八月の鯨
1987年のアメリカ映画。
監督はリンゼイ・アンダーソン
私にこの映画を勧めてくれた人は50歳で「今のあなたが観たら少し退屈かも。でも歳をとって改めて観るとまた違った感想が湧くと思う。それでも感想を聞かせてくれると嬉しいわ」と言ってくれました。
私は観る前にWikipediaで軽く情報を眺めます。
確かに退屈そう〜、高齢者しか出てないの?と正直思いました。
でもお世話になった人がわざわざ私の好きそうな映画を勧めてくれたのだ。
期待には応えないと!と思い再生しました。
舞台は海に面した美しい景色に木造建てのお家。
そこから若い女性が岬へと駆けて行きます。
セピア色の映しかたから始まり、これは過去の想い出だなと感じました。
どうやら夏の間は鯨が現れるようです。
だから8月の鯨、なのかと。
若い女性は三人、姉セーラ、妹のリビー、幼なじみのティシャの三人は楽しそうに一つの双眼鏡を回しっこしながら入り江に現れた鯨を眺めていました。
それから50年ほど経ち、姉妹は変わらずあの家で二人慎ましく暮らしていました。
セーラはせかせかと家事や人形を縫ったり活発です。
リビーは拙い歩き方で視線が合っておらず辺りの物を手で触りながら起床します、病気で目が見えないのです。
なのでリビーの身の回りは全てセーラが見てあげます。着替えは出来るそうですが、リビーの長い白髪をブラシで梳かしたり食事の準備はセーラがこなします。
ある日幼なじみのティシャが家に訪ねてきました。
少し肥満気味で足を悪くし杖をついていますが、化粧もして身なりもちゃんとしています。
お喋りでお節介なところもありますが、リビーに付きっきりのセーラを心配しています。
リビーにはアンナという娘がいるようですが、その娘に任せればいいと言いますが、セーラはこのままで大丈夫、心配事はないわと言います。
私もその方が良いのではと思いました。二人とも高齢だし、もしセーラが亡くなったら遺されたリビーが可哀想だと、でも断るのは姉妹の絆というものかと思いました。
セーラとティシャがお茶を楽しんでいると、床下から大きな音が響きました。
カバードポーチで椅子に座っていたリビーが
あんなに騒がしい人はいないわと嫌味を放ちます。
床下の音の正体は修理工のジョシュアという男性。
まさか勝手に修理に来てるのかと思いました。
セーラはおじさんにもお茶を勧めます。
部屋にはセーラ、ティシャ、ジョシュア。
ジョシュアは大きな窓を取り付けないかと、セーラに勧めますが外で聴いていたリビーは断ります。
今なら角材も安いのにと言いジョシュアは帰ります。
リビーも部屋に入り高齢者特有のブラックジョークで盛り上がります。
この辺は言われた通り渇いた笑いしかでませんでした。高齢者は病気自慢とかしがちですよね。
こういう時、どういう顔をしたらいいのかわからないの…。
…笑えばいいと思うよ。
笑えるかーっ!
そんなガールズトークで盛り上がる中、マラノフという紳士が海釣りで獲った魚をセーラに渡しに来ます。
マラノフさんは奥さんのヒルダさんを最近亡くしてしまいます。ヒルダさんのお家に一緒に住んでいたのか、次の住処を探してる最中です。
四人でお茶を楽しむ中、リビーはマラノフさんには少し冷たいです。
お茶を楽しんだ後、ティシャとマラノフさんは帰って行きます。
マラノフさんは冷えると言うティシャにジャケットを羽織らせて、お世辞にも美人とは言えないティシャに心から美しいと言います。
妙だな…この人、本当に貴族の紳士なんじゃ…
そして海釣りは道楽なのでは…?とどこぞの少年探偵のような考えを巡らせました。
その後、セーラとリビーは散歩に出かけます。
セーラの旦那さんは第一次世界大戦で亡くなり、まだ目も見えていたリビー夫婦が15年面倒を見ていたようです。
それぞれ二人は亡くなった旦那さんを思い、リビーはチェストから小箱を取り出し、その中に古い手紙がしまってありました。
その折れ目のついた古い手紙の中には旦那さんの髪の毛が入ってありました。
リビーは髪の毛を愛おしそうに顔に寄せます。
マラノフさんを夕食に招待したセーラはおめかしをして、テキパキと食事の準備を始めます。
リビーにも着替えるよう言います。結局着替えますが、マラノフさんの来訪を快く思っていないようです。
花を摘みセーラの家に訪ねるマラノフさん
セーラを見て美しいと言います。
釣った魚をご馳走してくると言いますが、リビーは魚は骨があるし、泥臭くて食べたくないと冷たく言い放ちます。
リビーの食事はポークになったのか確認するのを見落としたのですが、結局魚を食べたのでしょうか?
