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きょうのお夕飯。カレーライス

 カレー食べたいな、と夫が言った。夜ご飯を何にしようかと話していたところだった。
 私はそうでもなかったけど、まあカレーならそう面倒でもないし、別にいいかと思った。カレールーあったっけ、とパントリーの棚を漁りながら、「あっないじゃんカレールー!」と夫が言った。
「え、本当?使っちゃったんだっけ」
「…冷蔵庫に2カケだけ残ってる。」
 家にあるもんで作れると思ったのにーと夫が言った。どっちみちお肉や野菜もなくなっていたし、夫もいる日曜日の今日のうちに買い物には行っておいた方がいい。今日は参議院選の選挙の日だったが、夫と微熱が出ていた次男を置いて午前中のうちに私は投票を済ませていた。帰宅し、お昼の支度(夫と長男はカップラーメン、私と次男はたまご雑炊)をしながら突然はじめた夜ご飯会議だった。
「あとで選挙のついでに買い物してきてくれる?」
「じゃあ買い物メモ書いといて」
 テーブルに置いてあった長男の幼稚園のプリント裏に、思いついた順に買うものを書いて行く。カレールー、バナナ、ヨーグルト、たまご、じゃがいも…「鶏むね肉とレタスとイングリッシュマフィンも買わんとないわ」夫の筋トレのお供食材達が並ぶ。鶏むね肉、レタス、カレー用のお肉も、ああめんどくさいな。
「やっぱり買い物私があとで行く。」
「そう?わかった、別に夕飯カレーじゃなくてもいいよ、どうせ買い物行くんなら。」
  家であるもんで作れると思ったからカレーって言ったけど、と夫がまた言った。不思議なもんで、違うのでもいいなんて言われるとこちらはもうカレーの気分なのだ。

 まず小鍋にたっぷりお湯を沸かした。カレーライスに添えるゆで卵を作ろうと。子供の頃はカレーに添えられた卵の美味しさがわからなかったが、大人になってカレーを食べると、何故か無性に卵が恋しくなる。目玉焼きでもスクランブルでも美味しいが、今日はゆで卵の気分だった。
 3人分、3つの卵を湯がいていたら、夫が「俺の朝ごはん用にもう一個!」ともう一つ追加をしたので、鍋にはぐつぐつと4つの卵が揺れていた。
 たまごを待つ間にご飯を炊く。我が家はそのひと手間を私が惜しむためにお米は無洗米を使っている。なのでご飯を炊くのに必要な工程というと、カップに米を測って入れ目盛に合わせて水を入れ、炊飯器にセットして、終わりである。
 子供の相手をしながらご飯を作る時なんか、この工程の少なさのありがたみには数百円の値段の差に変え難いものがある〜と心底実感するのでやめられない。

 玉ねぎを一玉、にんじん一本、じゃがいもを2つ。さつまいもも小さいのを一ついれよう。お肉は豚バラのスライスも買ってあるけど、それは明日豚キムチにしたいから今日は鶏ひき肉のカレーにしよう。玉ねぎを薄くスライスし、にんじんは少し小さめに乱切りにした。息子があまり大きいと嫌がる時がある。じゃがいもとさつまいもは皮を剥いて(さつまいもは少し残した)、ゴロゴロと大きなサイズに切っていった。
 フライパンに油を引いて切った野菜を炒めます。フライパンは最近買い替えたばかりで、直径28センチでぱっと見で5〜6センチほどに見える深さがあり、今日のカレーもたっぷりと作れる。長男も甘口のカレールーであれば同じカレーを食べられるようになったので3人分を2〜3日分は作れるだろうか。次男だけはルーのカレーはまだ早いので、大好きなアンパンマンカレーを買ってきた。
 玉ねぎがしんなりしてきたらひき肉をいれる。一パック入れると多そうだったので半量にした。炒めて全体の色が変わってきたら、そこにほんの少しだけチューブのにんにくを入れた。こういう、あってもなくてもわからないような隠し味をすることが結構ある。手軽なチューブで大好きなにんにくの風味がなんとなく足されると、そこはかとなく美味しくなったんじゃないかという気がするのだ。現に、炒める具材からほんの少しふわりと香るにんにくがいま、私の食欲をそそっている。
 少し炒めたら水を入れる。箱のレシピには1000ccと書いてあるので、500ccのカップで大雑把に2杯の水をフライパンに入れ、蓋を閉めた。

 一度冷蔵庫にしまってしまった玉ねぎとにんじん、それから余っていた白菜を再び取り出して小さく切った。味付けを何にするかはまだ決めてないがとりあえずスープの具材にする。こちらは次男も食べるので、食べやすいように具材を小さく、味も少し優しめのお味で作らないといけない。切った側からお鍋に入れて、そこに水を入れて火にかけた。火にかけると言っても我が家はオール電化のためIHなので火はないけれど。

 冷ましたゆで卵を剥き終わり、フライパンの火を止めた。カレールーを1箱と、冷蔵庫に余っていた2カケも入れてしまう。味が濃くなりそうだったので少し水を足したところで、少しだけ牛乳も入れたいなと思いついた。
 通っていた中学校の給食のカレーの味がなぜか好きだったのだけど、そのカレーの味わいに、確かにミルクとバターの風味を感じていた。そのことを思い出したので少し牛乳を入れるのはいいかもしれない、と考えたのだった。それで冷蔵庫を開けて見たのだが、いつも牛乳を置いてる野菜室に牛乳パックの姿がない。
「あーっ、牛乳買い忘れた…。なくなったんだね」
「牛乳は、さっきぼくがしゃっくり止まらなかったから全部飲んだよ!」
 長男が無邪気に答えた。
 レシピにはなくていいはずでも、一度入れようと思ったものがないとなると妙に悔しく、諦めがつかない。そこで目に入ったのが、昨日で賞味期限が切れて大さじ2杯ほどの量だけ残っていたヨーグルトだった。「あ、バターチキンカレーとかヨーグルト入れるじゃん!一石二鳥!」と捨てる予定であったはずのヨーグルトのカップをフライパンの上でひっくり返し、カレーの中に入れてぐるぐるかき回すと、白が少しずつ艶めく茶色に溶け込んで消えていった。酸っぱくないよね〜と味見をすると、ヨーグルトの功績かどうかは計り知れないがとにかく美味しいカレーが出来上がっていた。

 レタスをちぎったサラダを夫が用意してくれた。スープは結局、コンソメとハムを入れて味をつけた。次男の前には白いご飯にアンパンマンカレーをかけたものを並べる。夫がよそってくれたカレーは、いつも6:4でご飯が多め。2日前につくったゴーヤの佃煮をつけ合わせて、長男が切ってくれたゆで卵を乗せて、きょうのお夕飯が出来上がった。

 結局バター入れ忘れたなと思いながら食べたけど、カレーは美味しくできており、夫比率のご飯には少しだけルーが足りなくて1/4杯ほどのおかわりをした。
 みんなで行くはずだった選挙に別々でそれぞれ行くことになり、次男は微妙にお熱が続くし、そのくせ一日中家を走り回って遊んでいて、長男は選挙のつまらなさに怒って、せっかくもらった投票証明を気づくとぐちゃぐちゃのバラバラにされていた。家族みんなで購入したSHINEから激安服達が届き、ファッションショーごっこをした。牛乳を買い忘れ、カレーにバターを入れ忘れた1日だった。
 今日も楽しい1日でした。

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