手放したい相続土地をどうする?「相続土地国庫帰属制度」で解決!
東京都江戸川区船堀、相続・企業法務専門の司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
はじめに
相続で受け継いだ山林や田舎の土地が思わぬ負担になっている方も多いかと思います。
管理や処分が難しい土地をお持ちの方には、「相続土地国庫帰属制度」を検討する価値があるかもしれません。
この制度は、管理が困難な土地を国に引き取ってもらうことで、相続人の負担を減らし、土地の有効活用を促す目的があります。
今回は、特に山林や価値が低い土地を持つ方に向けて、この制度のメリットや活用を検討すべきポイントについてお話しします。
土地を持つことのデメリット
田舎にある土地、とくに山林などの土地は、必ずしもプラスの資産とは限りません。次のようなデメリットがあります
・維持・管理費の負担
山林や原野の管理には意外とコストがかかります。
雑草や木の伐採などの手入れが必要な場合、年間の管理費がかさむ可能性があり、放置していると近隣の農地や住居に迷惑がかかるケースもあります。
・固定資産税の負担
活用していない土地にも毎年固定資産税がかかります。
特に利用価値がない場合、固定資産税の支払いが負担になることが多いです。
・災害リスク
山林や傾斜地のある土地の場合、自然災害による崩壊リスクがあります。
自分が住んでいなくても、災害で近隣に被害が出た際には責任が問われる場合もあり、思わぬトラブルにつながることがあります。
・売却が難しい
地域によっては、不動産業者に相談しても買い手が見つからず、価格がつかないケースも多々あります。
このような土地は売却が難しく、持ち続けるしかない状態になってしまいます。
「相続土地国庫帰属制度」とは?
相続土地国庫帰属制度は、このように管理や売却が困難な土地を国に引き取ってもらうための制度です。
国が土地を引き取るためには、いくつかの条件がありますが、制度を利用できれば土地の管理費や税金の負担を解消できるメリットがあります。
・対象となる土地
建物がない土地や、担保権が設定されていない土地が対象となります。
たとえば、田舎の山林や原野、遊休農地が該当する可能性があります。
・要件
土壌汚染や崩壊の危険がないことが求められるため、危険な崖地や使用不可能な汚染土壌などは対象外です。
この制度を利用する際のプロセス
「相続土地国庫帰属制度」を活用するには、次のようなプロセスを経ることになります:
・必要書類の準備
申請には、土地の位置や範囲を示す書類、隣接地との境界点を明確にした写真、土地の形状写真、印鑑証明書などが必要です。
・審査手数料の支払い
申請には審査手数料が必要です。土地1筆あたり14,000円がかかり、10筆であれば14万円の審査手数料となります。
手数料は、申請が承認されない場合も返金されないので注意が必要です。
・法務局での申請受付
土地が所在する都道府県の法務局に申請します。
承認が下りれば、相続人の手を離れ、国がその土地を管理することになります。
利用者が増えつつある?最近の統計をチェック
法務省によると、すでに1,761件の申請がされています。
令和6年2月のデータなので、現状は更に増えていると思われます。
このうち、承認が下りて国庫に帰属した土地は約150件とまだ少ない状況です。
しかし、地域や土地の形態によっては利用できる可能性があり、特に田畑や山林の申請が増えています。
★誰が利用すべきか?具体的なケース
以下のような場合には「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討する価値があります
・田舎にある利用価値の低い山林や畑がある
都会から遠く、買い手がつきにくい土地や、地元の人も受け取らない場合には、この制度が大きな助けになるでしょう。
相続したが、管理が困難 相続人が高齢で現地管理が難しい、あるいは家族が近隣に住んでいない場合などです。
・維持費や固定資産税の負担が大きい
使っていない土地のために毎年の固定資産税を払うのが難しい方には、この制度での手放しが合理的です。
★制度の注意点
この制度にはいくつかのハードルがあります。以下の点には注意が必要です
・申請が認められないことがある
先述の通り、建物や担保権がある土地、土壌汚染や崩壊のリスクがある土地は対象外です。
申請時にはこうした条件をクリアしているか確認が必要です。
・審査手数料が返金されない
申請が不承認の場合や、途中で取り下げた場合でも審査手数料は返還されないため、費用面のリスクを考慮する必要があります。
・時間がかかる
承認までに数か月かかることが一般的です。すぐに手放したいと考えている方には、少々長期的な手続きになるかもしれません。
まとめ:相続土地国庫帰属制度を検討すべき人
相続や遺贈により「価値が低く管理が難しい土地」を持っている方には、相続土地国庫帰属制度が大いに役立つでしょう。
維持費や税金の負担に悩むのであれば、まず法務省の最新情報を確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
この内容が少しでも参考になれば幸いです。
詳細やお問い合わせは、当事務所のウェブサイトまでどうぞ。