40代の子供が知っておくべき配偶者居住権のメリットと手続き
東京都江戸川区船堀、相続・企業法務専門の司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
はじめに
前回は「配偶者居住権」の仕組みや手続き方法についてご紹介しました。
今回はその概要と具体的なメリットについてさらに深掘りします。
特に、60~70歳の親を持つ40歳代の子供世代に向けて、この配偶者居住権がどのように役立つかをわかりやすく解説していきます。
配偶者居住権とは?
まず、配偶者居住権とは、配偶者が亡くなった際に、残された配偶者がそのまま住み続けられる権利のことです。
たとえば、お父様が亡くなり、残されたお母様が引き続き家に住むための権利です。
通常、相続では不動産をどう分けるかが課題になります。
不動産は価値が高く、他の遺産(預貯金など)と一緒に公平に分けるのは難しいケースが多いです。
配偶者居住権は、家に住み続けたい配偶者を守りつつ、他の相続人(お子様)とのバランスを取るために設けられた制度です。
配偶者居住権が誕生した背景
配偶者居住権が導入された背景には、高齢の配偶者の生活を守るという社会的なニーズがありました。
日本では、特に年齢を重ねた配偶者が自宅に住み続けたいという希望が強い傾向があります。
たとえば、相続人が配偶者と子供だけの場合、家という資産が主な相続財産になってしまうと、配偶者が家を手に入れるために他の財産を放棄する必要が出てくる可能性があります。
これでは、生活費が不足してしまうリスクがあります。
配偶者居住権は、こうした不安を解消し、安心して住み続けるための法的な保護を提供します。
配偶者居住権のメリット
では、配偶者居住権にはどのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
1. 配偶者が安心して住み続けられる
配偶者居住権を設定することで、残された配偶者が家に住み続けることが保証されます。
仮に相続人である子供が不動産を取得したとしても、配偶者はその家から退去を求められる心配がなく、生涯にわたって住み続けることができます。
これは特に、高齢の親が家を「生活の基盤」としている場合に大きなメリットです。
配偶者居住権を設定することで、親世代が住み慣れた環境で暮らし続けることが可能となり、安心感を提供します。
2.他の相続人とのバランスを取りやすい
配偶者居住権は、不動産の所有権とは別に設定される権利です。
これにより、配偶者は居住権を持ちながら、相続人である子供に不動産の所有権を分配することが可能です。
つまり、配偶者は住む場所を確保しつつ、子供たちが不動産を相続できるため、遺産分割においてバランスを取ることができます。
例えば、お母様が住み続ける家の所有権はお子様に相続させ、その代わりにお母様が居住権を持つことで、遺産の公平な分配が可能になります。
これにより、配偶者と子供たちが納得できる相続が実現します。
3.生活費の確保がしやすくなる
配偶者居住権を設定することで、配偶者は不動産の所有権を持たないため、他の財産を手にする機会が増えます。
その結果、生活費を確保しやすくなり、安心して老後を過ごせるようになります。
これにより、配偶者は自宅に住み続けながら、他の相続財産を活用して生活を維持することができます。
たとえば、預貯金や株式など、相続財産の一部を配偶者が受け取り、家に住み続けることで、より安定した生活基盤を築くことができるのです。
配偶者居住権の利用方法と手続き
配偶者居住権を利用するためには、遺産分割協議で配偶者居住権を設定することが基本です。
また、遺言書であらかじめ配偶者居住権を設定しておくことも可能です。
手続きとしては、相続人全員の同意が必要ですが、一度設定されれば、配偶者の居住権は法律で守られます。
また、登記することで、第三者に対しても配偶者の居住権を主張できるようになります。
まとめ
今回は、「配偶者居住権の概要とメリット」について紹介しました。
配偶者居住権は、親世代が自宅に安心して住み続けられる権利を守るために大きな役割を果たします。
遺産分割の場面でも、公平で円満な相続を実現するために非常に有効な手段です。
配偶者の生活を守りながら、子供たちにも財産を分配するというバランスを保つために、配偶者居住権を検討する価値は大いにあります。
この内容が少しでも参考になれば幸いです。
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