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紅の歴史 in 紅ミュージアム
こんにちは。
今年最後の高尚の日は 南青山にある紅ミュージアムに行ってきました。
コスメブランドのKISS MEでお馴染みの伊勢半さんによる資料館です。
無料とは思えない充実した内容でした。
伊勢半本店は、京都から伝わった紅に負けない製品を作ろうと奮起した初代から続き、江戸時代の創業以来、紅の製法を守ってきた老舗の紅屋。
今では日本で最後の1軒となった誇り高き 紅屋さんです。
素敵な展示内容だったので2回に分けて書きます。
紅の歴史に触れる
ベニバナって黄色いんだ!
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という驚きから始まりました。
ベニバナなのにたんぽぽのようなお色の花でした。
トゲトゲしていて強そう。
紅 とは、紅花の花弁から採取する希少な赤色色素のこと。
古くから占領、化粧料(口紅・頬紅)、食品着色料などに用いられてきました。
良質な紅は、その証として玉虫色に輝きを放ちます。
ベニバナに含まれる赤色色素を出すために様々な工程(発酵・抽出)をとるわけです。
アルカリ性→酸性 と化学反応を利用して作られる製法にびっくりです。
最初に発明した人は一体何を考えてベニバナをアルカリ性にしようと思ったんでしょう。
ベニバナは、99%は黄色色素で構成されていて、1%の赤色色素を絞って濃縮していってようやく手に入る天然色素の紅。
玉虫色に光る原理はいまだに解明されていないそうです。
これまた神様の所業ですね。不思議〜。
伊勢半さんの代表商品の「小町紅」を作るのに必要なベニバナは1,000輪!
昔からのベニバナの産地・山形県で作られるベニバナをふんだんに使っていて、今でも山形県の産地ではベニバナの開花時期には黄色いお花畑が見られるんだそうです。
行ってみたいなあ!
紅作りの製法の匙加減で「玉虫色」が濁ったり、色がオレンジ色になったり、ちょっとしたバランスで変わってしまうだとか。匙加減をみる職人さんの技術に感服です。
日本酒とかでも、菌の微妙なバランスで発酵するそうで、どんな産業でも職人さんは本当にすごいです。
展示されていた玉虫色の輝きはiPhoneの技術を持ってしても写真に収められるものではなかったので、ぜひ本物を見ていただきたいです。
お花の名前は、紅が開発されてから改名されたのでしょうか。
でなかったら、どう見ても キバナ と名付けたくなるお花です。
厄除けの紅色 アヤツコ
古来、「赤」という色には災厄を退ける、魔除けの効力があると信じられ、時代・地域を問わず赤いものを身につける習わしを見出すことができる。
子どもの健やかな成長を祈る気持ちで紅を使う。
素敵…
医療環境が整っていない時代は、おまじないや神様に頼るしかなかったと考えると祈らずにはいられない気持ちがわかります。
「7つまでは神の子」
七五三をお祝いする風習など、子どもの成長は本当に奇跡のように家族でお祝いしていたのでしょう。
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初宮参り アヤツコ
生後30日頃、新生児を伴い産土神を参詣し、氏子と認めてもらい加護を受ける。
参詣の道中は神の庇護下にないため、子の額に紅や墨で「犬」「大」「小」などの文字を書き、魔除けとした。
この風習を アヤツコ という
アヤツコ!
祖母の写真を整理しているときに、額に 大 と朱色で描かれた赤ちゃんの写真が出てきて、「これはなんだろう?」と思っていたところ、思わぬ場面で正解に出会いました。あれはアヤツコだったんだ!
祖母の着物から出てきた、赤色の長襦袢ももしかしたらそういう意味が込められていたのかもしれません。赤色、いい色ですね。
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江戸時代には、死にいたる疫病として恐れられた疱瘡(天然痘)に対し、東西貴賤の別なく「赤の習俗」が存在した。
羅患者・看護者の衣類をはじめ、寝具・調度品・見舞い品に至るまで赤色のものを揃えるという、赤づくめの対処法を持って疱瘡平癒を願ったのである。
天然痘…
天然痘が日本で最後の発生は1974年。まだ根絶から1世紀も経たない病気です。
会津地方の赤べこも天然痘にゆかりのある玩具だったと思います。
赤色で平癒を祈る、子どもの健康を祈る。
とても素敵な色だと思いました。
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2024年は本厄を迎えます。
厄除けに小町紅を買おうか悩み中です。
明治以降のお化粧品変遷
文明開花以降、日本にやってきた西洋の美意識で、日本に昔からあった伝統的なお化粧は衰退し、徐々に美意識が変化していきます。
一気に「西洋素敵!」となったわけでなく、変化は緩やかなものだったみたいですね。
ガラス瓶、ツボ、いろんな形のお化粧品が並んでいる姿は、もう可愛くて可愛くて…。
国産ガラス瓶が作られるようになってから、日本のお化粧品の歴史も大きく変わったようです。外国製のお化粧品が多く並んでいるかと思うと、徐々に日本メーカーによるお化粧品も登場します。
そして、聞き覚えのある資生堂さんの容器も登場します。
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ガラスってことは割れちゃうので扱いは要注意だったでしょうね。
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醤油みたい
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ベニバナから作られる口紅 小町紅
そんな伊勢半さんの商品、玉虫色に輝く口紅も販売されています。
その名も小町紅
とっても可愛いのですが、その製法から納得のお値段のため即決はできず。
来年の本厄で紅に守ってもらう必要に迫られたら再度購入に来ようと思います。
めちゃんこ可愛かった…。
お祝い事で贈り物にするにもいいですね。
慶びを祝う気持ちと、健やかに幸福であるようにと願う気持ちを込めて。
代わりに、メモ帳とべにばな茶を買いました。
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やっぱり黄色いのかな。
展示詳細
紅ミュージアム
10:00-17:00(休館日あり)
入館料:無料
表参道から徒歩13分
無料の資料館とは思えないほどのボリュームでした。
あまりに興味深くて1フロアですが、たっぷりと滞在しました。
参加型のプログラムもあるようなので、また行きたいです!
精進いたします。
切り絵作家 ひら子