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It’s the single lifeとは?36

窓から差し込む陽の光


少し肌寒さを感じるクーラーの風


その全てが自分を肯定してくれているように感じる


〇〇:…なぜこうなった。


ベットに横になりながらも、しっかりと目を開けて一日の始まりを感じる


ここは間違いなくさくらさんの自宅


その寝室


それは間違いない。なぜなら…


遠藤:…んん…


〇〇:なんて幸せそうな寝顔なんだ。


…違う違う。

目の前の現実から目をそらすな…


〇〇:なんやかんやあって一緒のベットで寝ることになったが…


いや、おかしいよな。

なんやかんやあって国民的アイドルと一緒のベットで寝るってなんだよ。


それももちろん意味がわからないが…


〇〇:…やっちまった…


何度同じシーンを思い返したか分からない。


だが…


〇〇:ちゃんと返事してるよな俺…


まったくもって状況が理解できなかったが、あれは間違いなく告白だった。


今まで何度か告白されたことはあるが、そのどれとも理由が違う。


なのに…


〇〇:なぜ息をするように承諾したんだ…


いや、でも仕方ないとも思う。

だってあの遠藤さくらさんだよ!?

そんな人から告白されたら、迷う余地とかなくない!?


〇〇:そうだ。

俺の選択は間違ってない。


現に俺はさくらさんといて楽しいと思ってる。

容姿だけじゃなく、性格も間違いない。


でも…


遠藤:んん…もう起きてるの…?


〇〇:あ、お、おはようございます。


どうする。どうするこの状況。


とりあえず冷静に…


遠藤:ん…寒い…


!?


突然感じる温もり


先程まで理性を保つために確保されていたパーソナルスペースを、いとも容易に破壊される


〇〇:さ、さ、さ、さくらさん…?


遠藤:ちゃんとギュッとして。


〇〇:…


あぁもうどうでもいいや〜〜


あまりにも華奢な背中に手を回す


遠藤:フフ…あったかいね。


〇〇:ですね。


遠藤:なんか…幸せ。


どこか照れくさそうに笑みをこぼす彼女に


〇〇:…


まずいまずいまずい…

脳死して幸せに浸りたい気持ちが99.9%だが…


〇〇:あの…


遠藤:あのさ。


まるで遮るように、強めにかけられた声


〇〇:はい?


遠藤:これから…よろしくね。


後戻りするなら今だ。

よく考えろ男〇〇。

いっときの感情でこんな決断を…


〇〇:…はい。こちらこそ。


遠藤:フフ。ありがと。


だから何故俺の頭は猿以下なんだ!!


ーー


〇〇:ふぅ。

とりあえず朝ごはんを作らなきゃいけないわけだが…


キッチンから見れるリビングの様子

椅子に座りながら、どこか嬉しそうに笑みを浮かべる遠藤


〇〇:これは冷静に考えてやばい状況なのでは…?


俺は一スタッフだ。

しかも仮免状態。

そんなやつがいきなり「俺、今日からさくらさんの彼氏っす」なんて言ってみろ。


〇〇:よくてクビ。

最悪この世から旅立つ事さえ考えられる…


何より…


脳裏に浮かぶ義妹、担当、推しメンの姿


〇〇:いや、しかし…

男としてあの状況で断られる奴なんてこの世にはいない…


頭の中の天使と悪魔よ。

対談を始めてくれ。


〇〇天使:僕のした事は決して間違えではありません。

世の中には知らなければ何一つ問題ないことが山程あります。さくらさんとの関係は秘密にしつつ、今までどおりにしましょう。


ほうほう。


〇〇悪魔:なーにひよってんだよ。

あの遠藤さくらだぞ?

こんな機会、水に流す方が罪ってもんだ。

大丈夫だよ。世の中には一夫多妻制なんて言葉もあるんだからな。


ほうほう。



〇〇:我ながら、なんて欲にまみれた対談なんだ。


とりあえず…


〇〇:さくらさん。出来ましたよ。


遠藤:ありがと。いただきます。


並べられた食事に手をつける遠藤を見つめながら


言わなければ…

これからのことを…


遠藤:あのさ。


〇〇:は、はい。


遠藤:私達の関係なんだけど…

しばらくは私達だけの秘密にしない?


そうそう。秘密に…


〇〇:…是非ともそうしましょう。


遠藤:…なんかそこまで肯定されると嫌なんだけど。


〇〇:い、いやいや。

だってこんなこと知られたら、僕たぶんクビじゃ済まないですよ?


遠藤:そうなんだよねぇ。

だから、とりあえず秘密の関係にしといたほうがいいと思って。


クビじゃ済まないことを否定して欲しかった…


遠藤:もちろん、アイドルだからデートとかも難しいと思う。


〇〇:それはまぁ…仕方ないですよね。


遠藤:うん。

でも…こういう時間は大切にしたいな。


〇〇:さくらさん…


遠藤:だから、お家には頻繁に来てほしいな…//


もう無理。

今くらい本能にそっていいよね?


〇〇:はい。

これからよろしくお願いします。


ーー


遡ること約12時間ほど


賀喜:お邪魔しまーす。


和:はーい。どうぞどうぞ。


賀喜:ごめんね。

頻繁にお邪魔しちゃって。


和:いえいえ。

むしろ嬉しいです!!

賀喜さんの方から来たいって言ってくださって。


賀喜:フフ。絵画の続きもしたいしね。

それより…今日はお泊りでいいのかな?


和:はい!!

お義兄ちゃんも仕事終わったら帰ってくるはずですし。


賀喜:帰って来るか…

和ちゃん。お風呂借りてもいい?


和:もちろんです!

