相続が始まったら、まず何をする?預貯金の払い戻し手続きの新制度を紹介
東京都江戸川区船堀、相続・企業法務専門の司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(@kirigayajun)です。
はじめに
今回は、相続発生後に預貯金口座の一部払い戻しが可能になった最近の法改正についてお話しします。
これまで、相続が発生すると遺産分割協議が完了するまで預貯金の引き出しができなかったため、生活費や葬儀費用がすぐに必要な場合に困ることがありました。
新しい法改正により、この問題が解決され、相続手続きを初めて行う方でもスムーズに進められるようになりました。
法改正の背景
これまでの制度では、相続が発生すると、遺産分割協議が完了しない限り預貯金を引き出すことが難しく、遺産相続に時間がかかる場合、急な費用に対応できないことが課題でした。
この問題を解消するため、2021年に相続発生後に一部の預貯金を払い戻せる制度が導入されました。
法改正の内容:預貯金の一部払い戻し制度
相続発生後に相続人が、遺産分割協議が終わる前でも、一定の条件下で預貯金の一部を引き出すことができるようになりました。
具体的なポイントは以下の通りです。
・払い戻し金額の上限
各金融機関ごとに150万円が上限です。
複数の金融機関に預金がある場合、それぞれで150万円まで引き出すことができます。
・必要書類
相続人が金融機関に払い戻しを請求する際、以下の書類が必要です:
被相続人の戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本
相続人が相続する権利を証明する書類(遺言書がある場合はそのコピー、遺産分割協議書など)
相続人本人の身分証明書
・対象となる用途
払い戻しが認められる主な用途は、葬儀費用、生活費、その他急な出費に対応するためのものであり、相続人の生活を維持するためのものです。
実際に利用する際の流れ
具体的な流れを見ていきましょう。
・相続の開始
まず、被相続人(故人)が亡くなり、相続が開始されます。
相続人は、故人がどの銀行や金融機関に預貯金を持っているかを確認します。
・金融機関への連絡
預貯金の払い戻しを希望する金融機関に連絡し、相続手続きが開始される旨を伝えます。
・書類の準備
必要書類を用意し、金融機関に提出します。
特に、故人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本は、複数の金融機関で払い戻しを請求する場合に必要となるため、事前に取得しておくと手続きがスムーズです。
金融機関によって手続きが異なることもありますので、事前に確認することをおすすめします。
金融機関に予約していっても、書類の不備で取り扱いできないことになると二度手間になってしまいます。
・払い戻しの実行
必要書類がそろった段階で、金融機関から預貯金の一部が払い戻されます。
支払いのタイミングや手続きにかかる時間は金融機関によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
相続放棄や限定承認との関係
相続が発生した場合、相続人は、財産だけでなく負債も引き継ぐ可能性があります。
このため、相続手続きの中で「相続放棄」や「限定承認」の選択肢も考慮する必要があります。
・相続放棄
相続放棄をすると、相続人は故人の財産も負債も一切引き継がないことになります。
相続放棄をした場合、預貯金の払い戻しもできなくなるため、相続放棄をするかどうかは慎重に判断する必要があります。
・限定承認
限定承認は、相続する財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ制度です。
この場合、預貯金の払い戻しが可能ですが、財産と負債を比較して慎重に手続きを進めることが求められます。
実際の事例:司法書士の体験談
私の事務所でも、相続手続きで預貯金の払い戻しに困っているお客様からご相談をいただくことが多くあります。
例えば、故人が複数の銀行口座を持っており、その一部にまとまった預貯金が残っていたため、葬儀費用や生活費に困った方がいらっしゃいました。
この場合、遺産分割協議が終わる前でも、法改正により150万円までの払い戻しが可能となったため、速やかに手続きを進めることができました。
お客様も「相続手続きがすぐに終わるわけではないので、必要な資金がすぐに引き出せる制度があるのは助かる」とおっしゃっていました。
まとめ
今回の法改正により、相続が発生した際に遺産分割協議が終わる前でも、預貯金の一部を払い戻すことができるようになりました。
この制度をうまく活用することで、相続手続きがスムーズに進み、急な費用にも対応しやすくなります。
相続手続きが初めての方でも、この制度を知っておくことで、安心して手続きを進めることができるでしょう。
相続手続きに関する不明点やご相談があれば、ぜひ司法書士にお任せください。
この内容が少しでも参考になれば幸いです。
詳細やお問い合わせは、当事務所のウェブサイトまでどうぞ。