっか見てたでしょ。
…はい?
〇〇:…いや、見てたと言われても…
視線的には向いてたかもしれんが、ぶっちゃけ考え事で何一つ気にも止めてなかった
スタッフとして問題感満載だが
遠藤:…バカ。
その二文字を残し、彼女は早々にその場を去ってしまう
〇〇:…ぇぇぇぇぇぇ…
さらに追い打ちをかけるように
和:お義兄ちゃん。
〇〇:和。俺はいますこぶる大変な状況で構ってやれる余裕は…
和:さっき話したさくらさんの件と、昨日私の連絡無視した件はこの後家で話そうね。
…
〇〇:そこまでして義兄を葬りさりたいか?
和:例えお義兄ちゃんが灰になっても愛せるよ。
〇〇:…風邪引かないように早く着替えてきな。
和:はーい。
ふぅ。
先のことは一旦置いとい…
「あいかわらず人気者ですね。」
…
〇〇:そ、そんなことないですよ。
〇〇:賀喜さん。
賀喜:そうでしょうか?
今もさくと和ちゃんと楽しそうに話してたじゃないですか?
楽しそう…?
なにそれ美味しいの?
賀喜:まぁいいですけど。
…お?ホントにいいの…
賀喜:最後の晩餐的なやつだと思えば。
良くないね。全然良くないね。
〇〇:あの…どうか弁明の余地は…
賀喜:ないですよ。
なんてストレートな極刑宣言
賀喜:あなたは私の質問にだけ答えてください。
〇〇:はい…
もう成すすべもない。
なるようになる。
死ぬように死ぬ。
たったそれだけのことだ。
賀喜:あなたはなぜ…
生まれてきたんですか?
息をしているんですか?
心臓が動いているんですか?
さぁどれで来る。
賀喜:さくちゃんのストーカーに気付けたんですか?
〇〇:…ほえ?
予想外な質問と、真剣な眼差しを途端に向けられフリーズしてしまう
賀喜:…場所を変えましょうか。
ー
どこのオフィスにでもあるような人気のない物置
賀喜:ここなら誰も来ないか…
〇〇:…
え、なにこの展開?
まさか…
〇〇:この場で生き埋めに…
賀喜:変なこと考えないでください。
〇〇:申し訳ございません…
賀喜:はぁ…
それで、さっきの質問答えてください。
さっきの…
さっきの…
さっきの…
〇〇:…あ!!
賀喜:!?
な、なんですか急に…?
〇〇:そうだ…思い出した…
賀喜:思い出す?なんの話ですか?
〇〇:いや、賀喜さんの質問にもあったあの日のことなんですが…
言葉を紡ぎながら、ポケットからスマホを取り出す
〇〇:あ、これですこれ!!
賀喜:これと言われても…
〇〇:ちょっとまってくださいね…
たしか…あれ…
スマホを素早く操作していたはずが、まるで時間が止まったかのように彼の動きが停止する
賀喜:…どうしたんですか?
〇〇:これ…なんですけど…
どこか腑に落ちてないように画面が見れるようにスマホを渡す
賀喜:…メッセージを取り消しました…
〇〇:信じてもらえるか分からないんですけど…
この「名無し」って人からメッセージが来て…
賀喜:…
え、なにこの時間。
めっちゃ気まずい。
いや、ホントなんですよ?
信じられないと思いますがホントに…
賀喜:…分かりました。
では、私はこれで。
〇〇:そうですよね…信じてもらえ…
はい?
賀喜:〇〇さん。
私はあなたの弱みを握ってます。
わぁお。
突然の死刑宣告ですか?
賀喜:この意味わかりますよね?
〇〇:…明日までに遺書を用意しろと…?
賀喜:はぁ…
このメッセージの件と、私とのやり取りは誰にも口外しないでください。
〇〇:え、それだけですか…?
賀喜:今のところは。
では、私はやることがあるので。
〇〇:え、ちょ…行っちゃったし…
…これはどうなるんだ?
ーー
賀喜:…失礼します。
通常より重厚な作りで出来た扉
彼女の心情とは裏腹に、心地良いリズムでノックをしながらノブに手をかける
「あら。
レッスン終わったのにまだいたのね。」
賀喜:はい。
お伺いしたい事がありまして…
「正解よ。」
賀喜:え?
まるで虚をつかれたような間抜けな反応
それも致し方ないのだろうが
「遥香の考えてることで概ね合ってる。」
賀喜:…じゃあ…
「仲良くしてあげてね。
彼…なかなかに面白いから。」
ーー
〇〇:…
自宅のはずがまるで生きた心地がしない。
間違いなく死刑を言い渡されるだろうが、まだ確定してない凶悪犯はこんな気持なのだろうか。
〇〇:ここからの逆転方法は…
ないな。悲しいほどに。
さくらさんに頼るって方法も無きにしもあらずだが…
〇〇:悲しいかな。愛されポンコツは…
和へのLINEすら、どうすればここまで誤解を生めるの?って内容だった
それがさらに複雑な問題となれば結末は明白だ
〇〇:とりあえず…
ガチャン
〇〇:…帰ってきたな。
なんやかんや放置していた問題の種。
どうやってこの種を上手く発芽させずに枯らすか。
〇〇:和おかえ…
視界に入った2つの情報
1つは朗報
怒り狂ってると思っていた義妹が満面の笑みであること
こう見ると可愛いな。
なんて感想は、もう1つの情報からあっけなく破壊される
和:あ。お義兄ちゃん早いね。
〇〇:…
口が空いては閉じてを繰り返す
言葉を発したいがなにを発せばいいわからない
それでも何か言わずにはいられない
その二つの葛藤が争ってる証拠
和:なに鯉みたいにパクパクしてるの?
そんなことしてないで早く…
和:「賀喜さん」にもご飯作ってよ。
賀喜:…どうも。
〇〇:…
最後の晩餐なんてふざけたことも思ったけどさ
まさかホントに自分で作った料理が最後になるなんて
あんまりだよ神様。