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君はなぜ論文を書けないのか。

わたくしは、これまでに査読付き研究論文を1本書いたきりです。

次の1本がなかなか書けません。

このことについて考察してみました。

そして、論文が書けないことに悩む後進の方もいらっしゃるのではないか。

そう思ったので、悩める後輩に向けてのエールとしても書いてみます。

臨床心理士には、①臨床心理査定、②臨床心理面接、③臨床心理的地域援助、④1から3に関する調査研究

の4つの専門業務が求められています。

論文を書くのは④の業務です。

この業務は他の3つよりも、現場で働きながら行うのはハードルが高いと感じます。

④が気になってるんだけど、できてないなあ〜という人は多いでしょう。

大学教員の友人に聞くと、学内業務や教育活動に追われ、研究活動に十分な時間を費やすのは大変だと聞いたことがあります。

本業の研究者でもそのようです。

現場で働きながら論文を書く場合を考えてみます。


研究には時間がかかります。

仕事に加え、家事育児介護など、各々の置かれた場での社会生活と両立すると、1日の中で研究に割く時間が限られます。

働きながら時間を見つけて書くとなると、完成まで、相当長い時間がかかります。

そして、研究にはお金がかかります。

先行研究のレビュー、調査にまつわる諸費用、解析ソフトやパソコンなど機材の費用、研究内容に関する同業者や先輩への相談、これらにも少しずつお金がかかります。まとまると割と大きな額になります。

研究を満足にすることができる人は、時間とお金の面の特権のある人です。

例えばこのような人が考えられます。

家のことを妻(夫)や親、お手伝いさんなどに任せて研究に没頭する男性(女性)。(家父長制の観点からみて、このポジションに収まれるのはこれまで男性が多かったと思います)

余裕資金のある人。最悪、数年研究に打ち込んで収入ゼロでも食うに困らない人。

このような条件がないと、満足のいく研究はできないようにわたくしは思います。

「お金の心配をしているようじゃ研究はできない」というパワーワードをかつてバリバリの研究者から聞いたことがあります。

また、

人生を研究にかけている人。すなわちプライベートやその他の社会生活は二の次で構わないと覚悟を決めた人。
(これは、特権がなくてもいけるかも。でもやはり運とお金がないと、継続は難しいと思います。)

研究ができるスタートラインに立ったとして、さらに論文が受理されるまでも、かなりのハードルがあります。

ここは気力体力などパーソナルな要因が大きいでしょう。

三度の飯より研究がしたい。くらいの研究大好き人間でもない限り、なかなかチャレンジしにくいと思います。

さらに、臨床心理士の資格更新の条件に、論文を必ず投稿することは含まれません。これも大きいです。

それに、何よりもわたくしは臨床がしたくて臨床心理士になりました。

以上の理由から、①〜③に時間とお金を投入していくことに決めました。

ゆえに2本目の論文を書くスタートがきれていません。

もちろん条件さえ満たせば、書いてみたいテーマはあります。

でもいまは仕方ない。

そう思いながら、40代も半ばが見えてきました。

そして、これはわたくしに限らず多くの臨床心理士の現実だと思います。

論文が書けていないことを、どこか後ろめたく、自信が持てない感じでいる若手の方も多いでしょう。

臨床心理士の理念は素晴らしいのですが、現実との解離が大きいようにも思います。

理念だけでは食っていけません。

安定した現実があって、理念を追求できます。

研究にもっともっと公的資金が投入される国でなくて残念です。(これくらいは言わせてほしいぐらいには、臨床心理士は不安定さを噛み締め生きています。)


臨床心理士の4業務は、一人で完璧にこなす必要はないと考えます。

自分の得意な業務を伸ばし、できないところは得意な心理士とコラボする手があります。

バリバリ研究している心理士とつながればいい。

臨床心理士集団として、クライエントへ還元することができればいいだけじゃないか。

と、気づきました。

打率、盗塁、ホームラン、防御率、四拍子そろった大谷翔平にならなくて大丈夫。

全員野球で勝てば良い。

という感じでしょうか。

以上の話は、逆バージョンの人、すなわち研究はしてるけど臨床ができないと悩む方にも当てはまります。

みんなでやればいいから、安心して大丈夫なのです。

あいつは臨床ができない!あいつは論文がない!あいつは特権があってずるい!あいつはセンスがあって憎たらしい!

まるできょうだいげんかです。

それぞれにいいところがあるじゃない。

矢は3本集まれば折れないよ。

けんかする相手はそこじゃない。

毛利元就の有名な3本の矢の逸話が思い出されます。

悩める方は、一旦理念は脇に置いて、シンプルに、ご自身が何をしたいか?

これをただただ問うてみると、方向性が見えてくるかもしれません。

当室でもささやかながら、よろず相談やっています。よろしければお話にいらしてください。





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