最近の私。②
ぐぅ、……まだ書かれた腕の傷が癒えぬか。
バァンッ!!(扉を開ける音です)
読書感想文様!また書き手の人間がこの城に向かっております!
また懲りずに来おったか…そんなに私を書き倒したいと言うのならば迎えてやろうではないか。
し、しかし恐れながら感想文様の今のお体の状態では…
五月蝿い!!
ヒッ!失礼いたしました!(スタコラサッサー)
くくく…書き手とは皆、面白い奴らばかりだ…
倒されても何度でも歯向かって来る…。
ならば!!この我が身体を!魂を!そのボールペンで書き切ってやるがいい!!!
ポールペン、修正テープよし、と…
(コンコン)
ぼ、僕だよ…ベピオだ、少しいいかい?
開いてるよ、入りな。
なんだい?真剣な顔しちゃってサ。
そ、そりゃ!君が…いや、いいんだ。
そんなことより、行くんだね…感想文城に。
当たり前だろ?行くに決まってるサ。
教えてくれ。
読書感想文を書き倒すと言うが、君はそいつに会った事があるのかい?そもそも書き倒すってどういう意味なんだ?
…会ったよ、このポールペンで両腕だけ書き込んでやった。まぁ、そん時はかなり体力を消耗して退いたけどね。じゃなきゃ今頃お陀仏サ。
噂じゃそん時書き込んだ傷がかなり効いてるみたいだけどね。
わからない。そのまま書き込み続けたらヤツはどうなる?
さァてね、私もどうなっちまうかは分からない。
ただ…。
ただ?なんだ?
いや、確信は持っちゃいないが、あの時ヤツに書き込んだ時に、なんて言やいいのか…そう
かなしみを感じたんだ。
かなしみ?どういう事だ?
わからない、ただアタシの体?心?にドス黒い何かが流れて込んで来たんだ。
ヤツにかなしみを抱えている事などあるのか?
アタシだって野郎に聞いてみたいサ。
お前にも人間と同じ感情があるのかってサ。
それで君は最終的にヤツを書き倒すのか?
それは…あぁ!こんな事思い出さなきゃ良かったよ!
アタシはさ…アタシに確実に殺意を持ってるヤツは仕留めるよ。
この間の風呂とか言うヤツは殺意を持っていたし、仕留めたはずだ。
はず?風呂は最後どうなったんだ?
髪に保湿クリームを塗ってやって、その後川に落ちたんだ…。アタシは殺すつもりだったけど、一々確かめちゃいないし…。
あの川の下流には確か村があったはずだ。
もし仕留め損なって村に流れてついたら話は別だ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
気になるのは…
スキンケアだろ?
あぁ、アイツには手こずったよ。かなりの実力のヤツだ。それなのに殺意を全く感じなかった。むしろ…戦っている内にアタシ自身も楽しくなって来たんだよ。
ははっ君は不思議だな。
そうかい?とにかく面倒くさいヤツだけど、楽しかったんだよ。それと攻撃もなんだか力が抜けていく妙な感じ。
でも、アイツは言ったんだ読書感想文を倒してくれって。なんで読書感想文の手下なのにそんな事を言うのか……。
僕もスキンケアに言われて君のことを託された。
そして最後にこう言いかけたんだ
あの女ならきっと…って。
え、あの後死んだのかい?
いや、息はあった。たぶん気絶したんだろうね。
だろうね、アタシが生かしてやったからサ。
生かしてやった?君がかい?
ああ、アイツわざと乳液に手を抜いたんだ。戦いから降りたんだよ。それでなんだか萎えちまってね。全く訳がわからないよ。
まぁ、アイツがそのまま戦うってんなら絶対に負けなかったけどね。
ふうん…。
さァて、随分と話し込んじまったねぇ…そろそろ行くよ。わからない事まみれだけどサ。
そうか…そうか…。
まだ何か言いたげだねぇ?
いや、君が無事に帰って来てから言うよ。本当は僕も力になりたいが、僕は夜の塗り薬だしね。
ただ知識は負けない自信があるよ!
フ…頼もしい塗り薬様だこと。
(ドキッ)
そ、それで…最後に戦いに備えて聞いて欲しい。
悪趣味な城だねぇ…。
ここまで来るのにどれだけかかったか…。
素敵な王子様がいりゃ少しは報われるんだけど。
さて、行くとするかねぇ。
(妙だねぇ……静か過ぎる。
気配すら感じやしない。…やはり罠か?
このまま進むとヤツの所についちまうよ。)
(……いや、わざと誘っているのか?
ヤツの事なんか知りたきゃなかったけど、敵を知るいい経験になったよ。ありがとうよ!)
