ロシアによる日本人63人BANの解説
大量の連絡に埋もれております。
アレが話題になり、予告もあったけど「なぜあの63人なのか」という話で、今後の日露外交だけでなく極東関連にも関わりそうなので、超簡単に、備忘録的にメモ書きをします。不必要な情報も含まれているので、状況によっては一部この記事を添削・加筆削除したり、記事全体を消すこともあるかもしれません。あくまで極東の話であって、ウラルの向こう側の話はクレムリン周辺を含めて良く分かりませんが、一応。
はじめに
ロシア側がどうやら感じていること
ロシア側が日本にしようとしていること
追加リストは出るのかどうか
はじめに
ペルソナノングラータ(Persona non grata;好ましからざる人物の追放)ではなく、イミグレーションバン(Immigration Ban;入国禁止令)です。
すでに入国して活動している人物の追放ではなく、その人物の入国を禁じるものです。
1-a. ここに岸田文雄さんや岸信夫さんが含まれていることを考えると、ロシアは当面日本を直接の外交を行う国と認めないという意思を示しました。
1-b. 岸田さん以下総理大臣および重要閣僚に並んでメディア関係者をBANしているのは、国際社会および日本語圏に対して、ロシア大統領プーチンさんに関する間違った情報を流したことへの強い不快感、抗議であると理解しなければなりません。
1-c. 読売・渡辺恒雄さんや産経新聞関係者が含まれているのは、象徴的な意味であって、これらの媒体をロシアは敵と見做しているという判断です。
1-d. 外交官の追放(こちらは本当のペルソナノングラータ)、元首・閣僚級のイミグレバンの後は、追加で順次、監視対象のバンリストが追加される可能性を示唆します。
1-e. 英語圏(イギリスなど)でロシアの浸透度合いが強い国では、このあとで何らかの実力行使もあり得ます。日本語圏社会でどうなるかはわかりません。少なくともこれから頑張って浸透工作をしますよというサインかもしれません。
2.ロシア側がどうやら感じていること
大きく分けて二つあります。
・日本に対してものすごく不愉快に思っていて、そのうちの一部は、ロシアが積極的に流したプロパガンダ的情報を、日本のメディアが政治と一体となってこれを打ち消してしまい、過去に行ってきた工作が台無しになった。
ロシアが日本語圏で作り上げてきた親ロシア派ネットワークがほぼ壊滅してしまい、ロシアが日本語圏で広めたかった主張がまったく浸透しておらず、おそらく何らかの責任問題に発展したので、イミグレバンのような強い方策に打って出ざるを得なくなった。
・ロシアとしてはウクライナ侵攻作戦を電撃的に終わらせるはずが長期化してしまったことで、極東管区の部隊をウクライナにまで展開しなければならなくなったため、防衛戦力的に手薄になっているという強い危機感がある。
本来であれば、インド同様アメリカおよびNATOと日本を分断したかったが、それができなかったので対日工作が失敗しつつあると判断して強い態度を示すことでテコ入れをしなければならなくなった。
3.ロシア側が日本にしようとしていること
今回のバンリストを見ればわかる通り、総理と重要閣僚およびマスコミ関係者であって、ロシア外交の基軸になっている重要な資源エネルギー系および貿易、金融に関わる企業や関係者は桜田謙悟さん(経済同友会代表幹事)以外、ひとりも入っていません。桜田さんもロシア経済とは直接の関係はありませんが、おそらく問題となったのは「こロシアの戦争ではなく『プーチンの戦争』だ」という桜田さんの講演が露訳されて危険人物と扱われただけと見られます。
これは、ロシアは「日本と資源外交・貿易を継続したい」と見込むのではなく、資源をレバレッジにアメリカと日本を分断したいと考えていると推察するのが自然です。
また、今回リストに入らなかった界隈に、かねて親ロシア的な立場を取っていた関係者が慎重に排除されています。他方、中村逸郎さん(筑波学院大教授)や袴田茂樹さん(青山学院大名誉教授)がバンリストに入っていますが、いずれも、ロシアに対する言動の質というよりは、ロシア大統領プーチンさんに対する非礼で間違った言説をした言論人という立ち位置でバンに至ったと見られます。
4.追加リストは出るのかどうか
政府関係者以外で今回のイミグレバンで特徴的なのは、ロシアそのものに対することよりも、大統領であるプーチンさんに対する、プーチンさんおよびその周辺が言われたくないこと、間違ったこと、名誉を棄損することを書いたり述べたりしたメディア関係者が象徴として挙げられていることです。
その意味では、ロシアは日本語圏を含む国際社会での「見え方」に非常に強い関心を払っていると言えます。
また、ロシアは隣国である日本の世界に対する影響力を大きく見積もっていて、極端に言えば、ウクライナでの苦戦を機に、日本がアメリカと組んで対露参戦するのではないかと怖れている可能性が強くあります。日本の対露感情をコントロールしなければならないとクレムリンが考えるぐらいには、日本への牽制という目くばせをしている点は留意したほうが良いと思います。
伝え聞く限り、ロシア側当局が関心を持っている日本人有識者の監視リストとかなり今回のバンリストが被っていると見られるので、事態の進展(ロシアにとっての悪化)があれば、追加でバンリストを増やすことは間違いなくあるものと見られます。