ヒルデガルトの小径|くるはらきみ|ヒルデガルトを辿って
中世の修道女ヒルデガルトは、あまりに偉大で、遠い存在のように思える。しかし、くるはらきみの、丁寧に紡がれた作品の一つ一つが、ヒルデガルトと私たちが、遥かな時間を超えて、創作と自然という悠久の糸でつながっていることを教えてくれる。
その存在の大きさに身をすくませる必要はない。一歩ずつ着実に、身近な場所から、ヒルデガルトを辿って。
作家が描き出したのは、自然の恵みをいっぱいに享受しながら、仕事に精を出すヒルデガルトたちの日常。湯気が立っているのは煮詰めた果実の鍋だろうか。頬を紅潮させ、生き生きと働く、修道女たちの活気が伝わってくる。彼女たちもまた日常を生きていたのだ。
自然の中で創作する作家ならではの、自然に対するやわらかく鋭敏な眼差しに満ちたこの作品は、古から続く、恵みの季節の喜びにあふれている。
森の小道を、青い馬に揺られて少女が進んでいく。幻想的で優しい風景の中で、少女の面差しは少し緊張感を帯びているようにも見える。愛らしい薄赤のドレスは彼女が大切に育てられてきた証だろうか。あるいは右手に持った白いユリ、青い馬と相まって、聖母マリアの象徴だろうか。
親元から離れての修道院への旅路は、少女にとって不安なものであったに違いない。彼女が抜けてきた森は、不安な気持ちを表すかのように鬱蒼としている。しかし、作家は少女の旅路を新緑まぶしい季節に設定することで、彼女の未来をあたたかく照らし出す。色とりどりの花は、ヒルデガルトを励ますように可憐に咲いている。
道は光が照らす方へと伸びている。まるでヒルデガルトの未来を象徴するかのように。
手仕事は修道院で行われる大切な日々の営みである。作家は身近な手仕事の道具であるルレットに命を吹き込み、少しおすましした可憐な姿を描き出した。ポーズは決めても手は止めない。働き者のルレットは今日も布の上に優美な線を描き出す。
私たちの創作のひとつひとつがヒルデガルトにつながっている。そんな風に思いを馳せながら、ヒルデガルトを辿る旅は続いてゆく。
会場風景写真|霧とリボン
*
*
*
*
作品販売期間
【7月9日(土)23時~11日(月)23時】
作家名|くるはらきみ
作品名|恵みの木
油彩・キャンバス
作品サイズ|27.3cm×22cm
額込みサイズ|約36.3cm×31cm
制作年|2022年(新作)
*
作家名|くるはらきみ
作品名|光を辿りて
油彩・キャンバス
作品サイズ|22cm×27.3cm
額込みサイズ|約31cm×36.3cm
制作年|2022年(新作)
*
作家名|くるはらきみ
作品名|ルレットさん
油彩・キャンバス
作品サイズ|20cm×18cm
額込みサイズ|約29.5cm×27.5cm
制作年|2022年(新作)
*
*