そして夕食を終えた後、マラノフさんは元ロシアの貴族だったことが判明。
やっぱりなあ、品がありすぎるもん。
マラノフのお母さんはハンカチに宝石をつめてマラノフさんに手渡します。
これが最後の宝石ですと、セーラに渡します。リビーにも手渡します。これはエメラルドだと。
本当にあってるのかは謎ですが、私はセーラにあげるものかと思いました。
でもしまっちゃうんかーい!
そしてリビーはマラノフさんが次の住処を探している事について話し出します。
リビーはハッキリと「ここはアテにしないで欲しい」とマラノフさんを傷付けしまいます。
もうマラノフさんに冷たくすることから察していましたが、リビーはセーラを取られたくないんだと。
リビーは少し疲れた、今日はもう休むと言い部屋に篭りました。
残された二人は外に出ます。
マラノフさんは見透かされていたと溢します。
やっぱりセーラに好意があったんだ。
昼間セーラは朝一緒に鯨を見ようと約束しましたが、それも叶いそうにありません。
マラノフさんは影を落としながら「さようなら」と帰って行きます。
その夜セーラは旦那さんの写真をテーブルに立て、赤い薔薇と白い薔薇を置きます。
そしてワインをひと口のみ、レコードをかけます。
たぶん想い出の曲なのでしょう。
セーラと旦那さんとの46回の結婚記念日のようです。
セーラはついに口に出してしまいます。
「もうリビーにはついていけない」と。
すると突然リビーがセーラの名前を呼びます。
私は死んでしまうのかと思いましたが、どうやら怖い夢を見たようです。
セーラが岬の岩場にいて死に連れて行かれそうになったと。
セーラは「私はまだ死ぬつもりはない!」と強く言い放ちます。
翌朝、朝食の準備をしていると車が入ってきました。
ティシャと不動産屋さんでした。ティシャはなんの相談もなくこの家を売る方向に持って行こうしたのです。
いきなりの不動産屋さんの勢いに圧倒しますが、二回に上がろうとした時、セーラは強い口調で友人の間違いです。家を売るつもりはありませんと言い放ちます。
不動産屋さんは逃げるように帰って行きます。
ティシャは悪気はありません、ただ本当にセーラの事を心配してこのような行動をとってしまったようです。
セーラはもう一度ティシャに言います。
「心配事などないわ」と。
それを聞いたティシャは納得して帰ります。
「さようなら」と別れの挨拶をして。
そこでまた修理工のジョシュアがペンチがないと勢いよく入ってきます。
いちいち音立てるなよ、ノックぐらいしろよと突っ込みたくなります。
ペンチは床下にあったそうです。
朝食を待って座っていたリビーがジョシュアを呼び止めます。
「窓を作るにはどのくらい時間がかかる?」
ジョシュアは二週間くらいと返します。
「今なら角材も安いんだってね」
セーラは大きく目を見開いてリビーを見つめます。
老い先短い私達には必要ないと頑なに断っていたリビーでしたが、昨夜の話で考えを改めたんだと考えました。
姉妹はしっかりと手を繋ぎ岬へと歩きだします。
現れるかわからない鯨を見に。
これがこの映画のラストシーンでした。
やっぱりシナリオで感動とまではいかなくても美しい景色や音楽、役者さんの演技力の高さには驚かせられました。
特に好きなシーンはリビーが愛おしそうに髪の毛を顔に寄せますところです。
リビーは口が悪いですが、セーラがいないと何も出来ない、だから自分自身に苛ついて周りについ当たってしまうんだと私は感じました。
全く関係ありませんが、PS2ソフト「零〜紅い蝶〜」を思い出しました。
あちらの方が悲惨ですか、姉妹といえども違う人間。
姉が足を怪我をし、「待って」と言ったり、置いて行かれる事を恐れている。たまたまの偶然でしょうが。
90分という長さも丁度良く感じました。
これが2時間半とかだったらうんざりしたと思いますから。
あと、サラの事をセーラと書いたのは誰もサラと呼んでいなかったからです。
感想と言えばこのくらいでしょうか。
この長い文章をここまで読んでくださり、ありがとうございました。
それでは失礼いたします。
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