スクールカウンセラーに必要な自閉スペクトラムへのまなざし
「自閉」という言葉を聞くと、多くの方は重度の自閉症をお持ちの方を思い浮かべられるというのが、私が臨床を始めた2000年代~2010年代前半は多くあったように思います。
しかし最近は、発達障害の情報が世の中に広がっており「うちの子は自閉かも」とおっしゃられる親御さんが増えてきている印象を受けます。
学校現場で「うちの子はもしかしたら」という相談を保護者から受けたSCの方も多いでしょう。
SCは、多くの方にとって心理支援のファーストコンタクトの対象です。SCの関わりによって、その方の心理支援への生涯の態度決定に影響する重要なポジションにいます。
このことを考えたとき、自閉スペクトラムについてSCがどれくらい考えたことがあるかは、支援の質に大きく影響するでしょう。
当事者である親御さんから最新の知識をうかがうなど、親御さんも熱心に勉強されていらっしゃる場合もあります。
そこで、SCが持っておきたい自閉についての基礎知識、とりわけ臨床的な視点で大事と思われることをご提供出来たらと思います。
特に新人SCの方の情報のインプット、また、中堅ベテランの方の再確認になればうれしく思います。
この記事は以前、保護者を読者に想定して書いたものの加筆、修正版です。
SCがこの内容をお読みいただくことが、日々出会う子どもたちや親御さんのサポートにつながる一助になるのではないか、少なくとも自閉についてのSCの意識に何かの刺激になればと思い、リメイクすることにしました。
臨床現場での取り組みに何らかのお役に立てれば幸いに思います。
15分ほどでお読みいただけるボリュームかと思います。よろしければ、一緒に自閉について考えて参りましょう。
自閉スペクトラムという言葉の登場
「スペクトラム」という言葉が出てきたことで、当事者性を感じる方が圧倒的に増えたことにつながったと思います。
自閉傾向が全くない状態(白)から、極めて強い状態(黒)までのグラデーションで考えてみると、人間は必ずどこかに位置づけられることになります。
この見方はとても役に立つと思っています。
私はどのあたりかな、このあたりかな。と自分事として考えられます。大変実用的です。
自閉スペクトラム症、自閉症スペクトラムなど、複数の言い方がされておりやや混乱しますが、病気としての自閉ではなく、自閉傾向の程度に焦点を当てて考えてみたいので、ここでは自閉スペクトラムと記載することにします。
さて、自閉スペクトラムとはどのようなものでしょうか。
その定義や特徴は他の書籍や情報媒体ですでに分かりやすい説明がなされています。読者の方は自閉スペクトラムの基本的な知識がおありだという前提で、定義はここでは割愛します。
ここでは、臨床的な体感として、サポートが必要な自閉スペクトラムはこんなところに現れるのだろうという状況について書いてみたいと思います。
なぜこのようなことを書こうかと思ったかと言うと、実際の生活場面での親子の様々なディスコミュニケーションを、自閉スペクトラムという補助線を引いてみると理解できることが多いからです。
スクールカウンセラーとして学校現場に身を置いてきましたが、関係者がその視点を早くから持って接していくと、不登校、いじめなどの大きな不適応が防げることにつながる事例は多いと思います。
また児童福祉施設で働いていた際には、発達障害傾向をお持ちのお子さんが大変多く、適切な関わりをされてこなかったことで、虐待を受けてしまったり、非行などの不適切な行動を起こしてしまうという事例に関わってきました。そのような事態に至らないような支援の必要性を痛感してきました。
私は、小児科の現場にも身を置き、さまざまなタイプの自閉スペクトラムの特徴を見てきました。同じ自閉スペクトラムと言ってもお子さんによってその表れ方は千差万別です。
しかし、ある一定の共通点もあるように思います。言葉、概念としてだけでなく、少しでも具体的なイメージとして自閉スペクトラムの現れ方が読者の方の頭に描かれたらうれしく思います。
「え?これも自閉の可能性があるの?」という新たな受け止めにつながったり、「あるある、こういうこと」と再確認につながっていただけるとありがたいです。それはちょっと違うのでは?といったディスカッションにつながるのも大歓迎です。
子どもの成長を促し、未来への可能性を広げるために自閉スペクトラムをどのように受け止め、どのような方向性、見通しを持って関わるとよいのだろうかという意見も出してみたいと思います。
自閉スペクトラムへの関わりは、その方向性によって、一芸に秀でた人材として豊かな人間関係を持てる大人になるか、ナルシストで自己愛的な大人になるかを大きく作用すると考えています。
自閉スペクトラムの傾向が強い方は、エネルギーが強く、かつ白黒思考の方が多いので、右にも左にも大きく振れやすいと思われるからです。
その意味で、自閉スペクトラムと自己愛の課題は、非常に近いところにあるものだと考えております。
子育てに悩む親御さんや、自己愛的な人に悩む方にも何かしらのお役に立てる視点が提供出来れば幸いです。
それでは、お子さんに自閉傾向があるという設定で見てみます。親御さんが話されるお子さんの様子でこのようなことはありませんか。
(なお、以下に提示する実例は、具体的な個人のエピソードではなく、様々な事例をミックスし、個人は特定できないように配慮しております。ただ、類似のエピソードをお持ちの場合、まるであの子のようだと感じられることはあるかもしれません)
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