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キレる息子

 幼稚園バスからの帰り道、眠さと疲れと暑さで機嫌が最悪の長男が「ぼく寝る!おんぶして!だっこして!」とベソをかいているが、次男を抱っこ紐に抱え幼稚園の荷物を手に持って、23キロのきみをおんぶして自宅までの坂道を登るポテンシャルなんてきみの母には備わっていない。

 一歩歩くたびに「眠いのに〜!寝たいのにい〜!」って地団駄を踏んでいる。帰ったらおやつがあるよ〜とか、お家涼しいからソファでゴロンして寝よ〜とか機嫌取りに色々言ってみるのだけど、本人も多分頭では「ママいまはおんぶ無理だ」ってわかっているのでなんとか自分の足で坂を登っては来てくれる。ただただ、ずっとキレている。
 とにかく寝たいんだ、今寝たいんだと繰り返す息子が、また一歩進んで地団駄を踏んだと思った時、大きな声で怒って言った。
「もう眠いの僕の中に染み込んじゃった!!!!」
 眠気が染み込む。聞いたことない言葉なのに、知ってる気がするその実感。スゴい。確かに。「眠気飛んだ」「眠気が覚めた」より、「眠いのが染み込んだ」って感じの時ってありますよね。

「染み込むのって悪いことなん?」
「悪いこと!だってぼく寝たかったのにもう眠れんやん!!」
「そうかあー」
 息子をこれ以上怒らせるわけにはいかないのでなんとか頬の口角が上がるのを我慢しながら坂を登った。
 家に着くまでの数分間で、息子は3回も眠いのを自分のどこかに染み込ませては怒っていた。

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