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メガソーラー発電と環境汚染と政策評価

 「だから言わんこっちゃない」という話がメガソーラー発電所開発周りで続発していて、これ関連の事態収拾依頼や相談が殺到しています。

 日経の記事は穏やかに書いてありますが、定点観測している関係先のソーラープロジェクトはどれもそれなりに修羅場のような状況になっていて、まあ大変です。ボク言いましたよね。

 もう何度も書いていることですが、熱海市で起きてしまったメガソーラーや研修所と建設残土を含む盛り土の件は、亡くなった方まで出てしまったので大変な刑事事件になっておりますけれども類似の事例はたくさんあります。熱海市はただ単に「最初に事故ったので分かっただけ」です。

 いま緊急の調査をしたいというのでご一緒している内陸某県の場合も、私ら投資家や事業者から見て問題のあるプロジェクトが長年見過ごされてきた面もあるのですが、環境事務所が怠慢だったというよりは、取り締まったり、強制的に何かを行政ができる法律が不備だよというのがあります。

 そもそも論として、日本は居住可能な平野が少なく海岸線が長く山がちという、比較的ソーラー発電所には向かない地形なわけですが、昔の宅地造成事業はその山を切り拓いて行っていました。ただ、これだといわゆる崖地ができて大雨に弱いうえ、大量の土砂をどこかで処分しなければならないので廃れていきました。

 他方、山を削って平地を作るのが難しければ谷を埋めればいいじゃないということで、谷に土砂を入れて埋めて平地を作るやり方が一般的になりました。ここで出てくるのが私たち産業廃棄物業界であります。要するに、処理済みの土壌をもってきて谷を埋めるほうが、処分費も安くあげられる分、山を削るより平地を作るには安く上げられます。

 ところが、谷というのは必ず理由があって谷なのです。何もないところがいきなり谷になることはなく、たいていにおいてそこは川が流れていたり、山や丘ほどはっきりしない地盤があるから時間をかけて谷ができるわけですよ。

 そこに、盛り土をしたらどうなるか。水が溜まるに決まってますね。そうならないように、排水の仕組みを作ったり、汚染された物質が水と一緒に流れ出ないような工夫をし、アセスメントを行う必要があるわけなんですが、これにはそれなりにおカネがかかります。場所によっては、敷き詰めたい太陽光パネルの総額の半分ぐらいは土壌・水質管理費になることもあります。

 この辺の事業はよく歯医者に例えられるんですが、患者は自分の口の中のことなのに歯医者が施術した中身を評価するのは噛んでみないと分からないのと同様、メガソーラー周りの土壌管理も盛り土を積んでみないと分からないところはたくさんあります。思ったより水が出ちゃったとか、埋めたらないはずの地下水が湧いたとか、想定していないところから白濁した排水が出てしまったとか、まあ問題はよく起きます。

 なかには、某県の隣県や自治体などでは、太陽光発電で地域起こしとかいうのをおっぱじめてしまっていて、お前のとこ首都圏の水源地よなという気もしなくはありません。そんなところにリサイクル家電の破砕物とかガラス材入り建廃混ぜた盛り土を積んでその上に形ばかりのアスファルトを敷き、大規模メガソーラーでござると威張るのは、いまはいいけど15年後か20年後ぐらいに面倒なことになって事業者は破綻したり逃げたりするし、自治体も背負いきれないぐらいの処分費の支払いを余儀なくされて鬼怒川みたいになるよ、とは何度も申して居るところです。

 あと、私もあまり知らなかったんですがメガソーラー事業者が地域誘致の際に自治体向け資料に「メガソーラーで雇用」とかいうキラーワードを入れているようですけれども、身の回りで言えば、ゼロとは言わないけれどたいした雇用は発生せず、仕事の内容も軽作業ばかりなのであまりそこは信用をしないほうがいいと思います。

 新たにメガソーラーを設置してもFIT価格が安くて利益が薄いため、過去に42円とかべらぼうなお金をくれるソーラープロジェクトのところに、別の地域で事業を開始した後発ソーラープロジェクトが「送電」し、そこから電気を卸すことで利益を確保しようとしたり、エネルギーの地産地消を謳う業者が不安定な電質の再エネ電源を蓄電池すら通さずそのまま地域農家の電源に流し込んでしまい揚水ポンプや農協の加工機械が正体不明の故障を起こしたりとか、まあなんというか無法地帯になっておるわけなんですよ。

 また、最近では耐用年数を大幅に下回る実稼働時間しかない太陽光パネルが様々な理由でぶっ壊れ、同等物としてのリサイクルもむつかしいということで大量に中間処理に流れてくるようになりました。ここ二か月ぐらいは「大雪が降り、その重みで太陽光パネルだけでなく支えている支柱そのものが折れた」とかいう大惨事も続発していて、日本ってよく考えたら関東平野以外はどこでも雪が降りうる地域だったということが判明します。知ってました、日本って雪が降るんですよ。

 そういうことなので、太陽光関連はソーラープロジェクトへの投資や再生エネルギー事業そのものに対する規制の最適化というか、必要な規制をしっかり作って、合理的な価格を付け、投資を促したり研究開発をリードできるような事業者を育てるべき時期に差し掛かったと思います。セクシーとか38%以上などと観念論をやっている場合ではなく、もう10年以上再生エネルギーの買い取りの仕組みもできたので、現場としては稼働に対する認証制度はきちんと立法化し、不良業者は排除しなければなりません。

 いずれ太陽光パネルは張り替えることや土石流・鉄砲水のような問題を起こすこともあり得る前提で自治体に事業者が事業補償金を積んだり保険に入ることを義務付け、ソーラーパネルは必ず使い終わったらリサイクル、最終処分までもっていくことをやったほうがいいでしょう。それが本来の再生エネルギー関連政策だと思うんですよね。

 そして、関係先で件数が増えてきたのは戸建て住宅に太陽光パネルを設置したものの、カタログスペックほどのパフォーマンスがでないまま放置され、しまいには特定空き家なのに漏電上等の危険なソーラーが屋根に乗っかってる物件とかいう満貫ツモな感じの代物も出てきています。

 家庭向けの太陽光パネル設置に補助金を出している都府県や自治体がありますが、あれは環境に優しいどころか環境負荷の大きい無駄な施策なので、一刻も早く取りやめるべきです。そんなことより脱アルミサッシなど家屋の断熱に予算を振ったほうがエネルギー政策的には正しいはずなんですけどね。

 というわけで、メガソーラープロジェクトは環境破壊だとまでは言いませんが、せめて適正な規制を早期に施行し、保証金積み立てや保険を義務付け、自治体ご担当部局や都道府県環境事務所が必要なときにいつでも立ち入りしたり、事業差し止めしたり、場合によってはブタ箱に入れられるような手当をしていっていただきたいと心から願う次第です。

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山本一郎(やまもといちろう)
神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント