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イギリス出張 Part1: Raspberry Pi 財団の訪問と、Global Partner Meetup への参加
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先日のサウジアラビア出張に引き続き、11月26日からイギリスに来ている。
今回の出張は、Raspberry Pi 財団が主催する Global Clubs Partner Meetup と Clubs Conference に参加するため。CoderDojo Japan の理事として呼んでいただいた。2013年から CoderDojo の活動に参画しはじめて10年以上。やっと海外に行く機会が巡ってきた。いつか行きたいと思っていたのでとてもありがたい。
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初日は時間があったのでロンドンを観光。有名どころをいくつか回ってきたが、それはまた別の記事で。今回は、Raspberry Pi 財団への訪問と、Global Partner Meetup について。
Global Partner Meetup とは
ご存じの方も多いとは思うが、これまでそれぞれ独立に運営されていた CoderDojo と Code Club の公式サイトが、Raspberry Pi 財団が推進する世界的な子ども向けのプログラミング教育コミュニティのWebサイトとして1本化されることになった。とは言ってもWebサイトの話で、CoderDojo ブランドがなくなったわけではないし、実際に同Webサイトの National Partners を見れば世界各国の CoderDojo 公式法人が名を連ねている。また日本では2024年11月末現在、204箇所以上の CoderDojo が活動をしているし、世界でも CoderDojo ブランドを使い続けていく国が多くある。
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今回のミートアップは、Raspberry Pi Foundation のグローバルパートナーの CoderDojo や Code Club が集まって、クラブの運営やこれからについて議論する会議だった。場所はイギリスのケンブリッジにある財団のオフィス。またとないチャンスをいただいたので、意気揚々と参加してきた。
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ミートアップのアジェンダ
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ミートアップは9:00から17:00までみっちり行われた。もちろんオールイングリッシュのディスカッションが中心。
RPF updates
まずは Raspberry Pi Foundation の CEO である Philip Colligan から、これまでの財団の活動とこれからについて。財団の活動は来年で10周年らしい。
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このセッションはいわゆるご挨拶程度のはずなんだけど、はじめから AI について白熱した議論が交わされていた。やはり AI 教育をどうするかはグローバルイシューなのだ。そのあたりは先週のサウジ出張でも感じたし、サウジから帰ってきた翌日にあった Asia Pacific Computer Education Conference でも重要なトピックとして多岐にわたる議論が行われていたことからもわかる。
Raspberry Pi 財団は AI を学ぶためのオンライン教材を提供している。まだ日本語にはなっていないけど、英語でも十分わかるくらいの内容だと思う。
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ここ2週間ほどグローバルな活動に関わりまくっているからこその感想かもしれないが、やはり重要なことは "Think Globally, Act Locally" なのだと思う。ただし、Think Globally とは、世界的なトレンドをキャッチアップして乗ればいいということではない。グローバルな考え方を吸収しつつ、どうそれぞれの国ごとにアジャストさせていくかを考える必要がある。例えば、日本の CoderDojo コミュニティはかなり独自進化を遂げているし、世界の中でもなかなかに存在感のある規模で活動をしている。これは、世界のトレンドや動きをキャッチアップしつつ、自分たちで考えてそれぞれの活動をしているからこそなのだと思う。中央の考え通りに CoderDojo を運営しようなんてだれも考えていない(というか、これは財団も考えていない)からこそ、Think Globally, Act Locally が実践できているんだろうなと、Philip の話を聞きながら考えていた。
ここで全体のアイスブレイクタイム。さすが教育系の活動をみんなしているだけあって、アイスブレイクへの順応が早い。同じ色の服を来ている人、手を重ねたときにどちらの親指が上に来るか、などなど、共通項でグループをシャッフルしていき、簡単に自己紹介していく。この活動があったから僕はみんなの輪の中に入れた気がする。コミュニケーションのバリアが一気に取り払われた。僕のアイスはちゃんとブレイクされたのだった。
Partner Intro Session: みんなの自己紹介
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続いて、同じテーブルのみんなと自己紹介。自分たちのクラブがどのようなことをやっているかをディスカッションする。同じテーブルには、南アフリカ・ギリシャ・チェコ・ドイツ・ベトナムの人たちが。自分からは、日本の状況を拙いながらもご説明。海外に人たちに一番ウケがいいのは、GIGAスクール構想の話。日本ではすべての小・中学校で1人1台コンピュータの環境が整備されているというと、みんな驚く。これは以前行ったベトナムやインドネシアでもウケが良かった。だからこそ、日本の CoderDojo では(僕の体感ではあるが)より高度なことを求めてくる子どもたちが増えてきているという話をしたり、Covid-19 の影響を乗り越えて Dojo 数も200を超えているという話、DojoCon Japan や DecaDojo などのコミュニティ主催のイベントが定期的に行われているよ、みたいな話をしていた。Coolest Project はやらないの?という質問があったけど、DecaDojo がその代替として開催されてたり、DojoCon Japan でも作品紹介コーナーがあったりするよと返事をした。
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個人的に一番興味深かったのは、多くの国で図書館(library)を会場にしていたことだ。日本では、図書館は静かにする場所としての認識が強いので、あまり例を聞かない。でも、諸外国では図書館のパブリックスペースを活用すれば子どもたちの学習リソースもたくさんあるからいいよね、ということらしい。チェコから来ていた人は実際に図書館で働いているそうだ。
また、ベトナムや南アフリカの CoderDojo では、インターネットにアクセスできない場所がまだまだあるので、オフラインベースで開催するための工夫をどうすればいいかが議論されていたのも印象的だ。僕が CoderDojo を始めた当初、2013年くらいには同じような問題に直面していたが、だんだんと公共の場でもフリー Wi-Fi が整備されているし、今どきオフラインで困るなんてことはもうなくなったように思う。でも、当たり前ではあるが世界ではそういった環境がないところのほうが多い。USBに教材いれておこうとか、オフラインエディタ大事だよねとか、そういった知見をシェアしあった。
でも、一方で AI に関する学習をインターネットなしでやることはかなり難しいという話題もあった。ローカルで LLM を動かすことはできなくはないけど、環境構築がかなり大変だよねとか、アップデートし続けるのも手間だよねとか、あまり考えてこなかったこととたくさん出会えた気がする。
(ちなみにこの議論は、そのための Raspberry Pi だよね、というところで落ち着いた笑)
Meet and Greet with RPF staff
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財団のスタッフたちと仲良くなろうのコーナー。これがめちゃくちゃおもしろくて、全員で向かい合って並んで、目の前の人と4分ずつ話してローテーションしていくという、アイドルの握手会さながらのアクティビティだった。トークテーマもおもしろくて、何が楽しくて Club の活動やってるの?とか、あなたの人生の目標は?とか、そんな話をお互いにしていく。半強制的にコミュニケーションを取る機会が何度も何度も設けられていたのがありがたい。翻訳担当の人やWeb開発している人、オーストラリアの Code Club のマネージャーやってる人と話しをした。いろんなこと話せて楽しかった。
Lunch Time
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午前のセッションが終わり、みんなでランチタイム。そこもいろいろな人と話をするチャンスだった。僕はベルギーの CoderDojo コミュニティの人たちといっしょに食べてた。
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ベルギーの人たちとは、Code Club にブランド変わったけど、CoderDojo のまま行くの?と聞いたら、もちろん!と返ってきた。いままでの資産が大きすぎて今更変えられないのと、CoderDojo に愛着があるとのこと。そうだよね、うちも同じだよ!と伝えたら、そりゃ Dojo という名前自体日本がルーツだもんねと言われた。たしかにそうかもしれない。
Moonhack workshop
午後のセッションは、オーストラリアの Code Club チームが運営している Moonhack というプロジェクトを実際にやってみようというワークショップ。
Moonhackは、世界中の子どもたちが2週間のコーディングに参加するための、無料の国際イベントです!8歳から15歳までの子どもに適しており、どこにいても簡単で実践的にコーディングを体験できる無料のプログラムです。過去8年間で、19万人以上の子どもたちがMoonhackプロジェクトに取り組みました。Moonhackは、Code Club Australiaによって企画・運営されています。Code Clubは全国規模のボランティアによるコーディングクラブのネットワークで、#getkidscoding(子どもたちにコーディングを!)を目指しています。私たちは、すべての子どもにスキル、自信、そして世界を変える機会を提供することを目標としたチャリティ団体です。
テーマは、世界中の国について紹介する Scratch プロジェクトのアイデア。まずは1人で考えて、次にパートナーと考えて、さらに他のグループと考えて、最終的に1つのアイデアを練り上げていくという手法でやっていく。
僕は、回転寿司のレーンの上にいろいろな国の文化的なキャラクターや観光地などが乗って出てくるようなものはどうかと提案したら、なぜかそれが採用され、最終的には宇宙と絡めて、Conveyor belt sushi in space という不思議なアイデアが出来上がった。
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Silent Discussion
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最後のセッションは、サイレント・ディスカッション。あるテーマが書かれた模造紙が机においてあって、みんながそれについてどう思うかを書き込んでいく。トークではなく書き言葉で表現する。これはかなり画期的な方法だなと思った。内省を促しつつ、言葉にまとめて表現をして、関連するアイデアがあればどんどん書き足していくスタイル。
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僕は特に翻訳に関することについて意見を書いた。これは度々問題に上がることだけど、海外の組織が作った教材をただ翻訳するだけでは、日本の子どもたちはあまり取り組もうとしない。なぜなら、デザインがあまりにも日本の文化的背景とそぐわないからである。translation から localization へどのように移っていけるか、これはかなり重要な問題だと思う。
とはいえ、すべてボランティアベースでやっている活動なので、localization まで手を広げるのはかなり難しい。それも含めてどのようなことが可能なのか、財団の人たちとも議論した。
例えば、翻訳ファイルだけじゃなくて大本の素材データ(aiファイルなど)を提供してもらうのがいいのか、あるいはよりグローバルで適用可能なキャラクターやデザインを作ったほうがいいのか(そもそもそれは可能なのか?)など、いろいろなアイデアが出てきた。そう簡単に答えがでる問題ではないが、表明できたことは良かったと思う。
また、あなたの組織の成功度合いはどう測定するか、みたいな質問にも意見を書いた。これは CoderDojo Japan の中でも度々話題になるが、わたしたちは CoderDojo の数を KPI の指標においていない。なぜなら、各 Dojo はそれぞれの意志によって立ち上がるものであり、Japan や Foundation が無理やり作ったとしても、他の Dojo と熱量にどうしても差が出てきて結局続かなくなってしまうからだ。CoderDojo は熱量が伝播することで広がっていくコミュニティだと僕は思っている。それより、パートナー法人を増やしたり、各地域の CoderDojo の活動がやりやすくなるような支援策を考えたほうがいいよね、というスタンスだ。これも結構共感してくれる人が多かった。
最後に wrap up があってミートアップは無事に終了。集合写真などはもらったらあとで追記しておこう。
財団オフィスの様子
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こういうオフィスがあるのはいいよなぁ。みんなが集まれる場の重要性は今回の出張でひしひしと感じた。
懇親会の様子
ミートアップ終了後に懇親会。みんなビールの消費量が半端ない。
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打ち上げでは、ギリシャの人と日本のカルチャーについてずっと喋ってた。娘さんが日本のことが大好きで、日本人と喋りたいってずっと言ってたから写真送ってもいいか?と言われて一枚パシャリ。
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日本を代表するのが俺でいいのかということは一旦おいておいて、いろいろな話ができたのはよかった。
日本とイギリスの時差は9時間。イギリスの20時は日本の朝5時で、めちゃくちゃ眠い。それに加えて1日英語脳を使いまくってたのでとても疲れた。打ち上げは中抜けして早退。それにしても楽しい1日だった。
総括
今回のミートアップは、Code Club と CoderDojo が一緒になってから初めての開催。とにかくみんなでつながって、グローバルネットワークを再構築していこうという趣旨だった。
日本で起こっている課題は世界で起こっているし、世界で起こっている課題は日本もいずれ直面する可能性のある課題。その中で、お互いの知見を共有しながらともに解決していこうとする姿勢はとても大切だと思う。そして、言語の壁はあれどこの界隈の人たちは基本的にオープンで優しい。こういったミートアップやカンファレンスには日本の人たちもどんどん参加していったほうがいい。実際に参加することに意味がある。改めて、今回参加できたのは幸運だったなぁと思うし、自分自身もコミットし続けたいと思う。
さて、次回は Clubs Conference 編を書こうと思うのでお楽しみに!
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