私はもう済ませたので、ゆっくり入ってきてください。


賀喜:ありがと。


ーー


賀喜:ふぅぅ。いいお湯だな。


相変わらずレッスンの後は疲れが溜まる


なにより


賀喜:まったく…

さくもどうしたもんかね。


一応はあの人のことをそこまで疑ってるつもりはない。

和ちゃんもいることだし。


賀喜:それでも、さすがにやり過ぎ感はある…


今度ちゃんと話さないとな。

今日はとりあえず協力してあげるけど。


賀喜:さてさて。

じゃあ…やりますか。


ーー


和:まったく。

賀喜さんが来てくれているというのに、我が旦那と言ったら。


当然のように関係性を偽りながら、器用に夕飯の準備を進める


和:我ながら、いい妻になるため料理は日々上達しているし。

さっさと籍入れないとなぁ。


冗談1割、本気9割


ガチャン


和:あ、賀喜さん上がったかなぁ。

賀喜さーん。夕飯の準備出来て…ま…す…


目の前に現れた先輩

その姿は


賀喜:わぁ。美味しそう。

和ちゃんが作ってくれたの?


和:か、か、か、賀喜さん!?

そ、そ、その格好は…


賀喜:あぁこれ?

ベビードールっていうんだけど、大人っぽいでしょ?


和:お、お、大人っぽいというか…

セクシー過ぎるというか…


賀喜:まあまあ。

今は和ちゃんしかいないし。


和:たしかに…

今は私しかいないですけど…


そこまで言葉を発して、ことの重大さを感じ取る。


いや待って。

今は私しかいない。

でも、もう少ししたら…


和:!?

か、賀喜さん!!

私ちょっと電話してきます!!


和は慌てふためきながらも、スマホをしっかりと持ち部屋を移動する


賀喜:ふぅ。ごめんね和ちゃん。


そして


和:お義兄ちゃん!!いまどこ!?


まずいまずい!!

いまお義兄ちゃんが帰ってきたら、間違いなく賀喜さんを襲う獣になる…


とにかく今日は帰ってこさせないようにしなければ!!



和:お、お待たせしました。


賀喜:ううん。

電話は済んだ?


和:あ、は、はい。

実はお義兄ちゃんが諸事情により、今晩は帰らないみたいで。


賀喜:そっか。

まぁ事情があるから仕方ないね。


そう。これはとてつもなく大事な事情。


賀喜:それにしても、和ちゃんはホントにお義兄さん想いだね。


和:はい!

私の大好きな人ですから。


賀喜:…そっか。

〇〇さんも自慢出来るだろうね。

こんな可愛い子に大好きなんて言われたら。


和:それがぁぁぁ…聞いて下さい!!

お義兄ちゃん浮気ばっかするんですよ!?

さっちゃんにアルノ…最近ではさくらさんとまで仲良くなってるし!!


賀喜:それだけ魅力がある人なんだろうね。

色々な仕事も始めてるし、スタッフさんにもかなり好印象だと思うよ。


和:ぐぬぬ…

ライバルが増える予感…


賀喜:…ねぇ和ちゃん。

和ちゃんは〇〇さんのどんなところが好きなの?


和:どんなところ…ですか?

うーーーーーーーん。


リビングには静かでゆったりとした時間が流れる


熟考に熟考をした結果


和:分からないですね。


賀喜:え?


和:あ、正確に言うとお義兄ちゃんじゃなきゃいけない理由が言葉に出来ないと言いますか…


賀喜:というと?


和:お義兄ちゃんの容姿はもちろん好きです。

でも、お義兄ちゃんよりカッコいい人なんてたくさんいます。

お義兄ちゃんはすんごい優しいです。

でも、お兄ちゃんより優しい人だってたくさんいます。

でも…


和:隣にいてほしい。

隣で笑っていてほしい。

隣でずっと過ごしていたい。

そう思える人は、お義兄ちゃん以外考えられないんです。


賀喜:…そっか。



和:じゃあ私は後片付けしてから行くので、先に部屋に行っててください!


賀喜:うん。ありがと。


ガチャン


二人から一人になり


自分の家でないということもあり、余計に静けさが目立つ


賀喜:とりあえず…

〇〇さんと和ちゃんの関係は問題ないか。


和ちゃんのあの感じは、単純な恋愛感情ってわけでもないし。


賀喜:〇〇さんだって、あんな慕ってくれる和ちゃんを裏切るとは思えない。

問題は…さくか…


はてさて、どうしたものか考えなければ…


ピコン


まるで思考を停止させるように高らかに鳴り響く通知音


賀喜:ん?誰だろう。こんな時間に。


時間はいつの間にか日付を越えており、この時間の連絡は珍しいと言えば珍しい


賀喜:って…さくじゃん。


遠藤L:ごめんかっきー。こんな時間に。


賀喜L:ううん。大丈夫だよ。

どうかした?


まさか〇〇さんが何かした…?

いや、さすがあの人にそんな勇気はないはず。


遠藤L:えっと…

これは私の友達の話で…


…おや?


遠藤L:あくまでも友達!!

友達の話!!なんだけど。

私じゃなくて友達の話なんだけど…


…おやおや?


遠藤L:実は…

その友達が最近好きな人が出来たみたいで…


…おやおやおや!?


遠藤L:その人が今日泊まりに来てるみたいで…


…まずい。非常にまずい気がする…

友達、友達、言うてたけど、絶対これさくの話じゃん!!


賀喜L:そ、その友達がどうかしたの?


遠藤L:…勢い余って告白したみたいで…


賀喜:はぁぁぁ!?


はっ!!

ここは和ちゃんの部屋だった…

とりあえずバレては…なさそう…

てか!!


賀喜L:…それで?


遠藤L:なんというか…

お付き合い始め…たんだよね。





賀喜:は?

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