遂に、来ちまった…。
ヤツは……いない?いや、そんなはずないだろ。
いったい何処に
待っていたぞ人間。
!!!
何処だい!?出てきな!!
痛かったぞ、まだあの時の傷が完全に癒えておらんでなぁ……。
その代わりにお前の事は片時も忘れたことはないぞ……くくく。
気持ち悪い野郎だねぇ!
とっとと姿を現しな!!!
お前がそこまで言うのなら見せてやろう…この醜い姿を。
!!!(ごくり)
ふうん、顔は相変わらずハンサムじゃないかい。
そのなりで醜いってのは、本当の不細工に失礼じゃないかい?ええ?読書感想文様よォ!!!
ずっとお前を見ていた。この城に入ってくる時も。
……どうした、震えているのか?可哀想になぁ……。
ふ、震えている?誰がだい?アタシはねぇ、お前を書き倒す事だけを糧に今日まで生きて来たんだ!!!
その相手が正に今!!目の前にいるんだ!!!
恐れを抱くはずがないだろう!!!
いいからアタシと戦えェ!!!
呼吸が乱れている。初めて会った時の方がお前はとても良い顔をしていたぞ?
そうか、一度敗北を知ってしまったからか。
それとも、何か別の事を考えているな?それは私の事か?
かなしみを感じたんだ。
かなしみ?どういう事だ?
わからない、ただアタシの体?心?にドス黒い何かが流れて込んで来たんだ。
アタシだって野郎に聞いてみたいサ。
お前にも人間と同じ感情があるのかってサ。
それで君は最終的にヤツを書き倒すのか?
(落ち着きなアタシ。…完全にヤツのペースにのまれている。悔しいが、さっきから震えが止まらない。
それはヤツの本当の正体が分からないってのもある。
応えちゃくれるかわからないが、呼吸を整えるにもちょうどいい。これはただの会話だ。お喋り。)
よ、よく分かったね。正にアンタの事を考えてたよ、今のアタシの頭ン中はアンタでいっぱいさァ。
ほう、それは嬉しいものだな。すぐに殺すのではつまらぬからな。いったい私の何を考えている?
(乗って来た!!!)
そ、それで最後に戦いに備えて聞いてほしい。
なんだい?
これは多分憶測なんだが、スキンケアが僕に言ったあの女ならって言葉の続きなんだけどね…。
だからアンタにも口を酸っぱくして読書感想文を倒してほしいって事だろう?
うん、僕も最初はそう思った。けど、彼の眼差しはまるで懇願している様だった。
そんなに野郎を描き倒してほしいってこったね。
だけど、僕は一瞬だけこう考えたんだ。
その逆の意味なんじゃないかと……救って、解放してほしいと。
……アンタ何言ってるンだい?救う?解放?
意味が分からないよ、これから野郎を倒しに行くってのにそんな事言われて
君はさっきかなしみ、ドス黒い何かが流れ込んで来たと話したよね?
あぁ……!!!
待ってくれよ!私がそれを全部受け止めろって事かい!?冗談じゃないよ!!
……ああ、でも何も君が一方的にヤツの攻撃を受けろって言ってるんじゃない。
ハァ!?じゃあ、どうしろって事だい?
ちょっと待ってて……あった!これを持って行ってくれ。
なんだい?ただの便箋じゃないか…えらく古いねぇ。
これはただの便箋じゃない、セリアの御加護があるんだ。古いのは僕のお祖母様がお若かった頃に頂いたものだから勘弁してくれ。
なんで塗り薬のアンタがこんな大層なモノを持っているかは聞かないよ。
でも、この便箋をどうするンだい?
……読書感想文と対話し、本心を綴る。
そんなカウセラーみたいな事、このアタシにゃ無理だよ。やっぱりヤツはこのポールペンでズタズタにして書き倒す!
それこそ無理だと僕は思うよ。
ハァ!?なんだってェ!?
話は最後まで聞いてくれ。君の悪い癖だ。
感想文とは本来、作文用紙や便箋で綴られていくものだ。そのはずなんだ。なのに彼は読書感想文は具現化してしまっている。城まで構えて。
そうだ、ヤツは確かに人間とは言い難いがデカい図体だった。ただ顔は割とハンサムだったねェ……。
ハンサムゥ?
……ふうん。で、話を戻すけど、君は一度敗れている。また同じ事を繰り返すだけだよ。
だからこの加護を受けた便箋で本来の姿に戻すんだ。
…まぁ、敵を知る事は戦いの基本っちゃ言うけどサ。
アタシにカウセラーごっこなんて出来るかね?
出来るさ!君なら!
続くッ!!!